気ままな旅


自分好みの歩みと共に・・

私の心に届いた小さな旅

2015-01-10 10:45:08 | 小さな旅日記
 旅先で良く街を早朝に歩くのが好きで、しかも表通りでは見られない一本裏に入った素朴で長閑な知らない姿を垣間観たく歩いている。
 そこには美しい風景とは異なる、何か心を和ませてくれるものがある。

 パリからベネチュアに小旅行に往った時のことである。
いつもの通り、早朝にホテルの窓からサンジョルジョ・マジョーレ島を眺めながら着替えをして昼間の人いきれで賑わったサンマルコ広場とは逆の方向に歩くことにした。

 9月の朝の弱い陽ざしを受けてホテルの前に広がる水面が気持ち良く照りかえるのを横目に、ゆっくりと歩きながら程よい所から細い路地に一歩踏み入れた。
 崩れかけた歴史を感じさせる家々の石作りの壁にも陽光が差し込み、初秋の涼しさを感じる気候なのに家々の緑色の窓辺には赤い花々が咲いていた。
 そして、窓から窓へ紐に吊るされた洗濯物が幾重にも連なり満艦飾豊かにひるがえっていた。
 朝食の準備に忙しいのか外はまだ、誰も歩いていない。
この静かな早朝の窓辺は一枚の絵葉書であり、風物詩でもある。
それから細い路地から路地へと歩き続けると、パテイオのような広場にでた。
すると、左の海側の路地から、ハットを被り、ツイードの上着にネクタを締め、口元に白い髭を蓄えた老紳士がステッキを片手に、悠然と背筋を伸ばし石畳の上を犬と散歩を終え、小さな白い素朴な木の戸口を開け白い建物の中に消えた。

 しばし足を止め、老人の犬との素敵な散歩姿を眼で追った。
早朝に見た古代ベネチュア共和国の気風なのか。

こうして、朝の小さな時間を見つけては旅の小さな想い出を重ねている。

 旅とは、ただ単に美しい風景を観るだけが旅ではない。
その旅がより豊かになるかは、その旅に「心に届くもの」を創ってこそだと思う。