全英連参加者のブログ

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私大に破たん保険ができるんだって。

2005-10-27 05:08:37 | 気になる 大学研究

 経営破たんした私大の学生を救済するため、文部科学省は16日、「破たん保険制度」(仮称)を2008年度にも創設する方向で検討に入ったそうだ。
 各私立大が資金を拠出、それをプールし、在学生が卒業するまで破たん大学の運転資金に使う。
 預金保険機構の大学版。。。? 必要なのかな?
 「学生が卒業するまで」と「大学の運転資金」がキーワードだろう。

 学生の卒業後まで、大学を残すことまでは想定していなそうだ。萩国際大学のように再建スポンサーが付き、経営を引き継げればいいけど、そうでない場合のことを考えているのだと思う。

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 何を基準に資金拠出をするのかな。
 預金保険機構の場合は、確か預かり金額の多い少ないが、基準だったはずだ。たくさん預かっている銀行は、その分たくさん拠出しなければならない仕組みだったと思う。たくさん預かっているところに何かがあれば、より深刻なシステミックリスク(金融システム全体の危険)が発生するからだという理屈だ。

 大学はどうなるんだろう。
 まず、人気がない(学生が定員割れをしている)学校は、全部がそうだとは言い切れないが、経営リスクが高いと判断していいだろう。
 もちろん大学の責任ある立場の人間(学長・理事長等々)が個人的に不正を為すことも、あってはいけないが、これまで皆無とは言えない。設置認可申請が虚偽だった例もある。学校の信用で借金をして、それが元で学校の経営が傾くこともあるかも知れない。でも、これは例外だろう。やはり、拠出金(保険の掛け金)は定員割れの学校が多く出すべきだろう。

 でも、待てよ。。。
 学生が少なくて、そのせいで、学納金(いろいろなお金)が入らないから、経営が怪しいわけで... そんな学校がお金なんてたくさん出せないかもしれないな。経営がそこそこのところと同程度には出せない。。。
 それでもたくさん出さなきゃいけないことになって、どうにかしてたくさん(ちゃんと)拠出していることが受験生の知るところになれば、定員充足率が低いことが表沙汰になり、さらに人気が下がり、もっと学生が集まらなくなる。破綻スパイラル...

 じゃあ、どんな大学も一緒の額なのかな。。。
 競馬騎手、競輪・競艇選手は一般的な生命保険が加入できない。危険度が高い職業であるためだ。危険度が高くなったり、保険金支払予定額が多額になれば掛け金は多くなるのが普通だと思うけど、大学の破たん保険はどうなんだろう。考えてみる。

 1.学生数が多い方が拠出金額が多くなる。
 …確か、私大学生数200万人、生徒数が多い方から85校程度大学にその6割がいる。これらの学校はまあ、定員に達しているだろう。定員割れの学校よりは破たんからは遠いと考えるべきだろう。たくさんいるから破たんしたらたくさんの迷惑。。。 金融のようなシステミックリスクに基づく考え方は無理があるな。この方式はボツ。
 2.学生数に関係なく、大学ごと均等割。
 …これも1.と同じ理屈で不公平感がでる。ボツだろうなあ。
 3.定員を充足している状態を1として、充足率との差で拠出金の額を決定。
 …充足率の±一定幅以内は同額。下回ったら、増額。

 僕は3番がいいと思うんですけど。

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 大学が潰れると学生に迷惑をかける。学生の学習権は保証しなければならない。可能であれば、入学した大学で卒業させてあげたい。それを保証する保険制度である。必要な制度なのだろう。
 学生を転籍させるのがむずかしければ、卒業までは何とかして、その学校には消えてもらう。その方法を模索するのがこの保険だろう。これだけ大学の設置を認めた以上、何が起こるかわからないし、現実問題として大学の経営が吹っ飛んでいるわけだから、やっぱり必要なんだろう。
 潰れそうな大学に進学する生徒には問題がないのか。自己責任は等というバカなことを言い出しそうなやからもいるかも知れない。しかし、これはそういうことを言う方が愚かなのである。大学の学部学科を選択するのも大変なのである。その上経営状態なんてわかるわけがない。受験生が財務諸表なんか読めない。
 学生は預金とは違う。A銀行が破たんしても、10000円札は10000円札だが、A大学が潰れれば、A大生がどこの大学にでも自由に転校できるわけではない。

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 原稿を書いていて、いつも読んでいるブログをのぞいた。そうしたらこんな記事の紹介があった。
 日本経済新聞の10月26日の記事で、同誌が私大の経営(破たん見通し)について、約700校ある4年制大学のトップに尋ねたそうである。そうしたら今後5年間で...

 『平均48校が経営破たんする。

 という、予測がでたらしい。(日本経済新聞社まとめ「私立大学経営アンケート」)

 【各私大トップが予想した破綻大学数の平均値】
 国立87校のうち2.7校 
 公立86校のうち4.5校
 私立553校のうち41.1校。
 …あわせると48.3校だった。
 100校以上破綻との見方も全体の10.3%

 ここまで深刻なのだろうかと訝る気持ちもある。でも、50校弱とは思えない。一都道府県に破たん大学がひとつでおさまるのだろうか。
 100校以上というのもすごい予測だ。ここまでいかなくても、考えさせられる数字である。

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 しかし2008年度で間に合うのかなあ。
 定員と進学希望者が同数になり、選り好みしなければ全員合格になるといわれたのが2009年度入試である。実際のところは人気のある大学は定員が充足し、だいたい文科省に文句を言われない20%オーバーくらいの学生をかき集める。そうでないところは学生が集まらず、学納金が不足して、経営が傾く。これを2009年問題と言っていた。この予測は本来、2009年度入試(2008年の3年生)でおきることという予測だったが、実質2年早くなって、現在では2007年問題(現在の高校2年生にあてはまる)といわれている。保険ができる前に何かがおきた場合は、萩国際大学の再建スキームである民事再生法で何とかするしかないのか。

 こんな時代に自分目の前の生徒たちの進路相談にどう乗ればいいのか。本当にとまどうことが多い。

 いずれにしても、えらい時代になったもんだ。

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