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「すでに起こったことは、明らかに可能なことがらである」
在台日本語教師の東アジア時事論評あるいはカサンドラの眼差し

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台湾万歳(5)─一陽来復!?─

2006年11月13日 | メディアから見る台湾社会
1.大陸での呉淑珍総統夫人起訴の波紋
 大陸での呉淑珍総統夫人起訴のニュース報道の様子は以下のとおりである。
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大陸媒體大幅報導 珍被起訴 硬把胡錦濤新聞比下去(大陸メディアが多数報道 陳総統夫人起訴 胡錦涛のニュースには及ばす)
吳淑珍涉貪污被高檢起訴事件,大陸各主要媒體今天都做了大幅報導,部分傳媒甚至以頭版頭方式處理,也成了民間茶餘飯後的主要話題,顯然鋒頭已蓋過正在北京召開的中非合作論壇。
今天,大陸中央一級傳媒及地方主要傳媒黨報,不約而同競相報導吳淑珍涉案一事。北京共青團中央機關報「中國青年報」在頭版中間位置,以顯著標題「台灣檢方認定陳水扁夫婦涉嫌貪污」報導此事件,把胡錦濤會見非洲十國元首的消息硬比了下去。
北京市委機關報《北京日報》,則在三版以半版篇幅鉅細靡遺介紹扁珍涉「國務機要費」案來龍去脈,搭配了四篇文稿,包括一篇評論,為北京市民做詳盡報導。
《北京青年報》則在第二落頭版,以「陳水扁妻子涉嫌貪污被起訴」為標題報導此事;《京華時報》也在四版頭刊登「陳水扁之妻等涉貪被起訴」新聞;誇張的是,《新京報》則在十九版位置以全版篇幅報導「台灣檢方認定陳水扁涉嫌貪污」等新聞,並刊登國民黨立委放鞭炮慶祝的照片。
另外,由新華社主辦、發行量數百萬份的「參考消息」,幾乎以頭版全版篇幅報導「台檢方認定陳水扁夫婦貪污」。對象是北京外籍人士的英文「中國日報」,則以圖文說明形式在頭版報眉刊出吳淑珍照片,報導吳淑珍被起訴事件。
不過,中共中央機關報《人民日報》及軍委機關報《解放軍報》今天並未對此事做報導,但都頭版選擇刊登了國台辦昨日批陳水扁接受《金融時報》專訪提出制憲的觀點。

 呉淑珍総統夫人が公金着服に関わり高等検察庁に起訴された事件を、大陸の各主要メディアは今日(11月4日)すべて大きく取り上げて報道、一部のマスコミは第1面に掲載し、民間の茶の間の主要な話題にもなったが、トップは北京で開催された中国アフリカ協力フォーラムだった。
 今日、大陸の中央1級マスコミと地方の主要マスコミ、党機関紙は、期せずして同じく呉淑珍事件を報道している。北京共産主義青年団の中央機関紙「中国青年報」第1面の中間位置で、目立つ見出しで「台湾検察陳水扁夫妻の汚職嫌疑を認定」でこの事件を報道が、胡錦涛がアフリカ10カ国の元首と会見したニュースには及ばなかった。
 北京市委員会機関紙《北京日刊新聞》は、3版が半分の紙面で細く「国務機密費」事件の経緯を紹介し、1篇の評論を含む4編の記事を載せて、北京市民のために詳しく報道をした。《北京青年報》は第2版の二段で、「陳水扁の妻子が着服嫌疑で起訴」を見出しにして報道している。《京華時報》も4版のトップで「陳水扁の妻などが汚職で起訴」のニュースを掲載した。おおげさなのは、《新京報》で19版の位置で、全紙面で「台湾検察が陳水扁の汚職嫌疑を認定」などのニュースを報道し、国民党立法委員が爆竹を鳴らす祝賀の写真を掲載した。
 その他に、新華社が出している発行量の数百万部の「参考消息」は、ほとんど第1面の全体の紙面で「台湾検察が陳水扁夫妻の汚職を認定」と報道している。北京の外国人用の英語新聞「中国日報」は、写真付きの文章で第1面で呉淑珍の写真と説明を載せ、呉淑珍起訴事件を報道している。
 しかし、中国共産党中央機関紙《人民日報》と軍事委員会機関紙《解放軍報》は今日このことに対してまったく報道しなかった。第1面は国務院台湾事務弁公室による昨日陳水扁が《フィナンシャル・タイムズ》の特別取材を受けて出した憲法制定の観点への批判を載せた。
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 当然のことだが、アフリカフォーラムのほうが大事な扱いをされている。また、中国政府直轄情報機関(新華社・人民日報など)での扱いは、副次的で、大陸が今回の起訴を手放しで喜べる状態でないことが窺える。つまり、10月のいわゆる「倒扁」報道が、新華社のトップに出ることが多かったのに比べて、陳政権にはもっと重大な打撃である夫人起訴は、そうした扱いから外れているのである。
