事業者だけではない。パネルメーカーもグレーな問題を抱えている。
FIT法は、当時野党の自公によって3年の促進期間を設ける修正がなされ、世界一高い買取価格が実現したわけだが、その背後には、国産パネルメーカーに対する支援、つまり産業政策としての狙いがあった。「欧州のように中国製パネルが席巻することのないようにしたい」という言葉は、法案に関わった多くの議員から聞かれた。
しかし現実はどうか。国産イメージが強いシャープやパナソニックですら、実は海外メーカーにOEM(相手先ブランドによる製造)生産させ、国内に輸入してブランドだけ自社のものとする、いわゆる「ラベル張替」を相当量実施しているという。特に、メガソーラー向け、多結晶型では海外メーカー産が多い。太陽光発電協会(JPEA)は「国産ブランド比率75%」と喧伝しているが、「純粋な国産の比率は3割程度」(エネ庁)だ。
「事業者としては、海外での導入実績シェアが高く、性能も良く、競争力のある価格で、保証も日本製パネルと変わらないか、むしろ手厚い海外製の方が良いと考えるのが当然。しかし国内では、海外製パネルはファイナンスが付きにくく、完工(工事完了)までとその後1~2年程度の瑕疵担保期間の性能保証を行えるEPCが限られているという問題がある」
FITでは20年間の売電価格が確定しているので、本来なら事業のキャッシュフローに注目して融資し、スポンサーに担保を求めないプロジェクトファイナンスが向いており、欧州ではそれが一般的だ。しかし、日本ではスポンサーの信用力に依拠するコーポレートファイナンスが一般的である。
02年、沖縄県・糸満市役所の壁面と屋根に大量に装着された太陽光パネルがある。その発電量は年々大幅に低下している(図)。毎年のように周辺機器などに故障が続発し、07年度から総額2000万円も修繕費がかかっている。12年度には遂に、パネルのガラス内の封止材が劣化したという
沖縄県宮古島のメガソーラー実証研究設備では、10年稼働の太陽光パネルに多くの変色箇所があった。銘板を見ればシャープ製とある。メーカー各社は競争のなかで「20年保証」「25年保証」などと謳うが、それはあくまで営業戦略であって、技術的に担保されたものではない。過去に設置されたパネルからは、国産、海外を問わず、さまざまな劣化が見つかってきているとの声が業界から上がっている。
PID現象という劣化現象がある。欧米のメガソーラーで大幅な出力低下が報告され問題になっている。日本メーカーのパネルで日本的な運用をしていればPIDは起こらないとされてきた。しかし、実は、国内でも数件、すでにPIDが発生しているという事実が今回の取材で明らかになった。
太陽光パネルの技術評価に詳しい日本太陽エネルギー学会副会長の太和田善久・大阪大学特任教授は、こう警告する。「10kW以上ではFIT認定時にJIS等の認証さえ必要ない。劣化は程度問題で必ず起きる。おそらく事業者が想定している以上の劣化も起きるだろう。20年ごろには薬害のような問題になるのではないかと懸念している」。
再エネ推進は政治家や官僚にとってダメージにならないため、高い買取価格を維持する力が働く。その結果、バブルが過熱し、様々な「小銭稼ぎ」が出現し、監視できなくなっている。最も問題なのは、事業者も銀行もメーカーも、世界一高い買取価格という甘い環境に守られ「リスク評価など学習能力が低い」(格付機関関係者)状態が続いていることだ。
この状態で、劣化問題が火を噴けば、一気に国民の信頼を失い、再エネ政策は危機に瀕するだろう。20年保証に耐える性能規格を新設することと、世界標準に買取価格を下げることが必要だ(取材では「28円で十分やれる」という事業者の声もあった)。あたりまえのプレッシャーのなかで、各主体の自律的成長を促すべきであろう。