司法書士内藤卓のLEAGALBLOG

会社法及び商業登記に関する話題を中心に,消費者問題,司法書士,京都に関する話題等々を取り上げています。

商業登記の弱点を突いた「地面師」が逮捕

2017-11-21 17:54:22 | 不動産登記法その他
東洋経済online
http://toyokeizai.net/articles/-/198329

 自らが取締役に選任され,代表取締役に選定されたとする登記と,本店移転の登記を申請して,不動産会社を登記上乗っ取り,当該会社が所有する不動産を勝手に売却するという手口のようである。

 これは,商業登記の弱点であり,本人申請であれば,防ぎようがない。

 不動産の売買の登記に関わる司法書士が,直近の代表取締役の就任と本店移転に疑念を抱かなければ,地面師の思うがままである。本人確認情報を提供するために,移転前の本店を確認すべきであるのだが・・。

 デジタル・ファーストによる「本人確認手続の簡素化」は,こういう事件も頻発させてしまうであろう。
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商業登記法改正案が2018年の通常国会に?(その2)

2017-11-21 15:06:58 | 会社法(改正商法等)
規制改革推進会議第4回行政手続部会議事次第
http://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/suishin/meeting/bukai/20171120/agenda.html

「本人確認手続の簡素化に関する方向性について ―中間整理(案)―」が示されており,19頁には,


1.行政手続の電子化(デジタル・ファースト)を徹底するため,押印を不要とし,「紙から電子へ」を推進する。また,電子化の環境を整備するとともに,電子署名(厳格な本人確認が必要な手続を除く)を極力省略し,簡易な認証方式を導入する。
(1)「中小企業・小規模事業者等を含む事業者にとってオンラインによる行政手続の負担を軽減し,利用率を抜本的に向上するため,厳格な本人確認(印鑑証明書の添付を求め,印鑑と照合等)を求めない手続については,簡易な認証方式(ID(法人番号)・パスワード方式)を導入し,電子署名を求めない(再来年度より運用を開始)。
(2)法人インフォメーション(法人番号と各種法人情報を紐づけ)へ,引き続き,各省が協力して利用可能な情報を拡充する。並行し,それらのデータを活用した申請データのワンスオンリーの取組(デジタル・プラットフォーム)に向け,重点分野で件数の多い行政手続を政府全体で選定し,再来年度より運用を開始する。

2.厳格な本人確認が必要な手続においても,電子証明書の利便性の向上あるいはセキュリティに見合う適切な認証方式(ID・パスワード方式)の導入等により,書面方式(印鑑証明書の添付)からオンライン手続に転換する。

3.上記の方向性に沿って,各省に対応を促す。電子化の取組については内閣官房IT総合戦略室と協力する。


 商業登記の手続は,申請に際して会社等の印鑑証明書の添付は要しないが,登記所において,申請書又は委任状に押印された届出印によって照合がされており,「厳格な本人確認」が求められている。

 とすると,上記2の「セキュリティに見合う適切な認証方式(ID・パスワード方式)の導入等」を検討するというのであろうか?

 甚だ疑問である。
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税理士事務所の事業承継と営業権の対価

2017-11-21 10:55:46 | いろいろ
 週刊T&A master 2017年11月20号に,税理士事務所の事業承継における営業権の対価をめぐる争いに関する東京地裁平成29年6月23日判決が紹介されている。

 某税理士が死亡する直前に被告税理士に対し税理士事務所の事業を譲渡する遺志を伝えたとして,被告税理士が顧問先等を承継したことから,亡税理士の相続人が原告となって提起した訴訟である。

 東京地裁は,事業承継に関する合意の成立は否定したものの,一定の財産的価値を認め,対価の支払を認めている。


 ところで,税理士の死亡による業務廃止が生じた場合の救済策として,税理士会には,「相互扶助委員会」が置かれており,税理士の遺族が希望すれば,「援助者」たる税理士を推薦する制度があるようである。

cf. 東京税理士会○○支部相互扶助(標準)規程
http://www.tokyozeirishikai.or.jp/reiki_int/reiki_honbun/x9800032001.html