 注目されるのは、最後の部分、「中国共産党中央機関紙《人民日報》と軍事委員会機関紙《解放軍報》は今日このことに対してまったく報道しなかった。第1面は国務院台湾事務弁公室による昨日陳水扁が《フィナンシャル・タイムズ》の特別取材を受けて出した憲法制定の観点への批判を載せた。」
 このことから、中国政府が本当に気にしているのは、憲法改正について陳総統が海外向けに話した内容であることが分かる。欧米向けに台湾の立場、つまり民主化の進展が知られてしまうと、非常に困るという腹の内が読み取れる。

2.緊迫する台湾の政局
 日本の実質的在台湾大使館(財)交流協会の「日台ビジネスステーション」に毎日の台湾ニュースが要約されているので、最近の動きは、こちらをご覧いただくと好い。
 「日台ビジネスステーション
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2006年11月6日
1.内政
(1)総統府が国務機要費(機密費)を不当に使用したとの疑惑関連(時2,3、連4、自5)
・蘇振平審計長、審計部が国務機要費を審査中、陳総統と総統府で2回会見した旨立法院で報告
・右会見において、陳総統は、国務機要費は首長特別費と同様の性格を有し、そのうちの半分は領収書を必要としない機密費と見なしてもよい旨主張
・国務機要費の性質をめぐり主計処と審計部の見解が異なる
・李慶華国民党立法委員、検察当局が馬永成前総統府副秘書長ら3人に出国禁止令を発した旨発言
・主計処、首長特別費支出弁法を改正、来年より実施する予定~首長特別費の全ての支出に領収書が必要となる
(2)陳総統、英フィナンシャル・タイムズ紙によるインタビューで、第二共和憲法構想に再度言及し、新憲法を制定して現行憲法を凍結してもよい旨発言(時4、連6)
(3)林忠正金融監督管理委員会委員の汚職疑惑関連(時7、連6、自2)
(4)行政院公民投票審議委員会、11月24日に党資産を取り戻す公民投票案と腐敗汚職に反対する公民投票案につき表決する予定(連6、自4)
(5)汚職治罪条例修正草案の立法院審議関連(連6)
・民進党は反対しないため、本日直接第二読会に付される見通し
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2006年11月7日
1.内政
(1)総統府が国務機要費(機密費)を不当に使用したとの疑惑をめぐる捜査の終結関連(時1~5、連1,4,5、自2,4)
・中国時報による民意調査~13%は陳総統の説明を信じ、51%は検察官の起訴内容を信じる;46%が陳総統は即刻辞任すべき、34%は一審判決が確定してから辞任すべき;44%は陳総統は一審の判決が下されるまで休暇をとる又は一時停職する必要がある、34%は必要がない;23%が陳総統就任以来の成績に満足、56%が不満
・キャシディーロビーイング会社、メディア関係者の問い合わせに対し、「陳総統のメッセージは間違っている、同社は過去、如何なる第三者と情報を共有すると言って契約者を脅迫したことはないし、今後も絶対ありえない」と表明
・民進党改革派立法委員、陳総統に一審の判決が下されるまで休暇をとるよう促す運動の推進を検討中~陳総統にはそうした考えがなく、党中央を通じて全力で意思疎通を図る
・「国務機要費に関する定義や規定は不明である」との陳総統による指摘に対する審計部の反論
・監察院、陳総統の財産申告書から、起訴状の中で言及されている呉淑珍総統夫人が購入したダイヤモンドの指輪がなかったことについて、総統府に説明を求める方針
・連合報による民意調査~63%は国務機要費の私的流用があった、17%はなかった;13%は陳総統は真実を語った、55%は語らなかった;21%が陳総統は機密外交を守るため嘘を言ったのを受け入れられる、60%は受け入れられない;48%が陳総統は即刻辞任すべき、27%は一審判決が確定してから辞任すべき
(2)三度目の総統罷免案関連(時2,3,5、連1,2,3、自4)
・国民党、親民党、それぞれ総統罷免案を提出、本日の程序委員会で議事日程に盛り込まれる見通し
・台連、右を支持しない方針に転換~李登輝前総統、台連の決定を尊重
・消息筋~陳総統は、右表決に党議拘束をかけないとの蘇貞昌行政院長による提案を却下
(3)2007年より、全国機関首長特別費の全ての支出に領収書が必要となる(時4)
(4)陳哲男元総統府副秘書長が関与した一連の不正事件捜査関連(時6、連6、自1,3)
・懲役12年が求刑され、来月中旬に判決予定。身柄は600万元で保釈
