昨12月1日、EUは、世界的なインフラや気候変動対策プロジェクトなどに2027年までに総額3000億ユーロ(3400億ドル)を投資する計画を発表しました。
「など」の中には気候変動対策のほか、デジタル化、エネルギー、輸送部門、教育、研究など幅広い部門も入っているようで、EUとしては、この計画は中国の一帯一路を相手と意識したものであることを率直に表明しています。
EUによれば、この計画は、地元社会がインフラ投資の恩恵を受けられるように、民間部門と提携して実施すると表明。中国の一帯一路に対する「真の代替案」だとしています。
というのも、中国の一帯一路が、現代版シルクロードとして、ユーラシア大陸からアフリカまでのインフラ整備による経済発展を目指すとしているのですが、現実には、中国の場合、中国式の政治社会体制を目指していることのへの危惧があるでしょう。
更にこれまでの経緯を見ても、相手国が目を瞠るような巨大、豪華な整備を行い、結果巨大債務で相手国が返済不能になる、いわゆる「債務の罠」になる例(スリランカのハンバントタ港その他)などの指摘もあり、自由世界としても何か対抗措置が必要との意識あってのことでしょう。
EUはアメリカのようにあからさまに中国との対立意識をおもてに出しませんが、最近の習近平さんの言動を見ると、矢張りきちんと対抗措置を取っていかないといけないのではないかという強い意識を持っているのでしょう。
最近、ラオスに対する中国の援助政策の報道を目にしますが、まさに中国の威力を見せつけ、中国に頼るのが最もいいといった、いわば中国一辺倒のファンづくりのような感じを強く受けます。
確かに中国が援助してビエンチャンへの鉄道を敷き、それがタイからマレーシアに伸びてシンガポールにまで達するといった構想をすれば、インドシナ半島諸国からシンガポールというアジアのハブを経てインドネシアへと延びる東南アジア圏の経済の連携、それをベースにした広域の経済発展に資することは大きいでしょう。
こうした国際協力のためのインフら整備が共存共栄、関係諸国全てのwin=winの関係の中で行われるような状態が実現すればまさに素晴らしい事とですが、かつて日本が南満州鉄道に力を入れたように、特定国の植民地支配の構想の中に織り込まれていては、最終的な完成はおそらく不可能でしょう。
中國、習近平さんが,いかなる意図を持っているかは知りませんが、EUの構想は、こうした目標を持つ活動は公正な市場原理に基づいて、関係者がみな自由経済の原則に則ってこそ、最終的な完成にまで持っていけるという「自由競争原理」の大切さを、身をもって実践しようという意図の具体化と理解すべきでしょう。
EUにとっても冒頭に記した38兆円(日本円にすれば)は大きな負担でしょう。しかし、それをEUの力で実行しようという合意には、深甚の敬意を表したいと思う所です。
戦後のアメリカのマーシャルプラン、ガリオア・エロア、更にはアジアの経済発展を見ても、広域の国際協力が、如何に関係経済圏の発展、人々の生活の向上に役立つかは、目に見える形で存在します。
中國とても無限にカネがあるわけではないでしょう。今回のEUの構想が、喫緊の課題になりつつある気候変動への対応も含め、世界の国々のwin=winも経済協力関係への契機のもなることを願う所です。