昭和のマロ

昭和に生きた世代の経験談、最近の世相への感想などを綴る。

三鷹通信(216)市民大学・哲学コース(21)

2017-10-07 06:03:28 | 三鷹通信
 池内 了名古屋大学名誉教授    
 「世界平和アピール七人委員会の委員」でもある氏が「科学・技術とのつきあい方」について語ってくれた。

 科学・技術は政治情勢と無関係ではない。
 そもそも科学の制度化・体制化は19世紀半ば、産業革命とともに国家の重要な機関となった。
 
 それ以前の、コペルニクス、ガリレオ、ニュートンなどは自然哲学者であって、科学者ではない。
 
 国は科学技術政策を通じて大きな影響を与える。
 
 国家主導による開発・産業化(宇宙開発、原発、深海探査など)
 防衛省の軍事研究を通じて、軍需・民需のデュアルユースを展開。
 

 そこで、科学・技術とのつきあい方の処方箋(1)
 日本は地下資源は乏しいが地上資源の豊かな国である。
 
 「自然エネルギー、石油に代わる資源バイオマスの利用」
 
 地上資源は再生可能で環境負荷が少ない。
 (欲望の抑制、少量生産・地産地消・少量廃棄)という時代が必ず訪れる。

 その(2)
 「科学・技術のマイナス面を考える癖をつける」
  すべての物事には二面性(両義性)がある。        
  科学者は科学のプラス面ばかりを強調してマイナス面を無視することが多い。
  <公害防止><廃棄物処理><地球温暖化>などには関心が薄いが、それでいいのか?
  
 
 そして、「(経済的には)役に立たないことの有用性を忘れてはいないか?」
 *文化は人間の精神的活動の成果である。
  
  (芸術、芸能、学問、宗教、道徳、歴史・・・)
 *今は役に立たないが長い目で見れば、新しい技術に結びつく。
  (宇宙研究、海底探査・・・)
 *個人の努力と社会の受容。
  (税金、浄財、ボランティア、・・・)

 
 その(3)
 「科学・技術の倫理的立場を考える」
 *<予防措置原則>を考え方の基本とする。
  (疑問が解決するまで手を出さない)(性急にコトを運ばない)(便利さより、安全性を最優先)
 *<社会的弱者>・<少数者>・<被害者>の立場を想像する。
  (彼らならどう判断するかを考える)
 *未来世代に何を残そうとしているかを考える。
  (資源の浪費か? 負の遺産か?)  
 *経済至上主義でいいのか?
  (安かろう、悪かろう、悪貨は良貨を駆逐する。近視眼的利得─軍需に手を出す。・・・)
 *反倫理的科学・技術の存在。
  (核兵器、・・・)
 
 その(4)
 「最も単純な処方箋」
 *科学者の見分け方
  (科学・技術の限界・妥協点を語ること・弱者の味方であること)
 *商品の見分け方
  (昔からある保証期間の長い商品。効能、機能が単純なもの・省資源・安全性・環境に優しいもの)
  薬なら、 

 最後にボクから質問した。
「科学者の原動力は好奇心、理想と現実の矛盾を生きる糧として、真理の追究に邁進する者だと湯川秀樹も言っている。政治家じゃあるまいし、限界や妥協点を意識して研究する科学者は真の科学者と言えるでしょうか?」
 先生は応えた。
「湯川秀樹の頃と今は変わった。現代の科学者は<限界>・<妥協点>に配慮しなければならないんです!」
「彼らにどうやって理解させることができるのですか?」
「教育でやらなければなりません!」先生は強く応じた。
 ・・・たしかにそういう時代になったということか・・・