私の主張・ひとりの日本人として

新聞やテレビの報道で特に偏向マスコミや反日日本人などに憤慨することが多くなり、暇な時に思いつくまま書き綴ったブログです。

映画「宣戦布告」を鑑賞して

2002年10月07日 22時41分55秒 | 書評・映画評

~明日にでも起こりうる有事法制なき日本の危機~  

 10月5日から、有事法制なき日本の危機を描いたリアル・シュミレーション映画「宣戦布告」が公開された。この映画は麻生幾著の同名の小説を映画化したもので、私はその小説を読んでいるが、フィクションとは思えない、リアルさと緊迫感があり、繰り返して読んでしまい、是非、この小説を映画化して貰いたいと思っていた。それが今回、石侍露堂監督により3年の歳月をかけて映画化されたことは大変嬉しい事である。

 映画は、国籍不明の潜水艦が原発銀座である敦賀半島の海岸で座礁し、北朝鮮の武装工作員が上陸し、姿を消したことから始まる。通報を受けた福井県警は機動隊を出動させ、潜水艦の内部を調査すると、数丁の銃器と銃殺された乗組員の死体が発見され、その他の遺留品から北朝鮮の潜水艦であることが明らかになる。映画では北東人民共和国となっているが、北朝鮮であることは誰が見ても分かるだろう。まもなく付近の検索によって潜水艦の乗組員と思われる男1人が確保されるが、その供述から、侵入したのは、軍事組織である偵察局所属の11名で、ロケット砲、重機関銃、手榴弾などで武装していることが判明した。

 警察庁長官は、侵入したのは特殊部隊の可能性があるとして、防衛庁の協力が必要との意見を出すが、政府は、「自衛隊出動は時期尚早」として、警察の特殊部隊SAT投入した。SAT隊員からの「敵・工作員は発見次第射殺せよと命令を出してもらわないと、隊員の安全が確保出来ない」との意見具申から、福井県警本部長から射殺命令が発令され、SATの作戦行動が開始される。しかし、諸橋総理(古谷一行)は、“上陸ゲリラに射殺命令”という新聞のスクープ記事を見て、射殺命令の撤回を現地対策本部に向けて発した。まさにその命令が、SAT隊員に届いた時、山中に潜んでいる武装工作員を発見し、自動小銃の照準を合わせていた時であった。その瞬間、射殺命令解除が悲劇を呼び、武装工作員がSAT隊員に向けてロケット砲を発射し、隊員は両足を吹き飛ばされて、小隊長の腕の中で、胸のポケットに入れていた、愛妻と幼い我が子の写真を見ながら殉職する。

 警察はSAT部隊の撤退を命じ、総理に自衛隊の出動を要請した。「しかし、自衛隊を動かせば、北に『宣戦布告』したことになる」との外務大臣の意見や有事法制がないため、自衛隊を出動させても十分な活動ができないとの意見など、様々な意見が交わされていたが、日本国憲法の解釈や関係省庁の縄張り、野党の反対などもありなかなか結論は出ない。そこへ、民宿を営む夫婦の射殺死体が発見されたとのニュースが入る。それでも、自衛隊を出動させるか否かの決断を迷う総理は、内閣情報調査室長(夏八木 勲)に意見を求めると「自衛隊の最高指揮官は、総理あなただと言うことだ。決定するのはあなたしかいないと言うことだ。それがイエスであれノーであれ、私はその決定に従います」と言うと、総理はひとりで官邸執務室に籠もり悩むことになる。原作では、妻から「どうせ行くも地獄、帰るも地獄でしょ。だったら前に進むしかないじゃないですか」と言われたことが自衛隊を出動させる決断になっており、思わずニヤリとさせられる。

