各種法人(会社を除く。)が合併をし,その変更の登記を申請する場合に,「資産の総額」が登記事項である法人においては,同時に,資産の総額の変更による登記についても申請をする取扱いである。
えっ? なぜ?
普通に考えればわかることであるが,登記事項に変更が生じたからである(組合等登記令第3条第1項)。
組合等登記令
(設立の登記)
第二条 組合等の設立の登記は、その主たる事務所の所在地において、設立の認可、出資の払込みその他設立に必要な手続が終了した日から二週間以内にしなければならない。
2 前項の登記においては、次に掲げる事項を登記しなければならない。
一 目的及び業務
二 名称
三 事務所の所在場所
四 代表権を有する者の氏名、住所及び資格
五 存続期間又は解散の事由を定めたときは、その期間又は事由
六 別表の登記事項の欄に掲げる事項
(変更の登記)
第三条 組合等において前条第二項各号に掲げる事項に変更が生じたときは、二週間以内に、その主たる事務所の所在地において、変更の登記をしなければならない。
2 前項の規定にかかわらず、出資若しくは払い込んだ出資の総額又は出資の総口数の変更の登記は、毎事業年度末日現在により、当該末日から四週間以内にすれば足りる。
3 第一項の規定にかかわらず、資産の総額の変更の登記は、毎事業年度末日現在により、当該末日から三月以内にすれば足りる。
各種法人に関する登記において,「資産の総額」が登記事項であるものがあるが,これらは,組合等登記令の別表に規定されている。
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=339CO0000000029
登記事項とされている法人の主なものとしては,「医療法人」「学校法人」「社会福祉法人」などがある。
新設合併の場合は,「資産の総額」は,設立の登記の登記事項であるから,申請書に登記事項として記載して申請しなければ,もちろん却下である(同令第2条第2項,第16条第3項)。
吸収合併の場合は,普通に考えると「2週間以内」(同令第3条第1項)ということになってしまう。いわゆる毎年の「資産の総額の変更による登記」は,毎事業年度末日現在により,当該末日から3か月以内にすれば足りる(同令第3条第3項)ものとされているにもかかわらずである。
「ん~,厳しい。」と考える向きが多いであろう。さて・・・。
登記実務は,「申請なければ,変更なし」という考え方である。合併は,資産の総額の変更原因に過ぎないが,期の途中であっても,その変動が顕著であることから,監督官庁の行政指導で,その時点における変動額を登記すべしとする慣行が形成されたものであろうと推察する。したがって,合併の登記の申請と同時でなくてもよいように思われる(まさか,「合併による変更の登記」には,「資産の総額の変更による登記」も包含されると解して,申請の却下事由である「同時にすべき他の登記の申請を同時にしないとき」(商業登記法第24条第12号)に該当すると取り扱われることはないであろう。)。
とすれば,吸収合併の場合の「資産の総額の変更による登記」については,「合併の登記」と切り離して,準備が整い次第,「3か月以内」に申請すればよいと考えるのが穏当ではないだろうか(組合等登記令第3条第3項が類推適用されるという考え方。私見である。)。類推適用説を採らなくても,過料を課さない運用をするのであれば,特段の問題は生じない。
コメント欄の御質問は,3月決算の社会福祉法人の合併の場合であり,4月1日に効力を生ずる合併の登記と併せて行う資産の総額の変更の登記(原因年月日は,「令和3年4月1日変更」である。)を了した後に,わざわざ決算期現在の変更の登記(原因年月日は,「令和3年3月31日変更」である。)を申請しなければならないのか,という問いである。
組合等登記令を形式的に読むと,「申請しなければならない」であるが,無益なことであり,また上記のとおり,登記実務は,「申請なければ,変更なし」の考え方であるから,私は,スルーしてもよいと考える。監督官庁がどのように考えるか次第といえようか。
登記実務の考え方としては,概ね上記の整理でよいと思われるが,各種法人には,監督官庁(の担当者)という,時に理解不能なモンスターが存在していることから,随時調整の上,進める必要がある。
えっ? なぜ?