(5)林忠正前金融監督管理委員会委員の汚職疑惑関連(時6)
・総統府、林氏の免職人事令を公布
(6)呉政忠台湾大学応用力学研究所教授、国家科学委員会副主任委員に内定(時8)
(7)国民党、現段階で親民党による倒閣案提出に同調しない方針(連3)
(8)馬英九国民党主席と王金平立法院長、本日、連戦国民党栄誉主席を往訪する予定(自4)
(9)法務部検察長会議、今後、立法委員やマスコミらに公務資料を漏らす公務員に対し、機密漏洩罪で追及するほか、行政処分を重くすることを決議(自6)
(10)次期台北・高雄市長選挙関連(自7)
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2006年11月8日
1.内政
(1)総統府が国務機要費(機密費)を不当に使用したとの疑惑をめぐる捜査の終結関連(時1~6、連1~4、自2,3)
・起訴状の中で言及されている呉淑珍総統夫人が購入したダイヤモンドの指輪に関する総統府の説明が二転三転した問題
・蘇貞昌行政院長、自分や閣僚に汚職容疑があれば、即刻辞任を要求すると発言する一方、自分は陳総統に任命された者で、陳総統の去就問題についてコメントするのは不適切である旨表明
・民進党、本日拡大中央執行委員会議を召集、右につき討論する予定~党内改革派による異なる意見があるものの、陳総統を支持するとの立場で合意する見通し
・王丹(中国人活動家)、台湾側による資金援助は確かにあるが、国務機要費からの支出かどうかは分からない旨強調するとともに、必要があれば調査に応じる意向がある旨表明
・陳総統、本土派長老との会談で、党内と支持者の動向を心配している旨表明する一方、一審の無罪判決に自信があると強調
(2)馬英九国民党主席と王金平立法院長、連戦国民党栄誉主席を往訪(時6、連4、自3)
・消息筋~連戦、目下の政局に対する馬英九の「不戦不和」との態度を厳しく批判
(3)三度目の総統罷免案関連(時6、連4、自3)
・国・親両党の提案で、今週金曜日の立法院の議事となる。
・国民党内から、右表決前に馬英九主席がフランス訪問を決定したことに反発の声が上がる
・民進党、本日の拡大中央執行委員会議で、本件に関する党の対応を決定する予定
(4)倒閣案関連(時6)
・国民党ハイレベル、党内主戦論者と親民党からのプレッシャーに対応するため、倒閣案成立後に関連法案の改正が未了のまま解散総選挙に突入することにつき、大法官に憲法解釈を申請することを検討中
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2006年11月9日
1.内政
(1)総統府が国務機要費(機密費)を不当に使用したとの疑惑をめぐる捜査の終結関連(時1~6、連1~3,6,7、自2,4)
・民進党、臨時中央執行委員会議を召集~陳総統に対し処分を行わないこと、三度目の総統罷免案に反対すること、同案に賛成した者を処分すること、総統や首長の機要費の制度化を研究するグループを設立することを決議
・蘇貞昌行政院長、臨時中央執行委員会議で、陳総統の身辺の者を厳しく批判
・高志明前国策顧問、陳総統夫妻の潔白を信じるものの、政局を安定させるため、陳総統に「自主的に冤罪のまま辞任するよう」呼びかけ
・起訴状の中で言及されている呉淑珍総統夫人が購入したダイヤモンドの指輪に関する総統府の説明が二転三転した問題
・士林地方裁判所裁判長に次いで、宜蘭地方裁判所裁判長も本件の起訴状は憲法違反ではないかと新聞に寄稿したことで、翁岳生司法院長が、裁判官に本件について公に論評しないよう要求
(2)三度目の総統罷免案関連(時3、連6、)
・世代フォーラム(民進党若手から結成したグループ)、本件につき党に党議拘束をかけないよう呼びかけ
・台連、党内で本件を支持するか否かについて意見割れ
(3)趙建銘(陳総統の娘婿)親子のインサイダー取引疑惑捜査関連(時6、連3,13、自6)
(4)馬英九国民党主席と王金平立法院長による、連戦国民党栄誉主席往訪関連(時6、連6、自4)
・三人とも、会談の雰囲気は穏やかだったとし、連戦が馬英九を厳しく批判したとの報道を否定
(5)次期台北高雄市長選挙関連(自5)
・民進党による支持度に関する民意調査~陳菊35%、黄俊英36.3%
(6)「民選地方行政首長給与退職撫卹条例」の立法院審議関連(自6)
・昨日、一審で可決
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 こうした個々のニュースを動かしているのは、いわば「民主主義(社会の方向を決めるのは多数派である)」という価値観と、「専制(社会は少数の優秀なエリートがリードするべきである)」という価値観との台湾国内での激しい戦いである。
