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現在は「続・夢幻章伝」掲載中。

「約束の夜」196

2020年02月07日 | 物語「約束の夜」
「お前の魔法は、
 どことなく谷一族の物に似ているな」

彼は少年に言う。

魔法のクセというか、
術を使うときの構えというか。

「そうなの?」

彼が言うのならそうなのだろう、と
少年は納得する。

「魔法は全部同じだと思ってた」

「根本は一緒だろうよ。
 でも、それぞれの一族で得意な物が違う。
 なんだろうな、血筋?そういうものか」

俺は西一族だから、分からんが、と。

「最初に真似したのが、
 谷一族のだからかな?」

悪いやり方だっただろうか、と
少年は黙り込む。

「いや、驚いている。
 普通はな、他の一族の魔法は使えないんだ」

近い物は出来ても、
あくまで真似をしているだけ。

それ程までに
各一族の魔術は違う。

「それにしても谷一族か、
 この市場には色々な一族が来るだろう。
 なぜ谷一族にした」

気に入ったのか、と彼は問うが
少年は首を横に振る。

「………俺、谷一族の村に居たから」
「なんだ、お前
 北一族じゃないのか?」
「北一族だよ」

多分、と少年は答える。

「うん?
 谷一族育ちと言うことか?」

西や東の一族と違い
北一族はどの一族にも顔が利く。
移住するという事もあるのかもしれない。

「お前、母親はどうしたんだ?」

最初に会ったとき、
少年は母親はという問いかけに
首を横に振った。

「もしかして、亡くなっているのか?」

「わからない」

少年は彼を見つめる。

「俺は、谷一族の村に置いていかれた様だから」

「……………」

しばしの沈黙の後、
彼は少年に問いかける。

「母親に会いたいか?」

思いもよらない質問に
少年は驚く。

会いたいのかどうなのか。
顔もろくに知らない、
幼い少年を谷一族の村に置いて行った
母親。

「わからない」

答える少年に、
彼は問いかける。

「なら、なぜお前は
 北一族の村に居る?」

「なぜって」

「谷一族の村で
 お前は生活していたんだろう。
 わざわざここに来た意味は何だ」

物乞いの様な暮らしをして、
それでも北一族の村にいる理由。

「母親を捜しに来たんじゃないのか」

彼は提案する。

「俺はな、
 元々お前の母親を探しに来たんだ」

その途中で少年に会った。
彼はもう一度問いかける。

「さぁ、どうする
 母親に会いたいか?」


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