全英連参加者のブログ

全英連参加者の、言葉やその他諸々についての雑感... 不定期更新です。

REPLICAS

2019-05-22 04:00:00 | 全英連参加者 2019

 ずいぶん待たされた気がする。
 17日(金)午後、テスト用務を終えて、浦和まで出かけて来た。

レプリカズ ポスタービジュアル  A scientist becomes obsessed with bringing back his family members who died in a traffic accident.(IMDb)
 ある科学者が、交通事故で死亡した家族を取り戻すことにとりつかれる。(私訳) 

 キアヌ・リーブス主演のSFスリラー。そんなことを考えた。

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 主人公ウィル・フォスター(キアヌ・リーブス)は脳神経科学者だ。彼は人間の意識をコンピュータに移す実験を、今にも成功させようとしていた。彼には、妻のモナ(アリス・イブ)、マット、ソフィー、ゾーイの3人の子どもがいる。
 ある日、交通事故で自分以外は死亡する。家族を失い、彼はタブーを犯す決断をする。自らの知見を生かし、家族の身体をクローン化。意識を移し替え、完璧なレプリカとして甦らせるのである。そのために共同研究者のエドを巻き込む。
 このあたりから、ものがたり展開に相当無理が生じる。

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 死者の脳から情報を取り出すことができる。ヒトもクローンで作成できる。それがREPLICASのものがたりの世界である。その技術を研究しているウィルは、家族の死に直面する。なんとかしたい。普通であれば警察や救急を呼び、助けをもとめるが、彼は違う道を選択する。家族を文字通り再生し、家族と幸せな日々を送る。事故も死もなかったことにする。
 再生に必要な機器は、エドに自分たちがが勤務する研究機関から持ち出させる。窃盗か横領である。
 再生装置は常に電源をオンにしていなくてはならない。エドにそれを告げられ、電源を確保するウィル。
 再生可能なのは、装置の数、すなわち4人である。妻と3人の子ども全員は、蘇らせることができない。絶望するウィル。でも、あっさり末娘のゾーイの再生をあきらめ、存在の証拠を、家族の記憶を含め消す。
 ・・・ちょっと主人公ひどすぎである。
 なお、再生に必要なのは17日である。

 ものがたりの中盤、モナは自らがレプリカであることを知る。でも、そのままものがたりは進む。モナは自己の存在にショックは見せるが、強い嫌悪感は見せない。意識(存在する、生きている)の方が大事なのである。

 いろいろものがたり展開に無理がある。突っ込みどころ満載である。

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 死にあらがう主人公。「永遠の命」というと、宗教哲学のようだが、自然な感情である。
 個体の死を、脳内記憶を抽出、複製し、何かに移し替える。そうしてハードウエアとしての人体の限界(=死)を超える。昔からSFのテーマとしてはあるものだ。クローン人間もSFで取り上げられているものだ。本作はそれらを「軽いタッチ」であっさり実現する。ウィルもウィルの企みに巻き込まれたエドも、倫理観で悩むのは一瞬。ウィルには死にあらがい苦悩する主人公の雰囲気がない。
 レプリカ作成に狂奔する彼は、学齢児童生徒である子どもたちのアリバイ作りも失念し、どんどん怪しさが周りに伝わり始める。MS(マッドサイエンティスト)と化した彼は、そんなことも気にしない。周りが見えない。脇が甘いのである。
 「シックス・デイ」(アーノルド・シュワルツェネッガー,’00)は、記憶の取り出しとクローンへの移し替えが描かれた。スリリングなアクション映画だった。「CHAPPiE」(’15)もそうだろう。ひねりのあるエンディングだった。トランセンデンス(ジョニー・デップ,’14)もそうなのかな。それらに比べると...B級感が強い。

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 キアヌ・リーブスの作品としてはどうなんだろう。SF作品というと、「JM」(1995)、「マトリックス三部作」(1999~’03)の印象が強い。スタイリッシュで、かっこいい主人公。でも、本作は違う。何となく感じる違和感は、「地球が静止する日」(’08)の終わり方に近い。ただ、MS化したウィルはそれなりに成功かもしれない。でも、本作はSFとしてはどうかというと、詰めが甘いと思う。スリラーとも言えない。

 記憶の移し替えのシーンは「マイノリティー・リポート」(トム・クルーズ,’02)が上かな。
 アリス・イブが、なんだかもったいない。

 ☆2個かな。


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