飽食山河

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ただいま

2016-07-22 17:06:55 | 2016.05

手を延ばすけど

いつも斜めで

知らなくて

届かないから

身体を引き裂いて

でも知らないから

同じ方向に爪をかけるの

 

ガラスの箱に

あなたは居る

どこかに穴が

空いているらしい

何もすることがないから

遠くを見て

手を延ばして

そこに誰も居なくて

泣くの

 

手を引いてくれるかな

もしかしたらあの人が

髪を結ってくれるかな

あの人が

泉の淵に住む鳥の声で

歌を歌ってくれるかな

 

コンクリートの

湿った場所を求めて

いくつもの手を延ばす

聞いて欲しい

うなずいて欲しい

抱いて欲しい

触れる場所がある

それだけで充ち足りていたけれど

 

光が降ってきたから

人間はもっと きっと

愛されたいんだ

私もそうだと

身体を切り裂いて

届くようにと

やってみたのだが

 

夜が来て

色んな数字が

世界を支えてると気付いた

温度

湿度

風速

経済のいろんなこと

人口の移動とか

私は三丁目に帰る

生まれた所とは別の部屋だ

 

悲しくて

だけど誰にも言えず

自転車をこいで

落葉を踏んで

やるせなく

いつもの通り

鍵を刺し

むかつく玄関に

ただいまと言う



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