 閣議で自衛隊に治安出動命令を発することが決定されるが、総理は、こちらからの先制攻撃はしないという姿勢は崩さなかった。

治安出動命令を受けた自衛隊は、作戦計画を作成するが、原作(下巻44ページ)には

治安出動の関する作戦計画
作戦暗号「はぎ」
1 陸上自衛隊 

* 出動部隊 三個普通科連隊、後方支援連隊、戦車など1個師団、中部方面航空隊 関西地区弾薬補給所、自衛隊阪神病院
* 出動隊員 普通科部隊隊員を始め、医官と看護婦など支援要員を含めた6千2百名
* 出動車両 九六式装甲車十五台や八七式偵察警戒車を始めとする千二百台
* 航空部隊 第五対戦車ヘリコプター隊十機を含めたヘリコプター八十機

2 海上自衛隊 

* 出動隊員 海上自衛隊隊員二千五百名
* 出動部隊 護衛艦十四隻 潜水艦四隻
* 舞鶴地方隊 第二護衛隊の護衛艦3隻 第三一護衛隊の護衛艦3隻
* 自衛艦隊 第三護衛隊群第三護衛隊、第七護衛隊及び第六三護衛隊の護衛艦8隻
* 潜水艦隊 第一潜水隊群の第一潜水隊と第五潜水隊四隻
* 航空部隊 哨戒機Pー3C

 と書かれている。この映画が自衛隊の協力をまったく得られなかったとのことで、もし自衛隊の協力が得られたならば、この出動場面が一番迫力がある見せ場になったことであろう。  

 SAT隊員に代わり出動した陸上自衛隊の普通科連隊の小銃小隊は、敦賀半島の山中で武装工作員の検索を行っていたが、武器の使用が制限されている中、トンネル内で武装工作員と遭遇し、無線で応戦の許可を問うも、上官からの返答がなく、応戦しないまま自衛隊員たちは次々と倒れ戦死する。  

 陸上自衛隊普通科連隊の連隊指揮所では連隊長と防衛庁・防衛局員が武器の使用を巡って対立し、防衛局員は作戦の一時停止を進言し、総理官邸の危機管理センターでも、武器の使用を巡る法令の解釈について不毛な議論をしていたが、その間にも現場では、自衛隊員たちが次々と倒れていく。普通科連隊の連隊長は、多くの部下が戦死しているのに、決断しない政府や法令の解釈を無視して、ついに各隊員に小銃及び手榴弾の使用を許可し、対戦車ヘリコプター・コブラの出動命令を出す。炭焼小屋に潜んでいた武装工作員は、対戦車ヘリコプターのバルカン砲で殲滅される。大量の火薬を使ったそのシーンは圧巻である。

 そのころ、自衛隊の出動は「宣戦布告」になるとの外務大臣の進言が現実となり、北朝鮮は核ミサイル発射体勢に入り、アメリカ太平洋艦隊が出動し、韓国は戒厳令を布告、支那はデフコンをレベル1として、ミサイル駆逐艦とフリゲート艦を出動。フィリピン、カンボジア、ベトナムなど各国が戦闘態勢をとる。しかし、突然、北朝鮮は核ミサイル発射体勢を解除する。それは、北朝鮮の工作員に「アメリカが北の首脳部を爆撃する」というニセ情報を内閣情報調査室が流した事からであり事態は沈静化する。

 日本武道館で行われた追悼式で、新聞記者から、「たった1隻の潜水艦で、アジア全体が緊迫し、首相が辞任するまでに追い込まれるなど、この国は異常だと思いませんか」と問われた諸橋総理は、「この国が異常だと思っているのは、君だけじゃない」と話して映画は終わる。 

 以上がこの映画のあらすじだが、あとは北朝鮮の工作員に対する警視庁公安部との息詰まる対決なども描かれている。

 映画が終り、タイトルバックが流れ出しても、ほぼ満員の館内は静かで、席を立つ人もなく、おそらく、多くの方は、この映画のようなことが、現実に起こりうることであり、その時に果たして政府や、この日本が対応できるかどうか考えさせられたのではないかと思う。

