昭和のマロ

昭和に生きた世代の経験談、最近の世相への感想などを綴る。

三鷹通信(51)ベストセラーで<現代>がわかる

2012-03-19 04:07:18 | 三鷹通信
 現役編集者が主宰する「ベストセラーで<現代>がわかる」という読書会に参加した。
 
 あらかじめ小説「謎解きはディナーのあとで」東川篤哉、実用書「脂肪計タニタの社員食堂」、ノンフィクション「下山の思想」が取り上げられた。
 いずれもベストセラーで評判になっていることは知っていたが読んでいない。
 「下山の思想」は五木さんのものだから何となく内容が見えている気がしていたし、「脂肪計」のようなダイエット本には関心がないので「謎解き」を購入してみた。
 

 タイトルも興味深かったし、「お嬢様の目は節穴でございますか」という宣伝用キャッチもしゃれた内容をうかがわせる。本屋大賞第一位、165万部突破というのにも惹きつけられた。
 ところが読みだしてすぐ放り出してしまった。
 ・・・これがベストセラー?・・・
 文体そのものがシナリオを読んでるみたいでセンスが感じられない。
 書評の中で「個性的なキャラ」とあったが、前回「この本に出会えてよかった」でぼくが取り上げたR・D・ウイングフィールドの「クリスマスのフロスト」と比較するとキャラの立て方が平板である。
 中抜きで事件が解決した最後のパートを読んでみたが、「麗子はふと胃袋周辺に頼りない軽さを覚え、ついでにこの間食べそこなったフォアグラを思い出した。時計は午前二時。夜食が恋しい時間帯だ」 フォアグラ? 夜食が恋しい時間帯? ダサ!と思ってしまった。
 謎解きはマニアックな方ではないので、ユーモアミステリーとしての評価はよくわからないが・・・。
 Amazonの評判は最悪とのことだが、やっぱりと思ってしまう。
 参加者の中から「本屋でパラパラとめくってみて、こんな軽い本で1575円て高いと思った」という声があったが、初版は7000部と少なかったそうだ。
 それほど期待していなかったということか?
 それが、お嬢様とドSの執事という取り合わせと、キャッチの巧みさで本屋大賞を仕留めてからは、増刷に増刷でついに180万部! 印税何億である。
 これはマニアックな推理小説愛好家というより、今まで本も読んでいないような読者までをも獲得しているようだ。
 まさに、編集者の勝ち取ったベストセラーだ。

 
 「脂肪計タニタ」は扱っている材料も多く、今流行の簡単レシピではない。あくまでもダイエットに関心のある人たちにチョイスされている。ダイエットしたい人にとって、先ず<脂肪計タニタ>に目が行く。若い女性が多いそうだ。ダイエットできない人、ダイエットに失敗した人が、切実な思いで飛びついたのだろう。この本の内容通りに料理するというより、ダイエットのための何らかのインフォメーションを得るために・・・。

 
 「下山の思想」は、五木寛之の名前で売れる。彼は幅広い読者層を持ち、活躍期間の長さからいっても、真のベストセラー作家だ。
 時代を捉える目があり、今回の大震災で揺れる人々の心に訴える力があるのだろう。

 この読書会で得たものは多かった。

 *ベストセラーは魅力ある人と同じ。
  (1)人気がある人。・・・見た目がいい。
  (2)良い人。・・・読後感がいい。
  (3)会ってみたい人。・・・読んでみたくなる。

 *最近、昨年ぐらいから、すごい<本の時代>が始まっている。
  10万部売れればベストセラーと言われるが、2011年度ベストセラーの第30位東野圭吾の<麒麟の翼>が32万部売れている。前年では17位である。
 10~30万部のスマッシュ作品も相次いでいる。

 *図書館の利用者が10年前より33%増えている。

 *子どもたちの読者が1.6倍に増えている。

 *普段本を読まない人にも本が売れている。

 *自己啓発できない人が<啓発本>を何冊も買う。
  (ダイエット本だけでなく、サッカーの長谷部誠の<心を整える>、長友佑都の<日本男児>、柴田トヨの<くじけないで>、<百歳>、曽野綾子の<老いの才覚>、植西聰の<折れない心>などはベストセラーの上位である。

 まだまだ活字文化は衰えない。

 今年はかぐや姫が取り上げられそうだという。
 ジブリで検討中で、今回の読書会に参加した作家の方も書いているそうだ。
 奇しくもわが<レロレロ姫>も自然界からの使者として大震災とともに人間界に再来した。