司法書士内藤卓のLEAGALBLOG

会社法及び商業登記に関する話題を中心に,消費者問題,司法書士,京都に関する話題等々を取り上げています。

敷金返還請求権と現物出資

2014-10-12 12:07:55 | 会社法(改正商法等)
 「民法(債権関係)の改正に関する要綱仮案」において,「敷金」については,次のとおりである。

7 敷金
 敷金について、次のような規律を設けるものとする。
(1)賃貸人は、敷金(いかなる名義をもってするかを問わず、賃料債務その他の賃貸借に基づいて生ずる賃借人の賃貸人に対する金銭債務を担保する目的で、賃借人が賃貸人に交付する金銭をいう。以下この7において同じ。)を受け取っている場合において、賃貸借が終了し、かつ、賃貸物の返還を受けたとき、又は賃借人が適法に賃借権を譲渡したときは、賃借人に対し、その受け取った敷金の額から賃貸借に基づいて生じた賃借人の賃貸人に対する金銭債務の額を控除した残額を返還しなければならない。
(2)賃貸人は、賃借人が賃貸借に基づいて生じた金銭債務を履行しないときは、敷金を当該債務の弁済に充てることができる。この場合において、賃借人は、賃貸人に対し、敷金を当該債務の弁済に充てることを請求することができない。


 ところで,不動産登記実務においては,次の先例がある。

「賃貸借契約に定める保証金返還請求権は,契約書から契約の終了又は解約を原因として具体的に生ずる特定の債権と解せるときは,これをあらかじめ将来の債権として担保するための抵当権は,普通抵当権によるべきである。この場合の登記原因の記載は,「 年 月 日賃貸借契約の保証金返還債権の 年 月 日設定」とするのが相当である」(昭和51年10月15日民三第5414号民事局長回答)

 要は,「賃借人が将来賃貸借契約が終了したときに取得する保証金返還請求権を被担保債権として,抵当権を設定することができる」というものである。

「所問の保証金返還請求権は・・・契約の終了又は解約を原因として具体的に発生する特定の債権であると解せられる」ことが理由とされている。


 しかしながら,商業登記実務においては,次の先例(?)がある。

「現実に発生している敷金返還請求権を現物出資の目的としているものであれば,設立の登記の申請は受理されるが,不動産賃貸借契約が継続中であり,いまだ敷金返還請求権が現実に発生していないものであるときは,設立の登記の申請は受理されない」(旬刊商事法務第1439号38頁「実務相談室 敷金返還請求権を現物出資の目的とすることの可否」)

 要は,「具体的な返済額が定まっておらず,現実に敷金返還請求権が発生していないので,現物出資は不可」ということらしい。


 明らかに,矛盾であろう。

 上記仮案のように「控除して弁済に充てる」構成ではなく,預託された敷金全額の返還債務と未払賃料等の債務の相殺構成を採るべきである。

 このように考えないと,不動産登記実務の先例は成り立たない。また,商業登記において,賃貸借契約が継続中における敷金等の返還請求債権を現物出資の目的とすることは,認められるべきである。
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