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サウロスクス



 今回の「最古の恐竜展」とNHKの番組は、恐竜でも哺乳類でもない第三勢力としての「ワニ類」について認識を深める点では有意義だった。クルロタルシという分類名が登場するのは新しい。クルロタルシ類にはアエトサウルス類、フィトサウルス類、ラウイスクス類、ワニ形類が含まれる。クルロタルシ類全体はもちろん、「ワニ類」という言葉では括れないくらい多様な動物群である。ラウイスクス類のうち、ポストスクス、プレストスクス、サウロスクスなどは四足歩行の大型捕食者であるが、サウロスクスはブラジルのプレストスクスと近縁のようである。

サウロスクスの最初の化石(模式標本)は1959年にReigらによって発見された。その後のBonaparteらの調査でさらに4個体の部分骨格が見つかり、それら全部を合わせるとほぼ全身骨格を復元できるようになった。ただし肩帯と前肢は見つかっていない。形態学的記載はSill (1974)にまとめられている。当時は「槽歯類」とされていたが、この時点でのサウロスクスの特徴はおよそ以下のようである。

全長6mに達する大型の肉食性槽歯類で、頭骨は長く、丈が高く、表面に細かい文様(彫刻)がある。眼窩は大きく鍵穴形keyhole-shapedで、前眼窩窓は大きく三角形で前方にのびている。前上顎骨と上顎骨の間に、小さな三日月状の副次的な孔accessory antorbital fenestraがある。外鼻孔は大きく長く、頭骨の側面についていて、前上顎骨と鼻骨に囲まれている。歯は頑丈で反っており、側偏していて鋸歯がある。前上顎骨に4本、上顎骨に10本の歯がある。前頭骨は強くカーブした眼窩弓orbital archをなし、小さな上側頭窓は頭蓋天井の背面で眼窩弓orbital archより少し下にある。
 脊椎骨は両凹型で、頸椎は前後に長く、胴椎は強く側偏している。仙椎は2個である。腰帯には閉じた寛骨臼があり、恥骨は寛骨臼からほとんど排除されている。座骨は長く棒状で、大部分が正中で癒合している。
 足根部はcrocodiloid typeで、踵骨には大きな結節と、距骨のボール状の突起と関節するためのソケット状の窪みがある。脛骨と腓骨それぞれとの関節面は互いに接近している。後肢には5本の指があり、最初の2本が最も頑丈で、第3指が最も長く、第5指は扁平で外側を向いている。

模式標本はほとんど完全な頭蓋で、顔面の骨はよく保存されているが、後頭部と脳函は欠けている。また下顎は破片しか見つかっていない。上顎骨の表面には不規則な網目状の文様(彫刻)がある。鼻骨には縦走する溝状の文様があり、前頭骨の眼窩弓の上にも細かい文様がある。
 眼窩弓とは見慣れない用語であるが、眼窩の上縁でやや前方の、獣脚類ならば涙骨があるあたりの部分が、前頭骨で形成されている。なるほど獣脚類と違って、涙骨があまり上の方まで延びていないということだろう。

部分骨格PVL2557には、後肢の骨格が含まれるが、特にほとんど完全な右の足根部と足が保存されている。六本木の復元骨格は、真横から見ると手前の展示物に隠れて後肢が見えないが、写真のように斜めから見ると後肢がよく見える。獣脚類の鳥のような足を見慣れていると、しっかり5本の指がある後肢は新鮮にみえる。原始的といえばそれまでであるが、なかなか面白い形をしている。
 第5中足骨は他の指から離れて外側を向いており、幅広いカギ形をしている。第1~4中足骨はまっすぐ下方に伸びている。4本のうち第1中足骨が最も太短く、第2中足骨は大きく太く、第3中足骨が最も細長く、第4中足骨は外側にカーブしている。指骨式は原始的な2, 3, 4, 5, 3と思われるが、第5指は1個か2個に減っているかもしれないとある(1個しか保存されていない)。今回の復元骨格をみると2個のようである。第1指は末節骨を含めて2個の指骨が保存されており、末節骨は太いカギ爪で中足骨の1/2の長さである。第2指は2個の指骨だけが残っているが、関節面の形状から末節骨は第1指のものと同じくらいの大きさと思われる。第3指も最初の2個の指骨だけが残っていて、ほっそりした形をしている。

関節した胴椎を含むPVL2198には、鱗甲scuteが保存されている。胴椎の脊椎骨に結合した大きめの鱗甲と、分離した小さい3個の鱗甲があり、小さい方は後方の胴椎(腰椎)のものと考えられている。胴椎の鱗甲は脊椎の両側に2列ずつ並んでおり、後方の胴椎の小さい鱗甲は1列と思われる。2列のものは鱗甲の形がやや非対称で、1列のものは完全に対称であるという。胴椎の大きい鱗甲は幅5cm、長さ7cmくらいで、後方にいくにつれて小さくなる。後方の胴椎の小さい鱗甲は幅3cm、長さ4cmである。いずれも木の葉形で前端がとがり、後端は幅広く少し凹んでいる(ハート形)。背面の中央に稜線がある。腹面の後端には溝があり、鱗甲が前後にかわら状imbricatedに重なるようになっている。


参考文献
Sill, W. D. (1974). The anatomy of Saurosuchus galilei and the relationships of the rauisuchid thecodonts. Bulletin of the Museum of Comparative Zoology 146: 317-362.
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