昭和のマロ

昭和に生きた世代の経験談、最近の世相への感想などを綴る。

小説「派遣社員木村なつみ」③

2019-12-25 07:40:34 | 小説「派遣社員 木村なつみ」
 ボクは部長席でパソコンを使っている。
 聞くともなく若者たちの会話を聞いている。

「おごってくれるって話はどうなったの?」
 木村なつみが、事務処理をしながら、そっと隣りの中村に話しかけた。
「そうだっけ・・・」
 中村くんがとぼけている。
「忘れていないからね。絶対よ!」
 なつみの言い方がちょっときつくなる」
「じゃあ、その辺で・・・」
「牛丼とかハンバークじゃだめよ!」

「ちょっと待ってくれよ。もうちょっとでカネがまとまるから。・・・そしたらおごるから」
「何それ・・・」
 なつみが中村の顔を見つめる。
「うん。麻雀で勝っているんだ・・・」
「あなたって、麻雀強いんだってね。矢部くんが言ってたわよ」
「・・・」
「あいつ、どうしようもないって・・・あなたギャンブラーなのね」          

「そういうわけじゃないけど・・・。そしたらオレの味方になってくれないかな?」
 とつぜん中村が、思いついたというように言った。
「味方って?」
「みんな、しっかりして、中村くんなんかに負けないで!ってはっぱをかければいいんだ」
「・・・」
「なつみが言ってくれれば、みんなやる気になるかも・・・」
「あんた周りは敵ばっかりだもんね・・・」

 ボクや所長のような年寄りには寡黙ななつみも、中村のような仲間には心を開いておしゃべりになる。

 ─ 続く ─