平ねぎ数理工学研究所ブログ

意志は固く頭は柔らかく

虫眼鏡

2008-08-25 21:07:56 | 雑談
3歳だったと記憶する。父が小さな虫眼鏡を買ってくれた。
生まれて初めて虫眼鏡に接したときの驚きと喜びは、筆舌に尽くし難いものがあった。
物が大きく見える。黒い紙に日光を当てれば煙が出る。3歳児には不思議で面白くて飽きることがなかった。虫眼鏡は私の宝物になった。
ある日、1歳年上のUが私の家の縁側で何かを探していた。縁側には虫眼鏡がある。私は虫眼鏡を縁側の秘密の場所に隠していたのだ。よもやと秘密の場所を調べてみると虫眼鏡がない。Uが盗んだのだ。

(私)「虫眼鏡を返してくれ」
(U)「知らんで」
(私)「虫眼鏡を返せ」
(U)「何のことかわからん」

Uは、私の執拗な追求にも、とぼけながら逃げていく。私は「返せ~」と叫びながら、どこまでも追いかける。Uは逃げる。私は追いかける。鬼ごっこをしているみたいだ。
結局、Uは逃げ切った。私を魅了した虫眼鏡はUの所有物になった。

あれから51年経った。Uは忘れてしまっているだろう。
しかし、私は決して忘れない。絶対に忘れやしない。痴呆になっても忘れないだろう。
Uは私の宝物を盗んだ。いつか返してもらわなければならない。