司法書士内藤卓のLEAGALBLOG

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配偶者居住権の設定の登記の申請方法

2019-11-30 14:32:31 | 民法改正
 平成30年改正民法(いわゆる相続法の改正)で創設された配偶者居住権(令和2年4月1日施行)の設定の登記の申請方法や如何。

 基本的には,第1段階として所有権について相続登記がされた後に,第2段階として,登記権利者(配偶者)及び登記義務者(建物所有者)が共同して申請することになる(不動産登記法第60条)。

 したがって,例えば,被相続人がその配偶者に配偶者居住権を遺贈する旨の遺言を残して死亡した場合であっても,

(1)建物の所有権を相続により取得した者が第1段階の相続登記を行わないとき。
(2)建物の所有権を相続により取得した者が第1段階の相続登記を行ったが,配偶者居住権の設定の登記の申請に協力しないとき。
(3)建物の所有権の帰属が確定していないとき。

等々の場合には,配偶者は,配偶者居住権の設定の登記を受けることができず,第三者に対抗することができない(改正後の民法第1031条の規定が準用する第605条第2項)という事態が生じ得る。

 このような事態は,配偶者の居住権を保護する観点から配偶者居住権を法制化した立法趣旨に反するのではないか。

 ところで,民法及び不動産登記法の見直しの議論における部会資料19によれば,次のような論点が提示されている。


第1 相続の発生を登記に反映させるための仕組み
3 相続等に関する登記手続の簡略化
(1)遺贈による所有権の移転の登記手続の簡略化
 相続人が受遺者である遺贈による所有権の移転の登記手続を簡略化するため,共同申請主義(不動産登記法第60条)の例外として,次のような規律を設けることについて,引き続き検討する。
 相続人が受遺者である遺贈による所有権の移転の登記は,登記権利者が単独で申請することができる。


 この議論を一歩進めると,配偶者が受遺者である遺贈による配偶者居住権の設定の登記の申請に関しても,所有権に関する相続登記を経ずに,あるいは「遺産共有に関する登記」を経た上で,登記権利者である配偶者が単独で申請することができるという規律を設けることも十分に考えられるし,そのような規律を設けなければ,配偶者が先に登記を受けた第三者に対抗することができない場面が往々にして生ずるのではないだろうか。

 大胆な試論かもしれないが,十分検討に値すると思われる。

 なお,上記「(3)建物の所有権の帰属が確定していないとき」については,例えば,被相続人が「配偶者が居住する建物は,長男に遺贈する」「当該建物に関する配偶者居住権を配偶者に遺贈する」という遺言をしたが,被相続人よりも先に長男が死亡しており,建物の所有権に関して遺産分割協議に委ねられることになった場合が考えられる。決して稀とはいえない程度に生ずる可能性があると思われる。
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