TOBA-BLOG

TOBA2人のイラストと物語な毎日
現在は「続・夢幻章伝」掲載中。

「約束の夜」158

2019年07月12日 | 物語「約束の夜」


京子の父親が

まさか、

マサシの父親・・・・・・??

満樹は、ちらりと、マサシを見る。

気のせいか
いや、気のせいかもしれない。
そんな気に、なっているのかもしれない。

京子とマサシの顔立ちが、やはり、似ていると、云う・・・。

「・・・・あれ?」

満樹は、首を傾げる。
何だろう、不思議な感覚。

この横顔。

京子だけじゃない。

誰か、

誰か、他にも似ている者がいなかったか。

「・・・・・・」

満樹は首を振る。
似ているなら、きっと耀のことだろう。
けれども、満樹は耀には会ったことは、ない。

「満樹」

マサシが云う。

「もう着くよ」

満樹は顔を上げる。

鉱石の加工品を扱う店が集まる地区。
多くの灯かりが、旅人たちを迎える。

「やあやあ。いつ来ても、ここはきれいだ」

マサシは、辺りを見渡す。

「何か、情報があるだろうか・・・」
「それを今から探すんだろう!」

マサシは笑う。
どうも~、と、さっそくの声掛け。

「おう、うちの商品見て行ってくれよ」

掘り出したばかりの鉱石を加工したものが、並んでいる。

「ああ。それもいいんだけど」
「いいんかい!」
「最近、お客さんはどうかな」
「何だ。世間話かぁ?」

店主は一休みついでに、坐る。

「まあ、いつも通りと云うか」
「うんうん。だよね~」
「相変わらず、いろんな一族が観光でみやげを買ってくれるよ」
「はぁん」

マサシは頷く。
満樹は、その様子を見守る。

「この東の兄ちゃんも観光かい?」
「そうだよ。・・・で」
「で?」
「西一族とか、最近来てる?」
「西一族?」

店主は首を傾げる。

「来てるよ。普通に」
「男の客はどうだい?」
「それも、普通に」

まあ、そうだろう。

「うん。例えば、このおみやげは妹にって人とか」
「妹さんに??」

うーーん??
店主は首をひねる。

「いたような・・・、いないような・・・」
「いろんな客がいるからねぇ」
「確か、キョーコにおみやげなんだ、とか云っていた客が・・・」
「えぇ!?」

満樹は、声を出す。

「京子!?」
「あ? え? そう云っていたような」
「まさか??」
「何度も、キョーコキョーコって、云っていた西一族がいたような」

1日に何人も訪れる客の
おぼろげな、店主の記憶。

「いたような気がしたってだけだよ」

店主は立ち上がる。

「あら~。ビンゴかねぇ」
マサシは満樹を見る。
「それで、その客は、」
「思い出した!」

店主が云う。

「そう。そのわりには、何も買わなかったんだ」
「買わなかった?」
「そうだよ」
店主が頷く。
「何だ。口だけかい、って思った記憶があるな」

満樹もマサシを見る。

「ほかの店も回って、もう一度来るからって云っていた」

店主が云う。

「つい、最近の話だ」




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「約束の夜」157

2019年07月09日 | 物語「約束の夜」

「おはよう!!
 少し寝坊してしまった。わるいね」

寝坊したとは思えない
爽やかな顔で、
マサシが現れる。

「おは、よう」

ホテルのロビーで出迎えた満樹に
わぁ、とマサシは声を上げる。

「満樹、酷いクマじゃないか。
 どうしたんだ、
 寝不足?お肌の大敵だよ!!」
「う、うん」
「ご飯は食べたのか!?」
「頼むから、大きい声出さないで」

割と徹夜とか平気なはずなのに
なんでだろう、心労?

