TOBA-BLOG

TOBA2人のイラストと物語な毎日
現在は「続・夢幻章伝」掲載中。

「約束の夜」86

2018年07月13日 | 物語「約束の夜」

と、云うことで

満樹はやってきました、砂漠当番。

東一族の西に広がるは、広大な水辺。
反対に、
村の東に広がるは、さらに広大な砂漠。

この砂漠に住むのは、砂一族。

薬と云う名の毒の扱いに長け、やたら好戦的な一族。

砂漠、であることが、唯一の救いなのか
薬(毒)作りの材料や水に乏しいため、大きな勢力となっていない。

からこそ、

再隣接の東一族は、とっても影響を受けてしまう。

薬(毒)の材料盗難
食料盗難
人さらい
毒実験・・・云々。

つまり

東一族の砂漠当番、とは、砂一族からの防衛なのである。

「・・・寒い」

満樹は、ため息をつき、空を見る。
辺りは暗くなっている。

月が輝きだしている。

「寒い・・・」

満樹は再度云う。

砂漠の夜は、冷える。

「気を付けろよ」
「判ってる」

俊樹(としき)が指を差す。

「地点があるぞ」

地点、とは、砂一族の魔法。
その場所を通過すると、大きな爆発が発生すると云う。
魔法地雷。

「なあ」

満樹が云う。

「俺、次の砂漠の務めはいつ?」
「ええ?」

俊樹は、おいおいと云う顔をする。

「そんなの俺が知るわけないだろう」
「だよな」
「でも、大将が通達は出していたぞ」
「え? 何の?」
「何って」

俊樹は首を傾げる。

東一族の戦術師である満樹に、伝わってないのか。

「ほら、うちの一族の周辺に怪しいやつがいるから」
「ああ」
「村の守備は強化するって」

なるほど、と、満樹は思う。

東一族の村を窺っている者がいることは間違いない。
守備の強化は、当たり前だ。

と、なると

「砂漠の務めもずいぶんと強化されているから」

当然、砂漠当番の回数が増えるわけである。

「もしや」

俊樹は満樹をじっと見る。

「さぼりたいのか」
「さぼっ!?」
「さぼりたいんだな」
「いや、そう云うわけでは、」
「満樹、お前がやたらと村外へ出ていることは知っている」
「はい・・・」

もともと満樹は、村外へ行くことが多かった。

「それは個人の自由だ」
「ありがとう」
「例え、恋なる者が他一族であろうと、それも自由だ」
「・・・恋?」
「判っている、満樹」

俊樹の顔は至って真面目だ。

「お前が、外で現を抜かすとも!!」
「えぇええええー!!?」
「ただ、子どもが出来た折には、親御さんには申し伝えるべきだ!」
「おぉおおおおー!!?」

いや、違う。

自分は務めで、
自主務めで、村外へ行っていたのだ。

久々に帰ってきて、何この浦島太郎状態。
話しが全く違うことになっている。

「俺は、大将に聞いたんだからな!」
「大将に!!?」
「満樹のことは、そっとしといてやれと!」
「そっと!?」
「恋人とかじゃないから、絶対に! って!!」
「こいっ!!」
「子どもとか作ってないから、絶対に!! って!!」
「大将ぉおおぉおおおお!!!」

気の使い方が、余計だった例。



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「約束の夜」85

2018年07月10日 | 物語「約束の夜」

パタン、とドアが開く音がして
京子は振り返る。

「………京子」
「お母さん」

驚いた顔をして、母親が駆けてくる。

もう、大げさなんだから。
数日家を空けていただけ、
裏一族を追うと決まった時点で
遅くなると手紙は書いた。

それでも、
兄が失踪して自分までも、と
心配をかけたかも知れない。

「京子、あなた!!」
「お母さん心配かけてごめ」

「美和子ちゃんとケンカしたって!!?
 お母さん恥ずかしいやら
 申し訳無いやら、ちょっと、ねぇ!!」

怒濤のお説教。

「あ~、うーっと、
 もう解決しているから、その件はほっといて!!」

村でそういう事になって居るなら、
方が付くまで
言われるままにしておこう、と
思ったものの。

なんだか、とっても、
もやもやする!!

