今日は仕事納め。
システムがダウンしているので、仕事になりません。
先ほど、全職員を集めてトップから挨拶がありました。
私はもちろん、電話番。
あのじいさんの顔を見ると怒りがこみ上げ、声を聞くと心臓がばくばく言ってしまうのですよ。
さぞかし格好いいことをしゃべったことでしょう。
来年の課題は、あのじいさんを見ても平静でいられるようになりたいですね。
でも多分無理かな。
わが職場を支配する独裁者ですから。
独裁者と平気で接触できるということは、独裁の犬と化しているということでしょう。
それにしても、我が社の上部組織は何をやっているんでしょうねぇ。
事件の重大さから言って、停職六カ月くらいがちょうど良いとおもうのですが、お咎めなしなんてねぇ。
身内に甘い組織ですねぇ。
私はじいさんの暴言のせいで合計18か月も病気休暇に追い込まれたと言うのに。
ああ、腹立てまいぞそわか、腹立てまいぞそわか。
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小沢議員が政治倫理審査会への出席を承諾したとか。
私にとってはどうでもいいニュースなんですが、権力闘争がお好きな民主党のお歴々には大変なことらしいです。
どんな小さな組織にも、派閥ができ、権力闘争が起きるとか。
不思議なことではありますが、ヒトという種の本能とも宿痾ともいべき特性なのでしょうね。
スポーツでも敵と戦う姿に観る者は酔いしれるわけですし、戦争映画やチャンバラが廃ることなく人気を集め続けているのもヒトという種の争い好きからきているのでしょう。
筒井康隆の小説に、「敵」という佳品があります。
定年退職して10年、75歳の元大学教授の日常を淡々と、しかしスリリングに綴っています。
もともと子どもはなく、妻に先立たれたため、元教授は一人暮らしです。
たまに訪ねてくる教え子の他には、話し相手もいません。
それでも老学者は毎日商店街に買い物に出かけ、三度の飯を自炊しています。
晩酌を楽しみ、ときにはスナックに出かけて、アルバイトで勤めている女子大生の人生相談に乗ったりもします。
それは慎ましい生活と言ってもいいでしょう。
しかし元教授の精神は、激しく揺れ動いています。
枯淡の境地からはかけ離れています。
亡き妻を思っては自慰にふけり、あるいは教え子の白い肌を想像しては老いさらばえた身を省みず、誘惑される妄想に耽ります。
このあたり、谷崎潤一郎の「瘋癲老人日記」を彷彿とさせます。
現在の生活レベルが維持できないような経済状況になったら自殺しよう、などとぼんやり考えている矢先、奇妙なことが起き始めます。
パソコンの画面に、敵が近付いています、というメッセージが頻繁に現れるようになります。
それと前後して、老学者の意識は混濁の度を強めていきます。
誰もいないのに教え子が大勢きていると思い込み、大宴会の準備をしたり。
「春になったら、みんなきてくれるなあ」という主旨の独りごとが蓮発します。
その間も、パソコンには敵が近付いている、というメッセージがたびたび残されます。
敵とは一体何者なのか。
誰がメッセージを送ってきているのか。
あるいはすべて混濁した元教授の妄想なのか。
異常なまでの緊張感が溢れます。
敵 (新潮文庫) | |
筒井 康隆 | |
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鍵・瘋癲老人日記 (新潮文庫) | |
谷崎 潤一郎 | |
新潮社 |
昨夜はDVD鑑賞をしました。
「ガタカ」です。
遺伝子操作によって優秀な遺伝子を持って生まれた者が適正者とされ、優遇される近未来。
遺伝子操作を経ずに生まれた者は神の子とも不適正者とも呼ばれ、差別されます。
知力・体力ともに適正者は不適正者を圧倒し、不適正者は単純労働などの賃金の安い仕事にしか就けません。
不適正者として生まれた主人公は、幼い頃から宇宙への夢をふくらませていました。
憧れは、宇宙開発を一手に担うガタカに入社し、宇宙飛行へ飛び立つこと。
しかし遺伝子検査で面接にも進めず、ガタカの清掃員になります。
夢を諦めきれない主人公は、適正者でありながら事故で下半身不随となった元オリンピックメダリストの血液や尿を提供してもらう契約を闇で結びます。
報酬はガタカに入社した後に得られる収入の25%。
適正者の遺伝子サンプルを提出してガタカ社に入社した主人公は、涙ぐましい努力と、提供されつづける遺伝子情報を駆使して、ついに宇宙飛行士に選抜されます。
しかし、ガタカ社で殺人事件が起こります。
警察は全社員の厳密な遺伝子検査を要求してきます。
エリート刑事は主人公の弟で適正者。
不適正者の兄と適正者の弟との激しい対立。
不適正者ながらガタカに勤める美女との恋。
元オリンピックメダリストの適正者と主人公との奇妙な友情。
波乱含みの展開で、飽きさせません。
そして、近未来が舞台なのに、19世紀を思わせる古風でスタイリッシュなファッションやインテリア。
暗くて美しい映像が雰囲気を盛り上げます。
成功を夢見て犯罪を犯す主人公の存在そのものの切なさが、「砂の器」などの松本清張作品を思い起こさせます。
しかし私は、オリンピックでは金メダルを当然視されながら銀メダルに終わり、下半身不随となって役に立たなくなっても高いプライドを維持しつづける遺伝子情報提供者の素っ気ない描き方に心を動かされます。
SFとしても、サスペンスとしても、また心理劇としても楽しめる第一級の娯楽作と見ました。
ガタカ [DVD] | |
アラン・アーキン,イーサン・ホーク,ジュード・ロウ,ユマ・サーマン | |
ソニー・ピクチャーズエンタテインメント |
砂の器 [DVD] | |
松本清張,橋本忍,山田洋次 | |
松竹ホームビデオ |
砂の器〈上〉 (新潮文庫) | |
松本 清張 | |
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砂の器〈下〉 (新潮文庫) | |
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