平ねぎ数理工学研究所ブログ

意志は固く頭は柔らかく

小野俊一 > いちゃもんをつけるな!(4)

2012-06-15 20:06:10 | 小野俊一
「院長の独り言」からの転載です。せっかく「原子力安全・保安院/中間まとめ資料」があることを教えたのに、まだこんなことを書いています。

http://onodekita.sblo.jp/article/56476888.html(女川原発1mの地盤沈下と5mの東方移動)
さて、女川の状況。地盤を見て大変驚きました。フクシマでは50センチの地盤沈下でしたが、女川ではなんと1.2メートルの沈下、そして東方向に5.3メートルの移動。これだけ移動して大丈夫な建物、配管があるとはとても思えません。
保安院は,このことについて次のような呆れ果てる報告書を出しています。
平成23年東北地方太平洋沖地震の知見を考慮した原子力発電所の地震・津波の評価及び福島第一及び福島第二原子力発電所の原子炉建屋等への影響・評価に関する中間取りまとめについて から、平成23年東北地方太平洋沖地震の知見を考慮した原子力発電所の地震・津波の評価について平成24年2月16日経済産業省 原子力安全・保安院から

2.2.3 地殻変動量
国土地理院によれば、女川原子力発電所が位置する牡鹿半島の電子基準点「牡鹿」で約1.2mの地盤沈下し、水平方向の変動量(東南東)は約5.3mと報告されている。また、東北電力の報告によると、GPS測量による地形解析を実施した結果、地震地殻変動により敷地は1m程度沈下したが、その変動量は敷地内で上下・水平方向に一様であり、地盤の傾斜は生じなかったとしている。(図Ⅱ.2-4)

この報告書を読んで、地盤沈下のことを経産省が認識していることはわかりました。実はこの資料を提示して、フクシマで地盤沈下が起きても建物にはなんの問題もなかったと情報をくれた人がいました。
この考え方は甘すぎます。私は阪神大震災の時に、東電の安全関係部門にいました。阪神大震災が起きたときに、当然全電力が通算省(当時)に呼びつけられました。その時に通産技官が発した言葉は「阪神大震災では、新しい知見はなかった。それにそって、資料を作るようにと言われたのです。」今回は、GPSのデータがあるので、地盤沈下は認めざるを得ません。ところが、一様に沈下したから大丈夫と、誰が見てもわかるウソを書いているわけです。以前、柏崎はアリ地獄の砂丘に造られていたで書いたように、殆ど地盤沈下のなかった中越沖地震でも東電はとんでもない目に合わされました。今回の牡鹿半島は、ほんの僅かな距離で10センチ以上の地盤沈下に差があります。これで、敷地内に埋設された配管に異常が起きないはずがありませんし、サポートで固定された配管に不具合が起きないはずがありません。
それは、地震を経験したことのある工事現場の方なら議論の余地なく認めることです。この女川原発は、二度と稼働できないのは最早当たり前で、今の復旧工事は、体裁を整えるためにやっていると言って良いでしょう。


胸が悪くなりそうな文章です。特にこの部分です。
>ところが、一様に沈下したから大丈夫と、誰が見てもわかるウソを書いているわけです。
現地調査をしてもいないのに、なぜウソであることがとわかるのでしょうか。しかも、「誰が見てもウソとわかるウソ」とまで言いきっているのです。そこまで言いきれるのなら、その根拠を示すべきです。それが技術者(現役OBに関わらず)の務めでしょう。気分が悪いので、この記事にはこれ以上コメントしません。

私は、毎朝、マンションの4階からエレベータで約10m沈下しています。10mも沈下しているのに私の身体には異常は生じません。いうまでもなく私の身体全体が一様に沈下しているからです。身体の部位ごとに沈下量が異なる場合は、私の身体には応力が発生します。地盤沈下についても同じことが言えます。地盤の沈下量が一様でなく構造物の支点ごとに異なる場合は(不同沈下と言います)、構造物が損傷する可能性があります。しかし、女川や福島第一の沈下は、たとえて言えば、原発プラントの敷地ごとエレベータに載せて1m下げたようなものなのです。何の障害も起きません。1m下がろうと2m下がろうと関係ないのです…、と言っても彼には通じないでしょうね。

彼は、院内勉強会に飽き足らず、いろんな場所に出向き、デマを撒き散らしています。困ったものです。私は、学生のときに武谷三男編「原子力発電(岩波新書)」を読んで以来、原発反対の立場です。大飯再稼働にも反対です。彼の軽率な行動が原発推進派を利する結果になることを最も心配しています。