*低床ミニバンで孤軍奮闘、ホンダ、マツダ.こだわりの在来客への最大限のサービス精神、見せるブランドには必要な心意気!
ホンダとマツダが、それぞれ先駆者を自任するこだわりの車種で勝負に出る。ホンダは車高が低い低床ミニバン「ジェイド」を、マツダは小型SUV(多目的スポーツ車)「CX―3」のディーゼルエンジン車を、改良すると17日にそれぞれ発表。人気低迷や規制強化という逆風が強まる中、あえてアクセルを踏み込む。その背景には、コアなファンをつなぎ留めようという両社の意地がある。
ホンダはジェイドを一部改良し、18日から発売する。スポーツタイプに絞った改良を施し、個性を際立たせる戦略だ。
ジェイドは2015年2月に国内で発売された。セダン並みに車高が低い低床ミニバンだ。今回の改良ではスポーツモデルの「RS」を3列6人乗りから2列5人乗りに改める。ハイブリッド車も発売する。
ホンダはジェイドを含む低床ミニバンの先駆者だ。1994年発売の初代オデッセイを皮切りに、2000年のストリームもヒット。車高が低いので安定した走行性に加え、見た目にもスポーティーなためホンダのブランドづくりに貢献した。
しかし近年は消費者の嗜好がより使いやすい背丈の高いミニバンへシフト。多目的スポーツ車(SUV)の人気もあって低床ミニバンには逆風が吹く。現行オデッセイは大型化し、ストリームは14年に販売を終了した。ライバルだったトヨタ自動車の「ウイッシュ」も17年に打ち切りとなり、業界を見渡しても低床ミニバンではジェイドがひとり気を吐いていた。今回の改良ではミニバンの主な購入層であるファミリー層でも走りを追求するファン向けに「ホンダらしさ」をアピールした形だ。
一方のマツダ。CX―3の改良型を5月31日に国内で発売する。ディーゼル車はエンジンの排気量を従来の1500ccから1800ccに引き上げる。安全性能も高め、一般的な消費者のニーズに応える一方、エンジンでは「らしさ」を訴える。
排気量が大きくなればパワーがでる一方、燃費が悪くなるとの印象もでかねない。ただCX―3では排気量をあげて、環境性能を高めるというマツダの考え方「(排気量適正化)ライトサイジング」を訴求する。
「トルクを大きくし、燃費も改善、そして重くなっていない。マツダの技術を凝縮したエンジンだ」。開発責任者の冨山道雄主査は強調した。燃費は日常の使い方に近い計測手法で約3%改善されるという。
ただ2015年に発覚した独VWのディーゼル排ガス不正問題を受けて状況は一変、規制強化などで欧州の市場は縮小傾向となる。トヨタ自動車、日産自動車、ホンダ、SUBARUが欧州ディーゼル車の縮小・撤退方針を相次ぎ明らかし、逆風が鮮明となった。
そのなかでもマツダはディーゼルを含めたエンジン技術の強みを訴える。ディーゼル車は軽油を燃料とするため、維持費が抑えられる。ただ忘れ去られがちな力強さ(トルクの強さ)も魅力の1つだ。
「免許返納前、最後は運転する楽しみを味わえるディーゼル車に乗りたい」。60代の男性がマツダ車を選んだ理由を話す。独BMWなど輸入車も検討したが、ディーゼルのマツダ車を購入した。
今後も、人口減やシェアリングの台頭で国内の新車市場の縮小は避けられない。ホンダの場合、現在展開する登録車(排気量660cc超)は16車種と多く「思い切った車種構成の見直しも必要だろう」(関東のホンダ販社幹部)といった意見もある。マツダは今後もディーゼル車の開発は継続する姿勢だが、市場の縮小は避けられない。今回改良された両車種が持つ役割は重い。*日経(湯沢維久、古川慶一)