新・遊歩道

日常の中で気づいたこと、感じたこと、心を打ったこと、旅の記録などを写真入りで書く日記です。

「しんがり 山一證券最後の12人」 清武英利 講談社+α文庫

2015年12月11日 | 本・新聞小説

白内障手術後の最初の一冊を探していた時に、たまたま目にしたのが「しんがり 山一證券 最後の12人」です。山一と言えば、18年前自主廃業を公表した際の野沢社長の号泣会見が今でもすぐに瞼に浮かびます。

1997年11月、山一證券が自主廃業を発表したときに、野沢社長が『社員は悪くありませんから!悪いのはわれわれなんですから!お願いします。再就職できるようにお願いします』と会見場で号泣しながら訴えた姿は衝撃的でした。
大企業がまさか!しかし同じころ拓銀、長銀、三洋証券と次々に倒産していました。バブルがはじけたのです。

この本には、山一はなぜ「自主廃業」に踏み切らなければならなかったのか、会社更生法は適応されなかったのか、日銀から特別融資を受けられなかったのか・・・、という疑問が素人の私にも納得が行くように書かれています。

山一を滅亡に追いやった巨額の簿外債務が『いつ、どのようにして、誰の決断で発生したのか…・・・その原因は何だったのか……どこに隠され、なぜ発覚しなかったのか』を究明するために、廃業後「調査委員会」が設置されます。
ほとんどの役員や社員が再就職へと奔走する中で、最後の調査を引き受けた人たちが「しんがり」つまり『最後の12人』なのです。

「しんがり(殿)」とは『後退する部隊の中で最後尾の箇所を担当する部隊を指す』言葉です。
しんがりは、戦術的に劣勢な状態の時に敵の追撃を阻止し本隊の後退を援護するのが目的なのです。本隊からは支援を受けることもなく限られた戦力で戦う危険で損な任務なのです。 
自ら進んで貧乏くじを引いて清算業務に当たり最後まで筋を通し、人より1年半も遅れて第2の人生に踏み出さねばならなかった人たちの人生ドラマが感動的です。
「とばし」「含み損」「にぎり」など業界用語も出てきて、日常生活では知ることのできない金融、証券業界のことが少しだけわかりました。

このように書くと難しい内容に思われますが、WOWOで連続ドラマ化されているという程の感動の物語なのです。(主演は江口洋介)

「バブル」。孫が6歳だったころ「バブルって大人がめっちゃ無駄遣いしたんでしょ」と言ったのでドキッとしました。アニメで「バブル」を知ったそうです。
言い得て妙。バブルの頃個人所得は増加、消費需要も上昇。確かに浮かれていました・・・・。

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