(※朝日新聞朝刊連載「折々のことば」風に)
「『泣ける本』という言いかたが嫌いである」
お金と時間をかけて本を読む以上、何か見返りがなければ割に合わないと思うのは、いじましい。涙は心を揺さぶられた時に思わず出るもの。「思い出づくり」も同様。思い出は作ろうと思って作れるものではない。「手軽に読める本からは手軽なものしか得られまい。」35年間、読書会を続けてきた向井さんは戒める。上澄みは多くの泥水があってこそ生まれるものではないか。コスパの良さを求めすぎると、思いもよらない驚きや、心に響く深い感動との出会いがない、ライトな人生になってしまうかも。
向井和美著 「読書会という幸福」(岩波新書)から
向井和美著 「読書会という幸福」(岩波新書)から