トンネルの向こう側

暗いトンネルを彷徨い続けた結婚生活に終止符を打って8年。自由人兄ちゃんと天真爛漫あーちゃんとの暮らしを綴る日記

混乱2

2006-03-20 09:06:05 | 
そして何より驚いているのが家政婦と姑達が帰るまで夫に連絡しようと
思いつかなかった事だ
夫には随分叱られた
「何で金を渡す前に俺に電話よこさなかったんだ。主人に聞かなきゃ分からないって言って追い返せば良かったじゃないか」

確かにそうだ。
舅が来た時はいち早く夫に連絡した
なのに今回は全く夫の事が頭に浮かばなかった

この事態を1人で解決しなければとそう思っていたのだ

なぜだ?もう私の中の夫は完全に消えてしまったのだろうか

私は普段から自分の心の中を覗いたりしないように生きている
自分の内なる声に耳を澄ませばいろんな怒りが噴出してしまうからだ

だからあの時も完全に心の中の感情は何もなかった

姑とはもう会うことはないだろうと思っていた
会うときはもう私の事も区別などつかないほど衰え
全てが終わろうとしているときなのだと覚悟していた

姑が出て行ってから何度も自問自答した
なぜ帰ってしまったのか

あれ程身を削りつくし姑が暮らしやすいように、時に話し相手になり
寂しそうにすれば遊べそうなおもちゃを買い
怪我をして立てなくなればオムツを取替え、姑の排泄物にまみれながらも
なるべく笑顔を絶やさず必死に介護した

それが別れの言葉もなく、帰ってからも電話1本、手紙一通も来ないまま
その無力感を姑は想い寄せてくれた事があったのだろうか

姑が帰り息子が「お婆ちゃんが殺されるんじゃないか」と心配して泣き
「俺が意地悪したからいやになっちゃたんだ」と自分を責めて泣いた事を
少しも考えもしなかったと言うのか・・・

いきなり家に入ってきて娘を見るなり
「あーちゃん。私を忘れたのかい?」とまるで昨日も会ったかの様に話しかけ
娘とママゴトを始めた姑・・・

子供の頃祖母が良く私に言った言葉を思い出す

「人に何かする時は見返りを求めちゃ駄目だ
あんなにしたのに。こんなにしたのにと恨むくらいなら何もしない方が良いんだ
人にかかわり過ぎてはいけない」

その通りだ。
あんなに介護したのにこんなにしたのにと思うくらいなら
何もしなければ良かったのだ

でもそう思うにはあまりに姑の仕打ちは惨すぎる
せめて一言でもいいから言いたかった
「なぜ帰ったんですか?私たちがどんな思いをしたか分かりますか?」と・・・

お金を受け取って逃げるように帰っていった姑
夫はその事を「自分がされた事を俺たちにしてるんだろう」と言った

舅の両親が姑が若い頃給料日を狙って遊びに来てはお金を無心して帰って
行ったとよく愚痴を聞かされた
姑達も舅の両親とは絶縁状態となって私が結婚してからも
数えるほどしかあった事がない

ひいお婆ちゃんが入院しても見舞いに行くこともなかった

姑も自分がされた事と同じ事を息子夫婦にしていると気がついているのだろうか

それはあまりに悲しい話だ
私が夫に知らせなかったのはそんな姿の姑を夫に見せたくなかったのだろうか

条件反射のように玄関で靴を履こうとする姑に椅子を運んでいった私
憎くて憎くて溜まらなかった。
でも杖を持つのに手を貸し、出て行くドアを押さえて通りやすいようにした

そんな自分が滑稽で堪らない
誰かを憎みきる事は出来ないのだろうか
自分の理性が邪魔をしいつも通り過ぎた後でその怒りに身を焦がす私

その時に怒りをぶつけられたならどんなに楽だろう
少しでも自分の気持ちを解放できたならこれ程毒々しい感情に
身を沈めなくてもいいのに

夢の中で幾ら怒りをぶつけてもそれは現実ではないのだ
また繰り返される夢たち

その夢に平然と娘と遊び戯れる姑の姿が加わった
私はいつになったらこの苦しみから解放されるのだろう




混乱

2006-03-20 08:51:14 | 嫁、舅
どうやってもすっきりしない。
どんなに気持ちを盛り上げても気持ちが切り替わらない

考えても考えても答えが出ない

姑が来た日の事が頭から離れない

私は姑を匿っている時からすっかりインターフォンの音に敏感になってしまった

「ピンポーン」となると飛び上がるほどビックリする
また舅が来たんじゃないか。
酔って怒りに任せて玄関に仁王立ちしてドアを蹴ったり、怒鳴ったりして
また警察を呼ばなくちゃ行けなくなったらどうしよう

