年末くらいは笑って過ごそうかと思い、私にしては珍しくコメディ映画を借りてきました。
「曲がれ!スプーン」です。
曲がれ!スプーン [DVD] | |
長澤まさみ,三宅弘城,諏訪雅,中川晴樹,辻修 | |
ポニーキャニオン |
幼い頃からUFOを目撃したりして、不思議な現象に興味津々の少女。
長じて、テレビ局に就職し、超常現象番組のADになります。
しかし、インチキばかり。
ディレクターに命じられ、本物の超能力者や超常現象を求めて全国を飛び回ります。
これを長澤まさみが演じていますが、もう一つとぼけた味が出ていません。
ここはとぼけた味の綾瀬はるかか、芸達者の石原さとみを使って欲しかったですねぇ。
クリスマス・イブ、カフェ・ド・念力という喫茶店では、本物の超能力者が集まって互いの力を見せ合うエスパー・パーティーが催されています。
強力な念力でスプーン曲げどころかシャンパンのビンを割ってしまったり、人をふっ飛ばしてしまったりできる物騒な念力男。
透視能力で美女と見るや裸を透視する男。
手を握ると相手の思念を読み取ってしまう男。
5秒間だけ時間を止められる男。
電気製品を遠方操作する男。
しかし彼らは、日頃その能力ゆえに差別されることを怖れ、ひた隠しにしています。
その喫茶店で、単に極端に細身で細い隙間を通り抜けられる、という超能力者というよりびっくり人間の男がテレビ局の取材を受けることになっており、長澤まさみ演じるADが訪れます。
テレビ局に超能力者であることがばれることを怖れるエスパーたちが、ドタバタを繰り広げるという、他愛も無い話ですが、なかなかよくまとまっています。
喜劇というのは人間が作り出した最上の創作だと思いますが、喜劇には時の権力者を風刺したり、批判精神を涵養したりする力があり、権力者はえてして喜劇やお笑いを嫌いますね。
名作「薔薇の名前」では、中世ヨーロッパの教会を舞台に連続殺人が起こりますが、それはすべて教会の長老が喜劇を封印するために仕組んだものだった、というオチがついています。
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ウンベルト・エーコ | |
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超能力というものは、この世には存在しません。
存在すれば、それは単なる能力です。
例えばイチローの野球の能力は凡人からみれば超能力と言ってよいものですが、誰もそれを超能力だとは言いません。
同じように、いわゆる超能力と呼ばれるものは、ごく一部の天才が持つ単なる人間の能力です。
超常現象というものも、この世には存在せず、存在すればそれは単なる自然現象です。
しかし、現代の科学が解明、立証しえているのは、この世の現象、存在の100億分の1もないはずで、そこから外れるものをインチキだと決め付けるのは、現代の迷信と言える科学盲信でしょう。
幽霊とか妖怪とかいうものは存在しないことになっていますが、100年後にはその存在が当たり前になっているかもしれません。
かつて地動説を唱えたコペルニクスは迫害を怖れてそれを30年も発表せず、地動説を発展させたガリレオは教会から異端の烙印を押され、迫害されました。
ことほどさように、科学というのは曖昧なものです。
その点、死後の世界などについて質問されたお釈迦様は微笑んで応えず、それよりも現世をより良く生きることを説いたのは、誠実な態度と言うべきでしょう。
私たち人間は、宇宙のなかでは何も知らない赤子に等しく、愚かな猿知恵で考え出した程度のことを盲信し、その他のことは否定するというのは、馬鹿げた態度というべきでしょう。
私たちには分からないことがあまりに多く、そもそも宇宙があり地球があり、そこに様ざまな生物が暮らしているという、解明不能な不思議を考えれば、幽霊がでようが妖怪がでようが大したことではありません。