昭和のマロ

昭和に生きた世代の経験談、最近の世相への感想などを綴る。

昭和のマロの考察(17)官僚(4)

2010-08-12 06:13:41 | 昭和のマロの考察
 最近、政界では<脱官僚>が強く叫ばれている。
 戦後、その機能をいかんなく発揮してきた<官僚>もその特質から弊害をもたらしていることが目に余るようになってきたのだ。

 天下りや仕分けをしなければならないようなムダな組織が増殖している例などが挙げられる。
 イギリスの政治学者パーキンソンはその著書<パーキンソンの法則>の中で英国の官僚制度を幅広く観察した結果、イギリス帝国が縮小していたにもかかわらず植民地省の職員数は増加し続けていたと指摘している。

 まさに日本の現状そのものだ。
 つまり、パーキンソンによればこのような結果は(1)役人はライバルではなく部下が増えることを望む、(2)役人は相互に仕事を作りあう、という2つの要因によってもたらされていると指摘している。

 また、<官僚>というと汚職が付きもののように言われている。
 立花隆は日本の政治システム全体に汚職体質がいきわたってしまったのは、田中角栄の遺伝子の問題と捉えている。


 角栄がどうやって官僚の心をつかんだかというと、郵政省でも大蔵省でも基本は同じことだったんですが、最初の挨拶のときに、自分は無学な素人であると率直にいい、諸君はそれぞれの分野の専門家なのだから、こちらから、ああしろこうしろということは特にない。自分が望むのは、諸君が思うことがあったら、何でもいってきてくれ。
 自分の力の範囲で、その仕事ができる環境(予算、政治サイドや他省庁との調整など)をできるだけととのえてやろう。失敗をおそれないで何でもやれ、失敗の責任は全部自分が取るから心配するな。


 このスピーチで、高級官僚のハートをパッとつかんんでしまったんです。
 ・・・官僚にとってこんなありがたい話はないわけです。そして具体的な案件をもっていくと、その実現のためにいろいろ汗をかいてくれたので、官僚の評判もどんどん上がっていったわけです。・・・
 角栄のやったのはそういうきれいごとだけではありません。
 高級官僚にお中元、お歳暮の季節にキャッシュをばらまいたり、官僚の退官後に有利な天下り先を世話してやったりと、さまざまな便宜をはかって、官僚の懐深くどんどん入り込んでいきました。
 それとともに、官僚のためにそれだけ働いてやったのだから、こちらの頼みごとがあるときは、それなりにきいてもらいたいという形で、族議員と官僚の癒着関係を作り出していったわけです。
 ここに、いま起きている一連の政界不祥事の原点があります。
 要するに口きき政治、利権政治の原点です。
 それはぜんぶ基本的に族議員と各省庁の癒着から起きています。
 (1974年文芸春秋、田中角栄研究より)


 ─続く─