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白亜紀後期の大型ティラノサウルス類はやっぱりウロコ


今年は恐竜ファンにとってもインパクトのある論文が出すぎ。
ティラノサウルス類に羽毛を生やしたくない!と抵抗していた者にとっては朗報である。私もそうなので喜ばしいが、最近苦労してダスプレトサウルスを羽毛で描いたばかりなので、もう少し早くいってくれれば。。。

ティラノサウロイドの中では、ディロングとユーティランヌスに繊維状の羽毛が見つかっている。特に、全長9mと大型のユーティランヌスがほぼ全身羽毛で覆われていたと考えられることから、白亜紀後期の大型ティラノサウルス類でも全身に広範な羽毛があった可能性がクローズアップされてきた。それが最近の出版物に反映していることは言うまでもない。

Bell et al. (2017) は、ティラノサウルス及び他のティラノサウルス科の恐竜の皮膚痕化石を本格的に観察し、これら白亜紀後期の大型ティラノサウルス類では、恐らく全身の皮膚がウロコで覆われていたことを示唆した。白亜紀前期の原始的なティラノサウロイドが持っていた広範囲の羽毛は、ティラノサウルス科の祖先でアルビアンの頃には失われたと推定している。

まず著者らはヒューストン自然科学博物館所蔵のティラノサウルスの標本HMNS 2006.1743.01を観察している。これはモンタナ州のヘル・クリーク層から発掘されたものである。この標本の頸部、腰帯(腸骨)、尾椎には多くの皮膚痕が保存されていた。皮膚は敷石状のなめらかなウロコからなり、個々のウロコの形状は楕円形、亜四角形、不規則な多角形など様々であった。またこれらのウロコは直径1 mm以下の細かいものである(写真では1 mmより大きいものもあるようにみえる)。ある程度面積のある部分では、植物の葉脈のように走る帯に仕切られた、平行四辺形や三角形の領域にウロコが並んでいるのが観察された。

また他の白亜紀後期のティラノサウルス科の皮膚痕も観察している。アルバートサウルスでは腹肋骨(gastral ribとある)と肢の骨の近く、つまり腹部の皮膚痕と、場所不明の皮膚痕がある。ダスプレトサウルスでは化石そのものはまだジャケットの中らしいが、フィールドで撮影した写真に皮膚痕が認められる。ゴルゴサウルスでは中央の尾椎の血道弓付近に皮膚痕が保存されている。タルボサウルスでは胸部に皮膚痕が保存されていた。これらの皮膚にはいずれもティラノサウルスの場合と同じような、円形ないし多角形の敷石状のウロコが並んでいた。大きさはまちまちのようである。

今回のティラノサウルス及び他のティラノサウルス類の皮膚痕は、ティラノサウルスの全身がウロコで覆われていたことを裏付ける強力な証拠となるものである。アルバートサウルス、ダスプレトサウルス、ゴルゴサウルス、タルボサウルス、ティラノサウルスの皮膚を合わせると、頸部、胸部、腹部、腰部、尾部をカバーすることになり、大型ティラノサウルス類は体の大部分がウロコで覆われていたことになる。もし羽毛があるとすれば背面に限られるといっている。つまりティラノサウルス科のメンバーは、ディロングやユーティランヌスのように広範な羽毛で覆われていたのではないという。
 コエルロサウルス類で羽毛がみられる場合は、事実上全身を覆うのが普通であり、またウロコと繊維状構造が共存している確かな例は一部の鳥盤類(クリンダドロメウス)だけであるという。また大型の成体にウロコがあることは、幼体が羽毛を持っていた可能性を否定するものではない。

羽毛の進化における発生モデルは化石記録と大体一致していると考えられている。コエルロサウルス類の中でより派生的なグループが進化するにつれて、より複雑な羽毛形態が出現してきた。しかし今回の結果は、羽毛の進化は従来考えられたよりも複雑であり、一方的に発達するばかりではない(失うこともある)ことを示した。白亜紀前期オーテリヴィアンまでにはディロングやユーティランヌスで羽毛が出現したが、アルビアンまでには二次的に消失したと考えられるという。


1ついえることは、やはり古生物の復元には勇み足は禁物ということである。メガロサウルス類の幼体とされるスキウルミムスに羽毛があるからといって、アロサウルスからギガノトサウルスまでフサフサにするような風潮にも、同じことがいえるのではないか。



参考文献
Bell PR, Campione NE, Persons IV WS, Currie PJ, Larson PL, Tanke DH, Bakker RT. (2017) Tyrannosauroid integument reveals conflicting patterns of gigantism and feather evolution. Biol. Lett. 13: 20170092. http://dx.doi.org/10.1098/rsbl.2017.0092
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コメント
 
 
 
「羽毛を失った羽毛恐竜に鱗が復活する可能性」 (平山 滋)
2017-07-28 03:03:33
初めまして。
「ティラノサウルスに羽毛は無かった」というのは、私にとっても嬉しいニュースです。 ただ、私のごとき浅学の素人がこのようなことを言うのは烏滸がましいのですが、鱗が有るというのも解せない感があります。 と言うのは、羽毛は鱗が変化したものだと私は理解しています。 ティラノサウルスの祖先が全身羽毛恐竜だとすると、ティラノサウルスは「進化の過程で羽毛を失った羽毛恐竜」であり、相同性の面からみて鱗を失うのと等しいことではないかと考察するのです。 なので、私の妄想する「かくあって欲しいティラノサウルス像」は、サイやゾウなどの毛の無い大型硬皮獣のような皮膚をイメージしているのですが。 こちらの記事ではティラノサウルス類に鱗が確認された例が挙げられていて、専門の研究者が鱗だとするのであればそうなのでしょうが、「鱗っぽく見えるパターンの皮膚の皺」という可能性もあるのではないかと。 とはいえ、哺乳類の中にもアルマジロやセンザンコウのように二次的に発生した鱗を持つものがいるので、羽毛を失った恐竜の皮膚に鱗様のものが復活することも無くはないのかも知れませんが。
 
 
 
そうですね。 (theropod)
2017-07-29 21:36:12
コメントありがとうございます。
おっしゃる通りだと思います。ティラノサウルスの皮膚をゾウやサイのような丈夫な皮膚として描いている復元画もありますね。
 論文を読んだ時にも、体の大きさの割に1mm とか3mmとか、あまりに小さいこともあって、「肌のキメ」のようなものではないかと思いました。化石に保存されているのは皮膚の表面構造だけですから、まさにウロコのような皮膚のシワである可能性もあると思います。
 また復活する可能性も、これまたおっしゃる通りで、爬虫類のウロコとは別の硬い構造を発達させた可能性もあると思います。その点は論文中にもちょっとだけ言及していたように思います。
 
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