司法書士内藤卓のLEAGALBLOG

会社法及び商業登記に関する話題を中心に,消費者問題,司法書士,京都に関する話題等々を取り上げています。

利益相反取引と不動産登記の添付書面(再掲)

2012-11-02 16:30:08 | 会社法(改正商法等)
 現今だに,くすぶっているようであるので,再掲しておく。



 株式会社所有の不動産について登記を申請する場合に,当該株式会社の取締役との利益相反行為であるときは,これを承認する取締役会議事録等を添付する必要がある。

 ところが,当該取締役が登記義務者であり,当該取締役が議事録に記名押印している場合,当該取締役の印鑑証明書は,添付を要求する根拠条文が異なるからということで,2通必要である,という取扱いが一部でなされているようである。

 平成16年改正不動産登記法が施行された直後には,確かにそのような議論があったが,終息したものと思っていた。しかし,一部の登記所では,現在だに,そのような取扱いがされているようである。

 平成16年改正前不動産登記法下においては,印鑑証明書の原本還付が認められていたが,改正により不可となったことから,顕在化した問題である。しかし,問題の根本(根拠条文が異なる。)は,改正前後を問わず不変であるのだから,従来1通のみで足りるとしていたものを,原本還付が不可となったからといって,2通必要であると豹変するのは,不可解である。原本還付の可否とは関係がない問題であるからである。

 また,同じ問題は,住民票を一連の申請で「住所の変更を証する書面」及び「住所を証する書面」として利用する場合にも生ずるはずである。この場合,根拠条文が異なるからということで,「前件添付」の取扱いをすることはできない(「原本還付」扱いをすればよい。)が,「住民票の原本を2通添付せよ」という話は聞いたことがない。

 登記実務は,善解理論により,極めて柔軟(ユーザー・フレンドリー)である場合と,不可解なほどに保守的である場合がある。理屈としては理解できなくもないが,ユーザー・フレンドリーに対応してよい問題であると考える。


 なお,議事録における記名押印の要否の観点からは,次のとおり解することもできよう。

(1)株主総会の承認を要する場合
 株主総会の議事録については,会社法上は署名等の義務はないが,不動産登記における添付書面としては,議事録の作成に係る職務を行った取締役の記名押印及び印鑑証明書が必要である。この理からすると,議事録の作成に係る職務を行った取締役以外の取締役の記名押印があったとしても,単なる余事記載とみることができ,極論すれば,これらの取締役の印鑑証明書は,不要と解することができよう。すなわち,2通に拘る理由がない,ということである。

(2)取締役会の承認を要する場合
 特別利害関係を有する取締役も,取締役会に出席していたとして,取締役会議事録の記名押印に名を連ねることも多いが,審議及び議決に加わらなかった当該取締役が,法的な意味で取締役会に出席していたといえるのかという問題もある。取締役会の場に在席したとしても,「オブザーバー」に過ぎないと考えられるのである。

 取締役会に出席した取締役に対して,議事録への署名等を義務付ける理由としては,議事録に異議をとどめない取締役について,その決議に賛成したものとの推定が働く(会社法第369条第5項)ことにあるが,これは,「取締役会の決議に参加した」取締役に及ぶ推定効であって,決議に参加しなかった特別利害関係を有する取締役には無縁である。
 
 したがって,審議及び議決に加わらず,単に在席していたに過ぎない取締役の記名押印は,法的には意味のないものと言える。当該取締役の記名押印は,会社法第369条第3項の射程外であり,単なる余事記載とみることができ,極論すれば,当該取締役の印鑑証明書は,不要と解することができよう。すなわち,2通に拘る理由がない,ということである。
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4 コメント

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住民票の援用はだめか。 (みうら)
2012-11-02 19:30:50
同一申請人・同一代理人の場合に限る。という先例が存在した。
親子などであっても各自が申請する場合は、住民票の援用は認められないことになるね。
印鑑証明書の還付 (森木田一毅)
2012-11-04 10:39:51
こんにちは。この問題は仰るとおりですね。
論点がずれますが、取締役会等の決議内容は1回の登記で完結するものとは限らないのに、規定が無いために印鑑証明書が原本還付出来ないという点は、不合理なのに、未だに改善されませんし、改善せよとの日司連からの声も聞こえません(私が知らないだけか?)。
先日、過去の決議に基づく登記の必要があり、たまたま当時の役員の協力が得られたから良かったものの、その不合理性を痛感しました。
御回答 (内藤卓)
2012-11-04 14:13:29
みうらさんへ
そのとおりですよ。しかし,本文記述のとおり,『「前件添付」の取扱いをすることはできない(「原本還付」扱いをすればよい。)が,「住民票の原本を2通添付せよ」という話は聞いたことがない』です。

森木田先生
おっしゃるとおりですね。10の登記所に申請する必要があるから,「印鑑証明書を10枚ずつください」というのも,ユーザー・アンフレンドリーですよね。原本還付により不正な利用がされるおそれを過大に評価し過ぎている嫌いがあります。
先例… (さとう)
2013-06-18 20:39:09
昭和55年11月22日民三第6720号民事局長回答を類推して、記名押印した特別利害関係を有する取締役についても印鑑証明書を提出するようにと…。

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