そんな不安にいつも取り付かれるようになった

ドキドキしてインターフォンに出れば息子の友達だったり
集金の人だったりして心底ホッとするのだ

心臓はドキドキと自分の耳まで届くほど高鳴る
時々ぎゅっと痛くなる時もある

夢にだって何度も出てくるのだ
姑が家にいた時は舅がいきなりやってきて姑がドアを開けて入れてしまう
夢だった

いつも汗びっしょりに目が覚めたものだ
それは正夢となった。
姑は易々とドアを開け舅は夢と同じジャージを来て顔を赤くして
入ってきた

正夢となった事は私を益々恐怖へ陥れた
夢は夢じゃなかった
いつか不安は的中する。そんな確信さえ得た

姑が帰ってからは二人そろって家に来る夢にうなされる
姑が玄関の前に立ちその後ろに舅が立っていて何事もなかったように
家の中に入ってくるのだ
そして最初穏やかだった舅が豹変してあの歯のない血だらけの口で何かを喚き始めるのだ


私は混乱し「もう帰れ!」と怒鳴り目が覚めるのだ

そしてそれは現実となった
いつも気が緩んだ時にそれは起こるのだ

舅が来た時も全く無防備だった
あれ程緊張状態が続いていたのにふっと今日は大丈夫と気が抜けていた
玄関に鍵すら掛けていなかった

インターフォンに出て「あー。お義父さんだけど・・・。開けてくれ」と言われた時のあの目の前がくらくらする様な感覚今でもハッキリと覚えている

これは夢なのか?現実なのか?足元がガラガラと恐怖で崩れていくような
全ての感情が止まってしまうような感覚・・・

姑が来た時も夢と同じだった
全く無防備だった。いつものような午前中。娘とのんびりテレビを観ていた

「あー。お義母さんだけど・・」
杖をコツコツと床に置く音まで夢と同じだった
そーっとドア穴を覗くと後ろに大きな体の人が立っていた
夢同様舅と2人で来たのだ

血だらけの口をした舅が何かをわめきに来たのだ・・
恐怖が駆け上がりドアを開けてはいけないと心の中で誰かが叫んでいた

ドアノブを握り締め私は立ち尽くしていた
ドアの向こうで姑がコツコツと杖で地面を叩く
「あれ?開かないな」のんきにつぶやく声が聞こえる

娘が後ろで「誰?お母さん。誰が来たの?」と何度も何度も聞く
何でインターフォンに出ちゃったんだろう
いつもは誰が来たか確認してから出るのに今日に限って
どうして無防備にも出てしまったのだろう

自分を悔やんだ
このまま出なければ帰ってくれるだろうか
舅が大声で叫びだしたらどうしよう

頭が混乱して全ての思考が止まっていった
コツ。コツ。コツ。

秒針を刻むように姑の杖がいつまでもなり続いていた

私はドアを開けてしまった・・
姑の後ろに立っていたのは舅ではなくて家政婦だった

体から力が抜けていくようだった
今まで心臓が止まっていたんじゃないかと言うくらい
物凄い鼓動が頭の中に響いた

目の前の姑は痩せた骸骨の顔の大きな目を見開いて
「入ってもいいかい?」と聞いた

私は易々と姑達を招き入れてしまった

今私は自分の事が恐ろしくて仕方ない
私はあの時の姑のように頭の中で「止めろ!開けるな」と何かが叫んでいたのに
自分の内なる声とは逆の行動を起こしてしまった

私は自分を娘を守ることが出来なかったのだ
もし後ろにいたのが家政婦ではなくて舅だったら私はどうしたのだろう

また2人を家に残し娘を連れて逃げ出していただろうか
錯乱した舅が何をするかも想像出来た筈なのに

私の恐怖心はドアを開ける方を選んだのだ・・・
その事に私は凄く混乱している
(つづく)