 政治学や社会学などの学生、院生、研究者の方、あるいは政治家、外交官の方は、今回の台湾の体験から豊かな研究成果を出せるし、アジアやアフリカの諸国に「民主的政治形成のプロセス」の最もよい例(第二の無血革命)を提示できると思う。

3.希望の光
 現在の台湾の政治社会状況は、出口のない冬の状態が続いている。国内は独立支持か、統一を目指すのかで対立が続き、遲疑逡巡する経済界政界学界のリーダー、指導者も多い。90年代に李登輝前総統が目指していた「新台湾人による台湾の自立」という希望の光は、現職の「出自・出身・来歴が生んだ対立による台湾の自立」の時代に入って、一転して、結論の出せない袋小路に入ってしまった。
 しかし、人類は文明を育てたときから、常にこうした課題に直面してきた。その挑戦をうけた多くの文明がたどった道は大半が失敗と挫折であったかもしれず、そうした闘争の中で幾多の文明が跡形もなく滅び去っていったが、滅びた文明の知恵の一端は、やはり古典の中に伝承されている。中国古代の熾烈な闘争の中で生まれた『易』の思想もそうしたものの一つかもしれない。
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一陽来復
 中國的古籍《易經》里有這么一段話:“一陽來复,复旦天心。”所謂“一陽來复”用的是陰陽的思考方法,意思是到達了陰之極后馬上又會生變出陽。所以在中國,有一天叫“冬至”,冬天結束開始向春天過渡的一天,那一天是節日,大家都祈禱慶祝,希望一陽來复。
 就是說,像季節輪回那樣,世界也是盛衰輪回,一旦衰之极也會复蘇回來,這是自然的形態。如此想的話,到底哪個國家是圍棋最強國并不是一個大問題,重要的是要有互愛互讓的精神,相互幫助,也就是國際友好。
 再說得遠一點,《易經》中還有這樣的一段話:“易窮則變,變則通,通則久”。日文中也有類似的表達,有一句話叫“窮則通”,但它把其中最重要的“變”字給漏了。為了“通”,“變”才是最重要的,這是中國的古籍告訴我們的。
 中国の古典籍《易経》の中にこのような1段の話がある。“一陽が回復して、天の心もまた蘇る。”いわゆる“一陽が回復する”は陰陽の思考方法で、意味は陰が極限に達した後、すぐまた陽が出現する。だから中国では、ある一日を“冬至”と呼んで、冬が終わって春に移り始める日を祝日とし、みな「一陽来復」を希望し祝賀した。
 つまり、季節が循環するように、世界もまた盛衰が循環するので、いったん衰えた者でもまた回復することがありえる。これが自然の形態である。結局、どの国家が囲碁で最強国になるかは大きい問題ではなく、重要なのは互いによく譲り合う精神であり、互いに助け合うことで、国際友好もこうしたものである。
 もう1度先に話しを進めると、《易経》中はこのような1段の話がまだある。“追い詰められると変化がおこり、変化は潮流となって、潮流は長久に及ぶ”。日本語の中にも類似する表現があって、ひと言で言うと“窮すれば通ず”という。しかし、それはその中の最も重要な“変わる”の字を抜かしてしまっている。“通(潮流)”のために、“変わる”ことは最も重要であり、これは中国の古典籍が私達に教えるところなのである。
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 日本も90年代の終わりから今まで「窮則變,變則通,通則久」の最初を体験してきた。小泉首相が後世の史家から評価される政治家として歴史に名を残すとすれば(そのまえに中国・朝鮮との戦争を抑止するかその侵略をどんな犠牲を払っても押し止めるとこが必要だが)、「窮則變」を日本人の政治家で初めて自発的に具体化した点であるに違いない。「改革」とは、まさにこうしたことではないか。日本人の多くは、私も含めて「變」を自覚するのは非常に困難かもしれない。「變則通」の安倍総理の時代となって、私達が90年代の「窮」から安易に「通」に至ったという声(たとえば九条の会、似非人権派のような日本の守旧派など)に動かされれば、再び、「窮」するのは目に見えている。
 あれが「一陽来復」だったと確かに言えるときまで、私達は変わり続けなくてはならない。それは、世界に溢れる「圧政」をいつの日か止める力になるにちがいない。そして、台湾もまたその同じ道を今、歩んでいるのである。
つづく

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