「ところで、京子、
 あなた何してるの?」

ふん!!ふん!!

「腕立て伏せ、だけど」

筋トレ、続いてていた。
目指せムキムキ。

「うーん、お母さん、
 京子がやりたい事はさせてあげたい派だけど
 この方向性間違えて斜め45度に走り出す所」

さてはて

「一体、誰に似たのかしら?」

ねぇ。と
首を傾げる母親に、
そもそも村に戻ってきた目的を思い出す。

「もしかして、私
 ……お父さん似とか」

物心ついた時には
もう家に居なかったのだから
顔も覚えていない父親。

ふと、
色々考えてしまうことはある。

兄の耀は
顔立ちが母親によく似ている。
京子は多分、父親似。

それならば、自分と同じで、
実力不足に悩んだり、
他人と自分を比べて落ち込んでしまったり。

同じコンプレックスを抱えていたり
したのではないだろうか、と、

勝手に親近感を抱いてみる。

「貴方達の父親は、
 狩りの腕は抜群だったし、
 判断力も決断力もあり、
 人に寄るけど、お母さんの好みの顔つきだった」
「…………おお」

そこら辺は、耀が引き継いで居た。残念。

「そんな人、最近会ったような。
 は!!もしかして」

えええ?と
京子は、少し混乱する。

凄腕の実力。
諜報員だから、
本当の事情を告げずに家族の元を離れている。

「もしかして、
 私のお父さんって、千さん!!?」

朝の出会いは、
運命的な物だったのでは。

「セン?誰それ」

…………。

「いやいや、そんなわけ無かったわね」

よく考えれば、年齢が違う。
センは兄よりも少し年上に見えた。
父と間違えるには若すぎる。

「名前も違うし」
「でしょう」

よく知らない父親だけど、
何も聴いていないと言うわけではない。
名前は、そう。

「確か、……翼(ツバサ)」



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「約束の夜」84

2018年07月06日 | 物語「約束の夜」

「満樹~」
「ツイナ!」

「海一族って珍しいよねぇ」

東一族では。

「俺のこと忘れていただろう~!」
「ああ、いやぁ」

言葉を濁しつつ満樹は、

「何だか、たくましくなった? ツイナ」

ツイナの姿をまじまじと見る。

自分より年下と云うこともあって
もちろん、一回り小さかったツイナであるが、

こう

日に焼けて、健康的な肌?(注:もともと海一族は褐色です)
腕とかムッキムキ?

「修羅場を乗り越えたんだなぁ」

うんうん、と
知りもしない水樹が、頷く。

「何でこうなったかって!」
ツイナは満樹に食い掛ると見せかけて、遠い空を見る。
「南一族に豆収穫をさせられたからだよ!!」

「あ、あ~」

あ~、はいはい。
そうでした。

「満樹も豆の収穫を手伝ったって、南の人が云ってたぞ!」
「うん。やった」
「なのに、なぜ、ムキムキマッチョになっていない!?」
「えっ、何を求めてるの!?」

南一族の豆収穫とはいったい。

「今はムキムキマッチョ。筋トレをした方が空気を読めているよ!」

西一族の方からも、そんな雰囲気が・・・。

(前回参照)

「よくぞ、東にたどり着いた!!」
「ありがとう、東の人!!」

ツイナと水樹は握手をする。

「3年後、身近な人から生焼けクッキーを食べさせられるだろう!!」
「むむっ」
水樹は、ツイナをのぞき込む。
「何だそれは!?」
「握手ついでの先視だ!」
「そうか!」
再度、うんうん、と水樹は頷き。
「東一族の村の案内は、俺に任せてくれ!」
「頼んだ!」

とりあえず、まとまった。

「何食べたい?」
「豆は食べ飽きたな~」
「東も野菜しかないぞ」

ザッツ菜食主義。

肉や魚は食べません。

「甘いものとか?」
「ああ。ならいろいろと」
「その前にひとっぷろ浴びれる?」
「外向け浴場はあっちだ」

わいわい盛り上がる、ツイナと水樹に
ぽつりと満樹は呟く。

「そんなにゆっくりしていていいのか?」

「たまには休息も必要だよ~」

京子と、北での約束の日に間に合うのか。

「俺、先に北へ向かったらどうする?」
「北へ?」

何で? と、ツイナではなく水樹が首を傾げる。

「すぐにでも、北へ向かうってこと? 兄さん??」
「そう」
「何で?」

水樹は反対側にも首を傾げる。

「それは、俺の自由だろう」

満樹は水樹を見る。

「まさか、一緒に行きたいとか云うんじゃないだろうな」

このノリで、ツイナと水樹のダブルパンチはつらい。
ふたり合わせて、超化学反応しそうな気がする!