「大丈夫、平気だ」

そう?と
訝しがるマサシを制して
満樹はホテルを出る。

「耀、………探している西一族なんだが、
 見つけるアテはあるのか?」
「うーん、
 基本的には他一族というのは
 目立つから、
 あちこち話しを聞いて回るぐらいだねぇ」

それとも、と
マサシは問いかける。

「その、耀ってのが
 観光で谷一族の村に来たってなら
 話しは別だけど」

鉱石採掘体験とか
加工体験所とか、
水辺遺産、古代の壁画とか。

耀も裏一族の手から逃げている
もしくは
裏一族について探りを入れているのなら
表だっては歩き回らないだろう。

「それは、無い、かな」
「残念。
 ここの鉱石は上級品で
 お土産にはもってこいの
 素敵な加工を施すんだけどね」
「………土産」

ふと、満樹は
京子の話を思い出す。

耀に谷一族の首飾りをねだった。
お土産に買ってきてくれると
約束した、と。

「………もしか、するのか?」

「心当たりがありそう?」
「分からない、が」
「何も無いよりは良いよ。
 そこからあたってみよう」

いざ、と
満樹はマサシに連れられ
鉱石の加工品を扱う店が
集まる地区へ向かう。

「ウチの村の鉱石は良いよ。
 鉱夫達が毎日頑張って掘り出して来てくれるんだ」
「仕事は、大変だろうな」
「重労働には違いないけど、
 稼ぎも良いし、人気の職だよ。
 ワタシも鉱夫になれたら良かったけど」

「………なりたかったんだ」

なんとなく、
重労働とか無理というタイプかと思っていた。

「うーん、ワタシは魔法が使えないから」
「魔法?」
「谷一族は灯りの魔術に特化しているとは
 聞いたことない?」

あれ、特に
鉱山で役に立つからなんだよ、と
マサシは説明する。

「基本的には皆、初歩的なレベルは使えるのだけど、
 ワタシは西一族の血が混ざっているから
 そこら辺が影響しているのかも」

困ったもんだよね、と。

「西一族」
「あぁ、昨日も言ったろう。
 ワタシの父親は西一族」

満樹はマサシに歩調を合わせて
横を歩く。

「その事について聴きたいんだが」
「だろうと思ったよ」
「その父親は、今は?」
「居ないよ。
 というより、母とはその時だけの関係だったらしい」
「………言いづらいことをすまん」
「いいよ」

