新・遊歩道

日常の中で気づいたこと、感じたこと、心を打ったこと、旅の記録などを写真入りで書く日記です。

ユニークなピアニスト、高雄有希

2013年04月30日 | 音楽

「高雄有希とともに」のコンサートが、このゴールデンウィーク中に4回、福岡市の周辺でそれぞれ場所を変えて開催されます。
写真はコンサートを終えての高雄氏。観客と同じ目線でという姿勢、有り余る才能に甘んじることなく謙虚な言動に好感が持たれます。

以前コンサートで、ある有名女流バイオリニストは熱狂的なアンコールの要請にも関わらず、冷たく微笑んで丁寧にお辞儀をするとさっさと舞台を去っていきました。観客として突き放されたような小さなわだかまりが残りました。(音楽家も人間、ひょっとしたら体調がよくなかったのかもしれませんね)
素晴らしい音楽だけを提供するのがプロではないと思います。音だけなら室内で静かにCDを聞いていればいいのですが、音の向こうに人間性にも触れたいのです。ライブで音楽+心の交流をして、幸せ感に浸りながら心地よく帰宅することが大切だと思います。

20130429_3福岡市出身ということで、以前からコンサート情報ではよく耳にする名前でしたが、聴くのは今回が初めてでした。その才能の片鱗がうかがわせるのが、子供の時からのユニークな略歴です。

幼児期を家族とともにアメリカで過ごし、母親からピアノの手ほどきを受けています。そしてなんと15才でドイツのリューベック音楽大学に留学しているのです。
★ 九州・山口ジュニアコンクール 12才 グランプリ受賞
★ パルマドーロ国際コンクール最年少 15才 金メダル
★ 第10回チャイコフスキー国際コンクール最年少 16才 セミファイナル受賞
★ 第6回シドニー国際ピアノコンクール最年少 18才 2位 (聴衆賞1位)
★ シドニーのオペラハウスでコンサート、2800席の観客をわかせ、ABCでライブ放送
★ ロスアンジェルス・フィルとのコンチェルトに17000の聴衆が熱狂する

『 これは神技だ!、陶酔!恍惚!熱狂!歴史に残る名演 ! 』と、
ドイツの新聞で称賛を浴びた彼は、現在東京大学大学院博士課程のイタリア文学を専攻する学生でもあるのです。
ちなみに司会者によれば、高雄氏が話す言語は6か国語だそうで、英語、ドイツ語、フランス語、ロシア語、イタリア語、そして英語よりは少し苦手な日本語。

略歴を見ると10代の華々しい活躍のあと、「賞」が見られないのはなぜ…と思っていました。
聞くところによると、コンサートを離れていた間に大検を受け、東大文3に入学されたのです。15才でドイツの大学生だったということは、日本で再度大学を受験するには大検で受験資格を取らざるを得ないでしょう。
大検で大変だったのは家庭科の勉強だったとか。「鰺の可食率や調味料何g」とかの勉強の逸話を知り、ふんわりとしたトークの裏には大変な受験時代があったのが頷けます。体調を壊された時期もあったとか・・・。

もう一つ。9才の時にロンドンの高級百貨店ハロッズに置いてあったピアノでショパンのワルツを弾いていたら、いつの間にか人垣ができたとか。そこでピアニストの快感を味あわれたそうで、逸話も上質です。
ドイツ留学時代に「鳥のカタログ」を練習していると小鳥たちがやってきて毎回合奏していたとか・・・。
逸話を集めるとそれだけで物語が出来てしまうような、やはりユニークなピアニストです。やっぱりすごい!すごい!


今日の演目は、 ラフマニノフ:「エレジー Op.3-1」 ラヴェル:「夜のガスパール」、「ラ・ヴァルス」では解説付きのトークで、素人にもわかり易く親しみが持てました。

ラ・ヴァルスとはワルツのこと。ところどころに聞き覚えのあるウィンナーワルツのフレイズがはいります。そして美しいワルツがすごい力で破壊されていく・・・、第一次大戦後の不安な状況を語っているのだそうです。

静かな語り口とは対照的に、鍵盤をたたく力強さにピアノでこれだけ表現できるものだと感動し、「ラ・ヴァルス」は男性の力強さがないと弾けないのかも・・・と思ってしまいました。
また消え入るような繊細な音にも耳をそばだてて透明な世界に引き込まれました。

トークによれば
、教授との対談形式で学内限定のコンサートもあるとか。やっぱりユニークですね~。
日本大使館の招へいでコンサートが開催され文化交流に貢献しながら五大陸制覇をされたそうです。
中村紘子さんに「高雄君は三拍子揃ったピアニスト」「完璧な演奏」と評されたそうで期待は大きくなります。

ピアノと、大学院で専攻している文学と、トークをミックスさせた新しいタイプのピアニストが登場するような予感と期待感が広がりました。
音楽愛好家の底辺を広げ、横にも広がりを見せ、なるほど楽しませてくれるような、今までにないそんなピアニストの出現を待ちたいものです。

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