新・遊歩道

日常の中で気づいたこと、感じたこと、心を打ったこと、旅の記録などを写真入りで書く日記です。

椎木正和感謝コンサート

2017年08月01日 | 音楽

このコンサートは、九州大学100周年記念事業として椎木正和氏(三洋信販株式会社創業者)の寄付により建設された「椎木講堂」で開催されました。直径100mの円筒形、3000人収容という、とにかく目を見張る大きさ広さです。(左からの写真2枚は大学のHPからお借りしたものです)

   

その椎木氏は昨年亡くなられましたが、他に学術、医療、芸術関係にと多大の貢献をされており、その功績と厚情に感謝するために8団体が合同で催したコンサートでした。その招待券をもらったので、移転して新しくなった伊都キャンパスに出かけました。


演目は先ず、伊藤京子氏のショパン/バラード1番。別府アルゲリッチ音楽祭総合プロデューサーとしても活躍されています。
初めにドーンとくる低音がこれからの旋律を期待させます。そして
最後の劇的な指の運びと荒れ狂うメロディに、これがショパンなのだと満足させてくれて終わりになります。

次は、九州交響楽団 ドヴォルザーク/交響曲第9番「新世界」。指揮は小泉和裕氏。
チェコからアメリカに渡ったドヴォルザークは、この曲を「アメリカ大陸から故郷の人たちに送る印象記」と言っているそうです。ホルン、フルート、クラリネットの澄んだ音に、彼の故郷を思う心が切なく美しく重なり胸を打ちます。
第3楽章で、トライアングルが天に抜けるように澄んだ音を出し始めた時には本当に感動しました。CDで聴くのと違い視覚的にも楽器の存在感が増します。このトライアングルの音がなかったら「新世界」が少し違ったものになるかも…とは素人の感想ですが。

平成元年までは社業一辺倒だった椎木氏は、お世話になった地域に何かお返しを…と考えたときに、クラシックが浮かんだそうです。
20代の大半を結核病棟のベッドで過ごした椎木氏は、ある時ラジオから流れてきた力強い音楽に衝撃を覚え、絶望と不安な気持ちを癒され生きる力を与えられました。それがベートーベンの「運命」だったのです。
『クラシックに縁もゆかりもない方々にも聴いてもらい、楽しんでもらい、生活の一部に感じてもらえるようなコンサートを提供しよう』と、それからが音楽普及活動の始まりです。
九州交響楽団の無料ロビーコンサートは220回にもなりました。
週末の保養先の別府で、「地方からクラシック音楽で世界に芸術文化を発信したい」と切望する伊藤京子氏と出会い、椎木氏はその思いに共感し、アルゲリッチ芸術振興財団の理事として活動を支援されました。
この音楽祭の誕生が世界の音楽界にセンセーションを巻き起こしたのをよく覚えています。

今回の感謝コンサートも、クラシック音楽が生命力をかきたてる泉であるという椎木氏の心を大切に守っているものでした。


莫大な資産を、世の中のためにと使われた高邁な思想に、心からの敬意と感謝と拍手を送りたいと思いました。

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