普通に考えればわかることであるが,登記事項に変更が生じたからである(組合等登記令第3条第1項)。
組合等登記令
(設立の登記)
第二条 組合等の設立の登記は、その主たる事務所の所在地において、設立の認可、出資の払込みその他設立に必要な手続が終了した日から二週間以内にしなければならない。
2 前項の登記においては、次に掲げる事項を登記しなければならない。
一 目的及び業務
二 名称
三 事務所の所在場所
四 代表権を有する者の氏名、住所及び資格
五 存続期間又は解散の事由を定めたときは、その期間又は事由
六 別表の登記事項の欄に掲げる事項
(変更の登記)
第三条 組合等において前条第二項各号に掲げる事項に変更が生じたときは、二週間以内に、その主たる事務所の所在地において、変更の登記をしなければならない。
2 前項の規定にかかわらず、出資若しくは払い込んだ出資の総額又は出資の総口数の変更の登記は、毎事業年度末日現在により、当該末日から四週間以内にすれば足りる。
3 第一項の規定にかかわらず、資産の総額の変更の登記は、毎事業年度末日現在により、当該末日から三月以内にすれば足りる。
各種法人に関する登記において,「資産の総額」が登記事項であるものがあるが,これらは,組合等登記令の別表に規定されている。
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=339CO0000000029
登記事項とされている法人の主なものとしては,「医療法人」「学校法人」「社会福祉法人」などがある。
新設合併の場合は,「資産の総額」は,設立の登記の登記事項であるから,申請書に登記事項として記載して申請しなければ,もちろん却下である(同令第2条第2項,第16条第3項)。
吸収合併の場合は,普通に考えると「2週間以内」(同令第3条第1項)ということになってしまう。いわゆる毎年の「資産の総額の変更による登記」は,毎事業年度末日現在により,当該末日から3か月以内にすれば足りる(同令第3条第3項)ものとされているにもかかわらずである。
「ん~,厳しい。」と考える向きが多いであろう。さて・・・。
登記実務は,「申請なければ,変更なし」という考え方である。合併は,資産の総額の変更原因に過ぎないが,期の途中であっても,その変動が顕著であることから,監督官庁の行政指導で,その時点における変動額を登記すべしとする慣行が形成されたものであろうと推察する。したがって,合併の登記の申請と同時でなくてもよいように思われる(まさか,「合併による変更の登記」には,「資産の総額の変更による登記」も包含されると解して,申請の却下事由である「同時にすべき他の登記の申請を同時にしないとき」(商業登記法第24条第12号)に該当すると取り扱われることはないであろう。)。
とすれば,吸収合併の場合の「資産の総額の変更による登記」については,「合併の登記」と切り離して,準備が整い次第,「3か月以内」に申請すればよいと考えるのが穏当ではないだろうか(組合等登記令第3条第3項が類推適用されるという考え方。私見である。)。類推適用説を採らなくても,過料を課さない運用をするのであれば,特段の問題は生じない。
コメント欄の御質問は,3月決算の社会福祉法人の合併の場合であり,4月1日に効力を生ずる合併の登記と併せて行う資産の総額の変更の登記(原因年月日は,「令和3年4月1日変更」である。)を了した後に,わざわざ決算期現在の変更の登記(原因年月日は,「令和3年3月31日変更」である。)を申請しなければならないのか,という問いである。
組合等登記令を形式的に読むと,「申請しなければならない」であるが,無益なことであり,また上記のとおり,登記実務は,「申請なければ,変更なし」の考え方であるから,私は,スルーしてもよいと考える。監督官庁がどのように考えるか次第といえようか。
登記実務の考え方としては,概ね上記の整理でよいと思われるが,各種法人には,監督官庁(の担当者)という,時に理解不能なモンスターが存在していることから,随時調整の上,進める必要がある。
(なんと昨年の司法書士試験ではこの点が出題されています)