昭和のマロ

昭和に生きた世代の経験談、最近の世相への感想などを綴る。

小説「派遣社員木村なつみ」②

2019-12-24 05:28:09 | 小説「派遣社員 木村なつみ」
 「いや、ボクはそんなこと何とも思っていないけど・・・」
 口に出してから、あ、まずいこと言ったかな?と思った。
「えっ! ってどういう意味? うわさを信じるってこと?」
「いや、そんなうわさ、ぜんぜん信じていないよ」
 あわてて否定した。
  
「なら、いいけど、専務とは仕事の関係だけで個人的な関係はいっさいないからね!」
 なつみは断言するように言った。
「もちろん、お食事をご馳走になることはあるわよ。でも変な関係はいっさいないからね!」
「・・・」
「この間経理の宮村さんからそんな話されてびっくりしたわよ。油断も隙もないんだから・・・」「・・・」
「行動には注意しないと・・」
 なつみは自分を戒めるようにつぶやいた。

 ・・・永作博美に似ているな・・・
 ボクは改めて、彼女のコケティッシュな顔を眺めた。

「今日はありがとう」
 彼女を下高井戸で下ろし、ブレーキを解いて発進すると彼女の声が追って来た。
 ・・・ボクの車に乗り込んだのは、そんなことが言いたかっただけなのだ・・・
 
 ─ 続く ─