今日は午後から目白で競争的資金獲得のための勉強会。
直行直帰を許されているので、朝はのんびりです。
昨夜、吉田修一の「路(ルウ)」という小説を読了しました。
路 (文春文庫) | |
吉田 修一 | |
文藝春秋 |
吉田修一といえば、芥川賞受賞作の「パーク・ライフ」など、巧みな心理描写で人生を描き出す作家というイメージを持っていました。
パーク・ライフ (文春文庫) | |
吉田 修一 | |
文藝春秋 |
「路(ルウ)」は台湾新幹線の受注から完成までの10年近い日々を描いた長編で、読み始めた当初、奮闘するサラリーマンの物語なのかなと思い、やや退屈な感を覚えました。
しかし読み進むうち、そこはさすがに吉田修一と思い知らされました。
新幹線を売り込む商社に勤める若い女性と、台湾人で日本の建築会社に勤める男との淡い恋、女性の日本人の恋人の鬱病発症、台湾で生まれ育ち、戦後日本に引き上げた老人の鬱屈、台湾人同士の恋物語などが重層的に綴られ、大団円に向かってそれぞれの人生が交差していく、感動的で切ない叙事詩に仕上がっており、非常な感銘を受けました。
変形的なメリー・ゴーラウンド方式の手法を採った作品で、私は圧倒されました。
私は優れた小説を読むと嫉妬に駆られる悪い癖を持っていますが、嫉妬さえ吹き飛ばす力強い物語で、きっとこれから何度も読み返すことになるだろうと思っています。