三菱重工株価推移 621前日比-9(-1.43%)
*資金的な不安を一掃、アルストムが経営権を保持、本体への出資、雇用増、1000人、
*日経,14/6/17
【フランクフルト=加藤貴行】三菱重工業と独シーメンスは16日、仏アルストムのエネルギー部門の共同買収案を発表した。三菱重工は蒸気タービンや送配電事業など3つの合弁会社をアルストムと設立、本体にも最大10%出資する。シーメンスはガスタービン事業を買収する。2社合計の投資額は最大79億ユーロ(約1兆900億円)。日仏連合で需要が高まる新興国のエネルギー関連市場を開拓する。
提案では三菱重工はアルストムと蒸気タービン、送配電、水力発電の事業で3合弁を設立する。三菱重工は蒸気タービンの合弁に40%、送配電と水力発電にはそれぞれ20%ずつ出資する。3合弁への出資額は合計31億ユーロ。さらに、アルストム筆頭株主の仏複合企業ブイグからアルストム株を最大10%取得する。16日の終値ベースで最大約9億ユーロ(1240億円)になる。
シーメンスはアルストムのガスタービン事業を39億ユーロで買収し、今後3年間は仏国内の雇用を維持する。また鉄道事業については両社の合弁を含めた可能性を探るとしている。三菱重工とシーメンスは買収・統合後、今後3年で1千人の雇用を新たに生み出すとしている。
三菱重工による3合弁への出資とシーメンスのガスタービン事業買収の合計額は70億ユーロ(約9700億円)となる。さらに三菱重工によるアルストム本体への最大10%出資を加えると79億ユーロとなる。
一方、GEは先に169億ドル(約1兆7千億円)で、アルストムのエネ部門の買収を提案している。三菱重工が仏政府が懸念する仏国内の雇用やアルストムの経営への関与を認めたことでGEは買収提案の見直しを再び迫られる可能性もある。
三菱重工の宮永俊一社長、シーメンスのジョー・ケーザー社長は同日、アルストム側に今回の共同提案を説明した。17日には仏オランド大統領と面会するほか、仏議会での説明を予定し仏側の理解を得たい考え。アルストムは23日までにGE案の審査を終える予定だ。
*ロイター電、
シーメンスのジョー・ケーザー最高経営責任者(CEO)は、アルストムがエネルギーおよび鉄道事業で、今後も独立し、重要な役割を担っていくと強調したうえで、「エネルギー部門は三菱重工との提携によって強化される。シーメンスはアルストムと共に、鉄道事業で欧州最大となる好機を模索していく」と語った。
アルストムは今後数日で、三菱重工とシーメンスによる共同提案を精査する方針であることを明らかにした。関係筋によると、買収対象とならずアルストムにとどまる発電事業の一部も含め、日独連合の提案はGE案を10億ユーロ超上回る。
また、三菱重工は仏政府と共にアルストム株式の取得を目指すが、ブイグがアルストム株の売却に応じない場合でも、共同買収案を撤回することはないと関係筋は話している。
仏政府は雇用確保とエネルギー自立の観点から、アルストムが外資の手に渡ることには否定的な立場だ。アルストムは世界の原発にタービンを供給しており、米国企業の傘下に入れば仏原発産業の輸出を損なうと懸念している。
サパン仏財務相は、アルストムと仏政府は、三菱重工とシーメンスの共同提案、GE案すべての詳細が出そろった段階で精査し、決定を下すと述べている。
ただ仏政府やアルストム、アルストム筆頭株主のブイグがシーメンスと三菱重工の提案をGEより評価するかどうかは不明だ。
ブイグは、三菱重工からも仏政府からも、同社が保有する29%のアルストム株式をめぐり何ら連絡は受けていないとしつつも、アルストム取締役会の意向に沿った提案を支持する構えを明らかにした。
三菱重工の宮永俊一社長、シーメンスのケーザーCEOは17日1500GMT(日本時間18日午前零時)から仏下院で共同買収案の説明を行う予定。国家利益を懸念する議員から厳しい追及を受ける公算が大きい。
また仏大統領府によると、オランド大統領は三菱重工、シーメンスの両社首脳と17日に会談する。GEは買収案の一環として、今後3年以内にフランスで1000人の雇用を創出することを確約している。シーメンスも、仏独のガスタービン事業において今後3年間、雇用を保証するとともに、アルストムと三菱重工の提携でフランス国内で1000人以上の雇用が創出されると指摘した。仏政府はまた、エネルギーに加え、アルストムのもう1つの中核事業である輸送分野でも大手として存続させたい意向だ、
シーメンスは、アルストムと鉄道車両事業を統合して、「欧州最大手」を目指す可能性についても話し合う計画と説明したが、確約はしていない。GEのイメルトCEOは前月、鉄道分野でもアルストムとの提携を検討しているとして、両社の鉄道信号事業を統合しアルストムの傘下に置く可能性を示唆している