気にするな、とマサシは続ける。

「会ったのは数回だけ。
 ワタシに、名前だけは残していった様だけど、
 どんな人だったかはあまり分からないんだ」

ただ、

「ワタシとその京子ちゃん。
 顔立ちが似ているというのなら、
 もしかするのかもしれないね」




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「約束の夜」156

2019年07月05日 | 物語「約束の夜」

ワタシの父親は西一族。

マサシの言葉に
満樹は一瞬混乱する。

「え?それってどういう」
「詳しくは明日~。
 湯船に浸かって
 しっかり疲れをほぐすんだよ」
「いや、そんな事より、あの、父親って」

「お宿代なら
少しお安く出来ないか話しとくから」

「それは、どうもありがとう!!」

「そんじゃ、おやすみ~」

バタン!!と
ドアが閉められ、部屋にひとり残される満樹。

「いや、父親が西一族って」

京子とマサシ、
赤の他人でここまで顔立ちが似る訳がない。
そして、
京子の父親は行方が知れないと言っていた。

「…………」

それは、つまり。

「…………」

京子になんと言おう。

ゴロンと寝返り。

「…………」

絶対にショックを受ける気がする。

それに、他にもそんな話が無かっただろうか。
交流が進んできた近年とは言え
他一族との婚姻は珍しい。

父親が他一族。

ヨシノの母親のユキノさんがそんな事を。

「…………」

いや、案件身近で起こりすぎでは。

ベッドサイドの置き時計を
もう何度目だろう、
時間を確認する。

ぼや~、と起き上がり
目の下にクマを作りながら満樹はぼやく。

「朝、か」

「眠れなかった」

うおおお、とベッドにひれ伏す。

「寝れるわけ無いだろ。
 あんな気になるポイントだけ言い残して去るって!!」




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「約束の夜」155

2019年07月02日 | 物語「約束の夜」

「ええっと、まず」

満樹は立ち上がり、
部屋の電気を
豆電球から一番明るい設定に切り替える。

「なぜに?」
「なんとなく!!」

なんか、薄暗い部屋で
二人っきりとか。
ムード出しちゃ駄目だと思って。

「うーん、怖がらせちゃったかな。
 ……じゃあ、俺から質問だけど」

「うん?」

今、俺って言った。

「驚かせたい訳じゃ無いからさ。
 こういう話し方の方が落ち着くだろ」

接客業だからね、
普段お客相手にはこう話すよ。と
マサシは言う。

「お仕事バージョンの俺も
 なかなか男らしいだろ」
「………いや。
 悪かった。マサシのいつも通りに話してくれ」

謝るのは自分の方だった、と
満樹は東一族の礼をとる。

「ふふふ。
 満樹は良い子だねぇ」

今、そうやって笑う顔は
やはりどこか京子に似ている。

「では、
 雑談はここまでにして」

マサシは問いかける。

「まず満樹の事を聞かせてもらおうか?」
「!?いや!!
 俺は探し人の事を聞けたら」

おいおい、と
マサシは呆れる。

「物事には順序が必要だ。
 ワタシは満樹の事を知る必要がある」
「ええ」

「困っている所は助けてあげたいけれど」

何もかも手放しにと言うわけにはいかない。

「ワタシの情報をどこまで出すべきか
 見極める必要があるってこと」
「なるほど」

それは、
満樹も同じ。

マサシはいい人だろうが、
どこまで信じて良いものか。

「順序立てて話そう。
 まずはお互いの事」
「………」
「そして、今の状況の確認」
「………」
「最後に、マッキーが探している。
 耀?の事」

「………巻き込む事に、なるかも」
「それ、今さらだよ」
「そうか」

うん、と満樹は切り出す。
マサシは何かを知っている気がする。

「………」
「………」

一通りの話しの後、
うーむ、と
マサシは頭を抱える。

「裏一族と来たかぁ」

え?え?と
ずばりな事を提案する。

「それって、割と重くない。
 自警団に頼るとか、
 それぞれの村長に言うべき事でない!?」
「ごもっともで」

警察行けよ、みたいな。

「危ないといってるんだ。
 腕に覚えがあるかもしれないけれど、
 女の子も居るんだろ」
「それは、わかっている」

以前から考えていた事。

「耀さえ見つかれば、
 京子は村に帰そうと思っている」

ツイナは何となく着いてきそう。
ヨシノは、
ちょっとわからないです。

「京子ちゃん、ね」
「ああ、
 その子の兄を捜している」

心当たりがある、と言っていた。

「知っていることを教えてくれ」

ふむ、と
口元に手を当てながら
マサシは目を細める。

「実は先日
 今日の満樹と同じ反応をした客が居た。
 ワタシの顔を見て驚くそぶりを見せた男が居て」
「それは!!」

「ああ、彼が
 満樹の探している人じゃないのかな?」

「耀、か」

これまでにない情報だ。

「七日とは経っていないけど、
 この村に留まっているかは
 分からないよ」
「彼の顔は覚えているか」
「もちろん」
「悪いが協力を」

「出来ないね」

ばっさりと、マサシは断る。

「………そうか」

確かに裏一族に関わるとなれば
誰もが身を引く。

「もう、これから動く気かい?」
「うん?」
「満樹は北一族の村から着いたばかり。
 疲れも取れない状況で
 もう日も暮れるって言うのに」

谷一族の村って
洞窟の中だからちょっと時間の感覚が。

「なんのために
 お宿に案内したと思ってるの!?」

ぷんすこ、と
マサシが立ち上がる。

「今日はもうお休み。
 疲れを癒して、耀の捜索は明日からだ。
 まさか朝は苦手だとか言わないよな」
「ああ。ええっと」

朝は苦手だけど、
大丈夫と頷く満樹。

「じゃあ、ワタシは帰るから。
 明日朝にここのロビーで待ち合わせでどうだい?」

「助かる。
 ありがとう、マサシ」

よろしく頼む、と言いながら
満樹はマサシの背に問いかける。

「ところで、
 西一族に知り合いは居ないか?」
「西一族?」
「ああ」

とても他人の空似とは思えない。
京子や耀に何か関係が。

「あるよ」

あっさり、とマサシは答える。

「ワタシの父親は西一族」




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