花・伊太利

日々の生活に関する備忘録です。

無鉄砲

2016-05-30 20:05:00 | Weblog
 「親譲りの無鉄砲で小供の時から損ばかりしている。」これは言うまでもなく、夏目漱石「坊ちゃん」の冒頭です。主人公は本当に無鉄砲で、数学教師として赴任した四国の中学でいろいろな騒動を起こします。その挙句、「赤シャツ」、それから「赤シャツ」の腰巾着である「野だいこ」を天誅と称して殴打し、辞表を書いて東京へ戻ります。「赤シャツ」、「野だいこ」を殴ったのは、元々虫が好かなかったということはありますが、同僚の「うらなり君」の許嫁を「赤シャツ」が奪ったことをけしからんと思ったのが直接的な理由です。お話の中では、「坊ちゃん」の小気味よい無鉄砲さが爽快感を醸し出し、殴って辞職するのも当然な流れのように感じますが、現実問題としては「それって職を辞してまでやることかぁ?」と思います。もし、自分の周りに「同僚の結婚を約束した女性にちょっかいを出すとは何事か」と言って殴り、会社を辞める人間がいたとしたら、その馬鹿さ加減に呆れてしまうでしょう。しかしながら、実際にはそんな人がいないからこそ、虚構の世界における無鉄砲さに胸のすく思いやカタルシスを感じるのだろうと思います。