ブログ うつと酒と小説な日々

躁うつ病に悩み、酒を飲みながらも、小説を読み、書く、おじさんの日記

冬ごもり

2010年12月07日 | 文学

 デートがある日に急ぎの仕事が入った場合、仕事とデートのどちらを優先しますか、という質問に、なんと7割以上が仕事と答えたそうです。
 この不景気のご時世、恋愛沙汰に浮かれていては職を失う、という危機感が強いのでしょうか。

 その昔、バブルの頃にクリスマスイブに豪華なデートを楽しむのが当然という悪しき風潮がはびこり、なかにはデートのハシゴをする猛者まで現れました。
  学生だった私は異教の祭りに参加する気はなく、部外者として世の浮かれぶりを傍観していました。
 当時は恋人がいるかいないかがその人の人間的価値を決める尺度であるかのようなことを言うやつがいて、嗤わせてもらったものです。

 師走に入って、町はクリスマスムードが盛り上がってきました。
 プレゼントを楽しみにしている子どもたちには待ち遠しい日でしょう。
 肩の力が抜けた中年になった私は、異教の祭りだと目くじらを立てず、華やかなイルミネーションを楽しんだり、シャンパンを飲んだりします。
 それにしても師走に入ってから暖かい日が多いですね。
 
 冬は寒いほど詩情豊かになるというもの。
 暖かい冬というのは間が抜けていますね。

 
葱買うて 枯木の中を 帰りけり

 
うずみ火や 我かくれ家も 雪の中

 
私が敬愛する与謝蕪村の冬の句です。
 本格的な冬がきたら、暖かい我が家で、熱燗をやりつつ蕪村全集を読むのが楽しみです。

郷愁の詩人 与謝蕪村 (岩波文庫)
萩原 朔太郎
岩波書店
蕪村俳句集 (岩波文庫)
尾形 仂
岩波書店
俳人蕪村 (講談社文芸文庫)
粟津 則雄
講談社


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2010年12月07日 | 思想・学問

 死んだらどこへ行くんだろうという素朴な疑問は、誰しも幼い頃持っていたのではないでしょうか。
 それが成長するにつれ、正解がない問いだと知り、問うことそのものを止めてしまいます。
 分からないことは考えないのが手っ取り早い逃げ道ですから。

 縄文前期、広場があってその周りに竪穴式住居が建てられていたようですが、広場には、墓地がありました。
 死してなお、死者たちは生者たちと同じ空間にとどまり、一緒に時を過ごしていたのですね。
 縄文後期になると、お墓は集落の外に作られるようになり、死者と生者は別の場所で、それぞれ過ごすことになりました。
 しかし日本人は、魂の不滅を信じていたようです。

 
 翼なす  あり通ひつつ  見らめども  人こそ知らね  松は知るらむ

 「万葉集」
にみられる山上憶良の歌です。
 有馬皇子の魂は鳥となって羽ばたいていることを人は知らないが、結びの松は知っているだろう、というような意かと思います。

 
旗の 小幡の上を 通ふとは 目には見れども 直にあはぬかも

 「万葉集」
の倭姫王が夫であった天智天皇をしのんで詠んだ歌です。
 天智天皇が小幡の上を行き交う姿を詠んだ哀切なものです。

 この時代、死者は樹木のまわりにいるようです。
 しかしこの当時、死者を神として祀るということはなされていないようです。

 平安時代になると、菅原道真など、政治的敗者が祟りをなすことを怖れ、その魂を鎮めようとして、御霊信仰が流行りました。

 時はくだって明治維新以降、国家のために命を落とした軍人や兵隊は靖国神社に祀られて神になることになりました。
 これは戦病死していれば誰でも彼でも神になるということで、御霊信仰のような、特別な人間だけが祟り神になる、という物語とはずいぶん違います。

 地獄や極楽を説く仏教とは大きく異なり、天皇のために戦って命を落としたなら、八百万の神々の末席に座れるというのですから、ご大層な話です。

 日本人は仏教的死生観を受け入れながらも、死後の魂の在り様を考えてきました。
 そして今でも、多くの日本人は死を完全なる消滅とは考えず、漠然とではありますが、死後の存在を予感しているのではないでしょうか。


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隣の家の少女

2010年12月07日 | ホラー・サスペンス・SF等の映画

 昨夜はかなりきついDVDを観ました。
 「隣の家の少女」です。
 暗黒作家とも言われるジャック・ケッチャムのベストセラー小説を映画化したものです。
 実際に1950年代にアメリカで起きた事件を題材にしています。
 
 両親を事故で亡くした高校生と小学生の姉妹が、親戚の家に引き取られます。
 その家の家族は中年の婦人と四人の息子だけでした。
 初めのうちこそうまく生活していますが、やがて婦人は姉妹、とくに姉に辛くあたるようになります。
 そんな頃、隣の家に住む12歳の少年と姉が知り合い、友達になります。
 婦人の姉に対する態度は尋常なしつけの閾を超え、虐待になっていきます。
 少年と少女は美しい田園風景のなかでザリガニをとったり、絵を描いたり、親交を深めていきます。
 おそらく少年にとっては初恋だったのでしょう。
 しかし婦人は姉が生意気だとして地下室に軟禁。
 ついには両手を縛ってつるし、思春期の息子たちに命じて全裸にしてしまいます。
 さらには逃亡を図ったとの理由で息子たちに少女を強姦させ、焼けるナイフで姉の腹に「私は淫売です」と彫り、バーナーで姉の陰部を焼いてしまいます。
 隣家の少年は一部始終を見るように婦人から強要され、心を痛めながらも、どこか楽しんでいる風情です。
 哀れな少女は絶命してしまい、50年後、少女からプレゼントされた絵を眺めながら、初老に達した隣家の少年が当時を回顧します。
 思い出にひたりながら森を散策する男の隣にはいつも虐待を受ける前の少女が笑顔でたたずんでいる、というノスタルジックとも残酷ともいえるラストを迎えます。

 スティーブン・キングが、少なくともこの20年間で最も本質的に恐ろしい、ショッキングなアメリカ映画だ、まさに「スタンド・バイ・ミー」と表裏一体をなす作品と言えるだろう、と評した作品です。
 「スタンド・バイ・ミー」は少年時代をノスタルジックに描いた表の作品で、こちらは裏の作品ということでしょうか。

 身内を死ぬまで虐待する事件というのは、現代日本で後を絶ちません。
 密室において圧倒的な力関係の差がある場合、人間はどこまでも残酷に成り得るようです。
 怖ろしいことですが、私もまた、残忍な人間の一人であるということを肝に銘じなければなりません。

 後味はかなり悪いですが、映画としての完成度は高いと言わざるを得ません。
 ちなみに、モデルとなった婦人は懲役18年の刑に服し、出所後、1985年に亡くなったそうです。
 息子たちはそれぞれ数年の刑を終え、今も健在だそうです。

 なんともやりきれない事件、そして映画です。

隣の家の少女 [DVD]
ブライス・オーファース,ダニエル・マンシェ,ブランシェ・ベイカー,グラント・ショウ,グレアム・パトリック・マーティン
キングレコード
隣の家の少女 (扶桑社ミステリー)
Jack Ketchum,金子 浩
扶桑社
スタンド・バイ・ミー コレクターズ・エディション [DVD]
リバー・フェニックス,ウィル・ウィートン
ソニー・ピクチャーズエンタテインメント


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