 司法書士の死亡による業務廃止が生じた場合にも,司法書士会が何らかの救済を図ることがあるが,任意の手続であり,規程等の整備はされていない。一考の余地ありですね。
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農地所有適格法人

2017-11-21 09:38:26 | 会社法(改正商法等)
日本農業法人協会
http://hojin.or.jp/standard/what_is/what_is.html

「農業法人のなかで、農地法第2条第3項の要件に適合し、“農業経営を行うために農地を取得できる”農業法人のことを「農地所有適格法人」と言います。」

 簡潔にまとまっています。
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商業登記の機能と規制改革

2017-11-21 09:11:05 | 会社法(改正商法等)
 商業登記法は,商法(明治32年法律第48号),会社法(平成17年法律第86号)その他の法律の規定により登記すべき事項を公示するための登記に関する制度について定めることにより,商号,会社等に係る信用の維持を図り,かつ,取引の安全と円滑に資することを目的としている(同法第1条)。

 この商業登記の公示的機能を維持するため,様々な真正担保の方策が用意されている。

(1)登記の申請書に押印すべき者は,あらかじめ,その印鑑を登記所に提出しなければならない(商業登記法第20条第1項)。
(2)登記の事由を証するため,添付書面を要求(商業登記法第24条第8号)
(3)無効又は取消しの原因があるときは申請を却下(商業登記法第24条第10号)
(4)登記懈怠に対する過料(会社法第976条第1号)
(5)登記官による本人確認(商業登記法第23条の2,準則第47条)
(6)不正登記防止申出制度(準則第49条)
(7)本人確認証明書(商業登記規則第61条第7項)
(8)取締役の辞任届と印鑑証明書(同規則第61条第8項)
(9)株主リスト(同規則第61条第2項,第3項)


 「登記制度の改正の歴史は,まさに不正な登記との闘いの歴史である」と巷間言われるところであり,商業登記法第1条が掲げる目的のために,登記実務に携わる様々の関係者の不断の努力によって,真正担保が図られているのである。安易なオンライン&ワンストップの議論は,これらの真正担保の部分を度外視しており,商業登記の公示的機能を大きく揺らがせるものである。

 規制改革関係の各会議においても,「商業登記制度の在り方」に関する適切な議論がされることを望みたい。

cf. 平成26年10月29日付け「商業・法人登記における真実性の確保(再掲)」

平成16年11月1日付け「登記事務の民間開放」
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商業登記法改正案が2018年の通常国会に?

2017-11-21 07:15:18 | 会社法(改正商法等)
日経記事(有料会員限定)
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO23692910Q7A121C1PP8000/

「政府の規制改革推進会議(議長・大田弘子政策研究大学院大学教授)は20日、会社設立時などに必要な商業登記の手続きをインターネットのサイトに専用のIDとパスワードでログインし、必要項目を入力するだけで完結できるようにする検討に入った。本人確認のために必要な電子証明書の取得を不要にする。」

「規制改革会議が2018年6月にまとめる答申に盛り込む。政府は登記の手続きを定めた商業登記法改正案を18年の通常国会に提出することをめざす。」(上掲記事)

 確かに,オンライン申請の手続として,「専用のIDとパスワードでログイン」する方法の採用はあり得るのだが,逆にIDとパスワードの管理(漏洩防止等)の負担増が問題となり得るのでは?

 この部分が,「企業の生産性向上や働き方改革」につながるとは思えないが。

 商業登記に基礎を置く電子証明書の制度を事実上廃止するとすれば,他方面の電子化にも影響が出るは必至だと思われる。

 手続とコストを,全て「障害」と片付けようとする議論は,短絡的ではないだろうか。

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