 SAT隊員が武装工作員が発射したロケット砲の直撃を受け両足を吹き飛ばされて、小隊長の腕の中で、胸のポケットに入れていた、愛妻と幼い我が子の写真を見ながら殉職する場面や、総理が自衛隊の出動を決断する場面、テント内に安置されていた武装工作員の遺体を自衛隊員が敬礼をした後に運び出す場面などに思わずジーンとし、涙を流してしまった。有事法制がなく、いやあったとしても、映画のように警察官、自衛隊員に多数の犠牲者が出ることを、覚悟しておかなければなるまい。

 石侍露堂監督は有事法制について「日本が独立国家として成り立つために、有事法制は必要です。現在、国会で論議されている法案の内容は十分なものではないと思っています。反対する人たちは、個人の自由や財産が制限されると言ったりしていますが、攻めてくる敵が自由や財産を保障してくれると本当に思っているんでしょうか?『国』を守るとか『愛国心』というと、偏った見方に捉える傾向にありますが、国や社会の共同体に一員として、所属するコミニュティ-に対して奉仕するのは当然のことでしょう。今の日本で『国のために犠牲になる』なんて言えば、白い目で見られてしまいますが、ボランティアという言葉が『志願兵』から来た言葉だということを良く吟味してみると、国が犠牲を強いるのではなく、国(共同体)のために、自ら進んで犠牲となる国民を持つ国家は幸せだということになるのではないでしょうか」とインタビュ-に答えている。

 有事法制に反対する人は、この映画を是非観賞して欲しい。たかが映画とは思えないリアルさで有事法制なき日本の危機を描いているからであり、それでも、この法制に反対するのは、攻めてくる敵は自由や財産を保障してくれると思っているのであろう。この映画と同じことが隣国の韓国で起きており、その時も多くの韓国軍の兵士が戦死していることは記憶に新しい。

 この映画を作成するにあたり、自衛隊の協力が不可欠であったが、石侍露堂監督の話によると、「政治に影響が出る」「防衛庁事務次官がスパイであるとの設定」「自衛隊員が死ぬのは良くない」等の理由から得られなかったとのことである。自衛隊は、このあまりもリアルな映画の製作に協力して、マスコミや世論の批判が怖かったのであろうか。自衛隊が製作に協力していれば、さらなるリアルさと、迫力ある映像で迫る日本の危機が描かれたことであろう。残念でたまらない。

 北朝鮮の金正日総書記は9月17日の日朝首脳会談の席上で、武装工作船による工作活動はやめると言っているが信用できないし、今後も、この映画のような潜水艦による工作活動は続けるであろうことが予想される。

 久しぶりに感動する良い映画を見た。石侍露堂監督始めスタッフの皆さんありがとう。また出演した皆さんありがとう。そして、なるべく早くDVDディスクを発売して頂きたい思う。
(2002/10/07)

この記事は「私の主張」第145号
「映画『宣戦布告』を鑑賞して」
~明日にでも起こりうる有事法制なき日本の危機~
としてHPに掲載されていたものです。


最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (向かい風)
2011-11-24 16:07:00
考えさせる作品ですね!
私も管理職してますので感銘受けました。
返信する
押しかけ御免。 (妄想大好き人間)
2017-12-25 11:11:51
初めまして。過去記事に失礼します。

この映画は先日amebroで取り上げました↓。
https://ameblo.jp/mosodaisukiningen/entry-12338927098.html

確かに、日本を脅かす存在を題材にした映画としては名作、良作と言っても過言ではありませんね…が、「日本を脅かす存在」が題材の映画として、本作ばかり取り上げられるようでは、皆さんもまだまだ甘い、と言わせてもらいましょう。

というわけで、この映画と並べて紹介すべき作品を取り上げたのですが↓
https://blogs.yahoo.co.jp/mosodaisukiningen/42223818.html
貴方のご意見は?


乱文失礼いたしました。
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。