ブログ うつと酒と小説な日々

躁うつ病に悩み、酒を飲みながらも、小説を読み、書く、おじさんの日記

退行欲求

2012年12月03日 | 文学

 私が残酷非道な物語を好み、ホラー映画をこよなく愛していることは、このブログをご愛読いただいている方はよくご存知のことと思います。

 しかし実生活となると、私はとんだ腰抜けです。

 血を見ることが苦手で、また苦しんでいる生き物を見るのも全く駄目。
 だからSMという趣味嗜好は理解不能です。
 サド侯爵や団鬼六、マゾッホらの小説は好むんですけどねぇ。

 魚の死骸に触れることができず、そのため秋刀魚を焼くことすらできません。
 鯛や鯵のはらわたを取り出すことなど、怖ろしくてとてもできません。
 従って焼き魚を食すためには、同居人に全面的に頼らざるを得ず、いつもからかわれています。
 釣りなんてもってのほかで、そもそも私は生き物に触れることを極端に怖れています。
 蛙や蛇や虫はもちろんのこと、犬や猫に触れるのも嫌で、ほとんど触れたことがありません。

 若い頃はきれいなおねぇさんに触れることだけは好きでしたが、近頃はそれもなんだか不潔な感じがして嫌になってしまいました。
 不潔というのは、文字通り、物理的に不潔ということで、精神性の問題ではありません。

 まして性行為などというものは不潔の極みみたいなところがあって、今の私には不可能です。
 同居人には過去の悪行が祟ったのだと言われますが、私は悪行などにおよんだ覚えはありません。

 よくスキンシップの重要性を説く人がいますね。
 赤ん坊や幼児には必要なことなのでしょうが、中年のおっさんには全く必要ないものです。

 西洋流に握手やハグを日常的に行う文化圏だったら、今の私は家から一歩も出られないでしょうねぇ。

 考えてみると、そういう不潔恐怖みたいな傾向は幼い頃からあって、幼児の頃からべたべた可愛がられることが嫌いでした。
 しかしその傾向が著しくなったのは、精神障害をほぼ克服してからのような気がします。
 一種の後遺症なんでしょうかねぇ。
 うつ病や躁うつ病が寛解して不潔恐怖になったという話は聞いたことがありませんが。

 生物の肉体というものは植物にしろ動物にしろ、もちろん人間も、雑菌の塊のようなものですね。
 いくら毎日風呂に入り、日に何度も手を洗っても、完全に清潔になることはありません。
 それでも私は日々入浴を欠かさず、手洗いも励行して肉体の表面を清め、肉体の内部はアルコール消毒を欠かしません。

 最近、無菌室のような空間に隔離され、完璧な清潔さの中で暮らしたいという妄想が湧いてきて難儀しています。

 一種の退行欲求なんでしょうか。
 清潔で快適な空間で、常にうとうとしていたい、という暗い欲求から逃れがたいのです。

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悪の教典

2012年12月03日 | ホラー・サスペンス・SF等の映画

 今朝はなんということもなく、憂鬱でした。
 気候のせいでしょうか。
 それで休暇を取りました。

 止せばいいのに朝一番で史上最凶のエンターテイメントという触れ込みの「悪の教典」という映画を観に行きました。

 いわゆるサイコ・キラー物に分類されるのでしょうが、その狂気ぶりは他のこの種の映画の追随を許さない、あまりに強烈なものでした。
 一般的には、サイコ・キラー物というのは犯人がなかなか姿を見せず、警察との神経戦を繰り広げるというパターンが多いように思いますが、「悪の教典」は映画の冒頭からサイコ・キラーが堂々と登場します。
 そういう意味では、「ナチュラル・ボーン・キラーズ」との類似が見られますが、残虐さ、後味の悪さは「悪の教典」のほうがはるかに上です。

ナチュラル・ボーン・キラーズ 特別編 [DVD]
ウディ・ハレルソン,ジュリエット・ルイス,トム・サイズモア
ワーナー・ホーム・ビデオ



ナチュラル・ボーン・キラーズ ディレクターズカット [Blu-ray]
ウディ・ハレルソン,ジュリエット・ルイス,ロバート・ダウニー・Jr,トミー・リー・ジョーンズ
ワーナー・ホーム・ビデオ

 もしかしたらホラー映画史上に残る最も後味の悪い名作かもしれません。

 明るく元気で頭脳明晰、おまけにイケメンの高校の英語教師。
 同僚からも生徒からも信頼されるハスミンこと蓮見先生です。
 しかしこの男、うまれついてのサイコ・キラーなのです。
 この役を伊藤英明が演じてあまりにはまっています。  
 
 
 予告編をご覧ください。

 

 少しずつハスミンを怪しく思う同僚が出てきて、ハスミンは自殺に見せかけてその教師を殺害。
 生徒のなかにも彼に不信感を抱く者がでると、躊躇無く消していきます。
 しかも口笛を吹きながら、楽しげに。

 そしてついにはクラスの生徒全員の殺害を決意。
 文化祭の準備で遅くまで残っていた生徒たちを猟銃で次から次と射殺していきます。
 不謹慎かもしれませんが、一種の爽快感すら漂います。

 ハスミンは某男子生徒と深い仲になっていたゲイの美術教師の仕業に見せかけるため、様ざまに小細工をします。
 しかし、それは生徒全員の殺害が成ってこそできるストーリー。
 生徒二人が生き残っている段階で、大量の警官が学校に押し寄せます。
 手錠をかけられたハスミンは、「神の意思だ。クラスの生徒全員が悪魔に取付かれていたから生徒の魂を救うためにやったのだ」と絶叫します。
 生き残った生徒の一人は「完全に狂っている」と呆然としますが、もう一人は「もう次の殺人事件の準備を始めている」とつぶやきます。

 つまり、心神喪失による無罪を狙っているとみたわけです。

 しかも映画のラスト、衝撃の言葉がさりげなく流れます。

 To Be Continued.

 このお話には続きがあるというわけです。
 次回作でハスミンはどうやって娑婆に放たれ、どれだけの活躍をみせるか、今から楽しみです。

 最悪の後味で私に強烈な印象を残した「悪の教典」
 久しぶりにホラーの名作に出会えました。

悪の教典 上 (文春文庫)
貴志 祐介
文藝春秋



悪の教典 下 (文春文庫)
貴志 祐介
文藝春秋

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