靖国参拝 肩すかしの最高裁判決

2006年06月25日 | メディア・芸スポ
 靖国神社に小泉首相が参拝したことは、憲法が定める政教分離の原則に違反するのかどうか。この問いに、最高裁は合憲か違憲かを判断しないまま原告の請求を退けた。
 身内を靖国神社にまつられた日本と韓国の遺族らが、「01年の首相の参拝によって精神的な苦痛を受けた」として、損害賠償を求めていた。憲法違反の首相の参拝は身内をどのようにまつるかを決める遺族の権利を侵す、というのだ。
 最高裁が示したのは、他人が特定の神社に参拝することで不快の念を抱いたとしても、ただちに損害賠償の対象にはならない。そんな理屈である。首相の靖国参拝に対する司法判断を求めて提訴した原告には、肩すかしの判決となった。
 一連の靖国参拝訴訟では、地裁や高裁で、「首相の参拝は違憲」という判決と、憲法判断をしない判決に二分されている。だからこそ、初めての最高裁の判断が注目されていた。政教分離という憲法の大原則について最高裁が判断を避け続ければ、「憲法の番人」としての役割を果たせないのではないか。
 憲法は「国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない」と定めている。首相の行動が、過去の歴史を踏まえて導き出されたこの規定に反していないかどうかを厳格に判断する。それが裁判所の頂点に立つ最高裁の使命ではなかったか。
 でなければ、首相らが政教分離に反する行いをしたと国民が考えたとき、どこに訴えたらいいのだろう。
 小泉首相は「判決は妥当だ」「哀悼の念をもって靖国神社に参拝するのは憲法違反だとは思っていない」と述べたが、誤解しないでほしい。最高裁は「参拝は合憲」とお墨付きを与えたのではない。
 私たちは、首相に靖国神社の参拝をやめるよう求めてきた。
 靖国神社は終戦まで国家神道の中心にあり、軍国主義のシンボルだった。今の首相が戦没者を弔う場所として、ふさわしいとは思えない。
 A級戦犯がまつられていることには、中国や韓国が激しく反発している。侵略戦争や植民地支配の被害者という立場からすれば、当然のことだろう。
 対外的な問題だけでなく、首相の靖国参拝には政教分離に反するのでないかという憲法問題がつきまとっている。自民、公明、民主3党の有志議員による国立追悼施設の提言も、首相の靖国参拝に関して「憲法違反の疑いがある」との見解を示している。
 最高裁は97年、愛媛県が靖国神社に納めた玉串料などの公費支出について「宗教的活動にあたる」として、違憲判決を出した。政府と自治体、参拝と玉串料という違いはあるが、政教分離原則を厳格に考えれば、靖国参拝についても違憲判断が出てもおかしくない。
 いずれにせよ、最高裁は首相の靖国参拝を認めたわけではない。首相には、それを忘れないでもらいたい。

asahi.com :朝日新聞今日の朝刊-社説
http://www.asahi.com/paper/editorial.html



mumurブルログ:朝日新聞が顔を真っ赤にして悔しがる 靖国参拝最高裁判決
http://blog.livedoor.jp/mumur/archives/50543097.html


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