司法書士内藤卓のLEAGALBLOG

会社法及び商業登記に関する話題を中心に,消費者問題,司法書士,京都に関する話題等々を取り上げています。

会計限定監査役の任務懈怠と会社に対する損害賠償責任(最高裁判決)

2021-07-19 16:52:44 | 会社法(改正商法等)
最高裁令和3年7月19日第2小法廷判決
https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=90486

【判示事項】
会計限定監査役は,計算書類及びその附属明細書の監査を行うに当たり,当該計算書類等に表示された情報が会計帳簿の内容に合致していることを確認しさえすれば,常にその任務を尽くしたといえるものではない

「監査役は,会計帳簿の内容が正確であることを当然の前提として計算書類等の監査を行ってよいものではない。監査役は,会計帳簿が信頼性を欠くものであることが明らかでなくとも,計算書類等が会社の財産及び損益の状況を全ての重要な点において適正に表示しているかどうかを確認するため,会計帳簿の作成状況等につき取締役等に報告を求め,又はその基礎資料を確かめるなどすべき場合があるというべきである。そして,会計限定監査役にも,取締役等に対して会計に関する報告を求め,会社の財産の状況等を調査する権限が与えられていること(会社法389条4項,5項)などに照らせば,以上のことは会計限定監査役についても異なるものではない。」

cf. 事案の概要等
https://www.courts.go.jp/saikosai/vc-files/saikosai/2021/jiangaiyou_01_1968.pdf

令和2年3月2日付け「会計限定監査役の任務懈怠と会社に対する損害賠償責任(東京高裁判決)」

第1審(千葉地裁)
 横領事件に関して,偽造された預金の残高証明書を見抜けなかったとして,会計監査限定監査役の任務懈怠責任を認めた。

原審(東京高裁)
「会計帳簿の信頼性欠如が会計限定監査役に容易に判明可能であったなどの特段の事情がない限り・・・会計帳簿の裏付資料を直接確認するなどして積極的に調査発見すべき義務はない」と判断して,請求を棄却。

最高裁
「会計限定監査役は,計算書類等の監査を行うに当たり,会計帳簿が信頼性を欠くものであることが明らかでない場合であっても,計算書類等に表示された情報が会計帳簿の内容に合致していることを確認しさえすれば,常にその任務を尽くしたといえるものではない」として,破棄差戻し。

cf. 日経記事
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUE16DK40W1A710C2000000/
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