(ふたりのやり取りを見て、満樹の見解)

「違うよ兄さん?」
「えっ?」

水樹が何かを取り出す。

―― 東一族 砂漠当番 シフト表 ――

「明日、砂漠当番のシフト入っているよ~」

「えぇええええ!!?」

バイトか。



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「約束の夜」83

2018年07月03日 | 物語「約束の夜」

「美和子!!?」

距離を取り構える京子。

うっかりしていた、
美和子はもう村には戻らない物だと
そう思い込んでいた。

「本当にケンカしてたんだな」
「京子、話しぐらい
 聞いてあげなさいよ」

「……っつ!!
 違うの、みんな、美和子は」

「無理よ」

そっと、美和子が呟く。

「ねぇ、どうやって私が裏一族だと
 説明するの?
 こうやって、きちんと村にも戻ってきている」
「私達を襲ったのが何よりの証拠に」
「なるかしら?
 誰もそれを見ていないのに」
「………やってくれたわね」

先手を打たれた。

2人が揉めているという話を聞いている皆は
腹を立てた京子が
あてずっぽうで文句を言っていると
そう思うだろう。

「みんな、先に行ってくれる?
 京子と話してくるわ」

「分かった。早く仲直りしなよ~」
「待って!!」

二人っきりにしないで、と
すがるように皆を見るが
人のもめ事に口を出すのははばかれるのだろう。

大丈夫だよ、と、そのまま去っていく。

「………っ」

どうしよう。

満樹もツイナもいない。
1人で立ち向かわないと。
他に裏一族が潜んでいたら。

「…………大丈夫よ、
 私も村では騒ぎを起こしたく無いの。
 定期的に戻らないと怪しまれるから
 戻っただけだし」

つまり、
美和子も京子を追ってきた訳では無い
と言う事。

手短に、と美和子が言う。

「裏一族に来るつもりは無い?」
「無いわ。
 どうしてもというなら、
 この前のように、無理に連れて行けば」
「言ったでしょう。
 騒ぎを起こしたく無いと」
「お兄ちゃんについては
 どこまで知っているの?」
「裏一族に来たら教えてあげる」
「お断りだわ」
「私達を連れて行って、
 それでどうするつもりなの」
「私からは、言えない、けれど」

「今、大人しく付いてきて居た方が
 ケガをせずに済むわ」

あなたの、ためよ、と。

「………」

「私はまた村を出るわ。
 次、会うときは
 こうはいかないから、覚悟して」

定期的に戻らないと、と
美和子は言っていた。

西一族に潜むためとも
取れる、けれど。

本当は
西一族として村を捨てきれない?

「ねぇ、美和子。
 あなたはどうして裏一族に?」

村の風習に合わずに村を飛び出した者達、
はぐれ者の集まり、
禁術の使い手。

噂に聞く裏一族の話。

そのどれとも美和子が結びつかない。

「……誰か、美和子の大事な人が居るの?」
「どうかしら」

美和子が立ち去り
1人きりになった京子の元に
巧が様子を見にやって来る。

「京子、大丈夫か。
 何だか、様子がおかしかったから」
「……大丈夫」

でも、美和子と対峙して分かった。

京子は満樹のように武術を鍛えている訳では無い。
ツイナのように先視の術は使えない。

2人のようには戦えない。

西一族として狩りに出るから
多少、武器の扱いに慣れている、

それだけ。

「……京子、その
 本当に大丈夫か」
「だいっ、じょうっ、ぶよ!!」

悔しい。
何も出来ないのは。

「……京子、あの、何してんだ!?」

ふん、ふん!!と
スクワットをする京子。

そう、強くなるために。

「筋トレよ!!!!」



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