tonto's blog

コメントをいただく時はこの下、「メッセージを送る」からお願いします。お返事したいので、メールアドレスもお忘れずに。

空の冒険

2015-07-10 | weblog

 あるエッセイを読んで、そうなのかもしれないと思い、こちらに書き留めておきます。


 

吉田修一「空の冒険」(集英社文庫)より抜粋


 師走の時期、国内線の飛行機(特に東京や大阪からなどの大都市からの出発便)に乗ると春に就職や進学で故郷を離れ、ほぼ一年を都会で過ごしての帰省の様子を見て、自分を重ね合わせ思う事がある。夏の四ヶ月目の帰省ではまだ「東京へ行ってきた」感覚が強かった。しかし12月の帰省では「東京で暮らしている」という感覚に変化していたように思う。ひと言で言えば、夏が「故郷へ帰る」だとしたら、冬には「故郷に行く」になっていたのだ。

 

                      


 さて、このエッセイのように自分も親元を離れ、東京で暮らし始めた時はどうだったのかを考えてみると、学生として東京で暮らすようになったのと、就職して東京で過ごすようになったのでは違うなと思いました。もちろん「生活費+α」もスネかじりのままですから当然かもしれません。

 その後、少ないながらも自身で収入を得、帰省した時に両親の顔をみて「前より歳とったな」と思うようになったころ、初めて感謝の気持ちと、その頃になってようやくこのエッセイにあるように「都会に暮らし・故郷に行く」に変化したように思いました。

 このエッセイ集の著者である吉田修一氏を知ったのは、映画「悪人」みてから。決して恵まれているとは言えない寡黙な青年の悲しみと怒り。九州の片田舎で職場とアパートを往復するだけの寂しい生活を送る女性。この二人を中心としたそれは「暗い」映画でしたが、それ以外に私に何かを感じさせた作品であったように思い、そのあとは何冊かの作品を読みました。

 久しぶりに購入したの同氏の作品ですが、今回のものは全日空の機内誌「翼の王国」に連載したものをまとめた、短編およびエッセイ集。これまでのもの(長編ばかり)とは印象が変わりました。機内誌掲載のものだからかもしれませんが、短編は気持ちを「ほんわか」させる。