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ファルカリウス1


ファルカリウスは、白亜紀前期(シーダー・マウンテン層)に米国ユタ州に生息した最も原始的なテリジノサウルス類で、2005年に記載された。この学名は、古代ローマの人名のようなラテン語の響きがいいし、「鎌を作る者」という意味であり、なかなかのセンスである。大きな鎌状のカギ爪をもつテリジノサウルス類の系統を生み出した、祖先に近い動物ということであろう。「地名+サウルス」ではなく、こういう意味のある命名をしてほしいものである。
 テリジノサウルス類は獣脚類でありながら植物食に適応して、古竜脚類や鳥盤類のような植物食恐竜に収斂した形態学的特徴を示すようになった。小さな木の葉状の歯、歯のないくちばし状の顎の先端、後方を向いた恥骨、側方に拡がった骨盤、後肢は4本指で体重を支えるなどである。最も原始的なファルカリウスの段階では歯と骨盤の形質が現れているが、他の部分は一般的なマニラプトル類の形態をとどめている。ファルカリウスが示すテリジノサウルス類の共有派生形質は、鋸歯のある木の葉状の歯、下顎の歯骨の腹側縁が後方で強く下方に向かうこと、骨盤の腸骨の前方の突起がカギ状になっている、また側方に拡がっている、などである。
 他のテリジノサウルス類と異なるファルカリウスの固有の特徴は、後頭顆の両側に非常に大きな含気性の窪み(subcondylar recess)があることや、下顎の歯骨の前端に1本の大きな歯があること、歯骨にlateral shelfがないこと、中央の尾椎が前後に長いことなどである。

 頭骨の標本は断片的で、2005年の報告では上顎骨、後眼窩骨、前頭骨、脳函、歯骨などがある。歯骨は3つの部分的な標本から復元されたものである。進化したテリジノサウルス類では歯骨の側面にlateral shelfという棚状の部分があり、また歯骨の前端は下方に曲がっているが、ファルカリウスにはこれらの形質はみられない。一方、ファルカリウスでは歯骨の前端がU字型になっているが、これは他のテリジノサウルス類やオヴィラプトル類と同様である。他のテリジノサウルス類と同様に、歯は小さく木の葉状で基部がすぼまっており、前方ほど大きくなっている。ただし、他のテリジノサウルス類では歯骨の前端は歯のないくちばしになっているのに対し、ファルカリウスでは歯骨の前端に1本の大きな歯がある。この状態は、原始的なオヴィラプトロサウルスであるインキシヴォサウルスの前上顎骨の歯と似ているという。
 脊椎骨はよく保存されており、頸椎の神経弓の形は他のテリジノサウルス類やオヴィラプトル類と似ているらしい。しかし他のテリジノサウルス類では尾が短くなる傾向があるが、ファルカリウスでは尾が長いので、中央と後方の尾椎が長い。前肢の手は比較的きゃしゃで細長く、ベイピャオサウルスやオヴィラプトル類に似ている。遠位手根骨が癒合した半月状骨がみられる。骨盤は進化したテリジノサウルス類よりは前後に長く原始的であるが、腸骨の前方の突起が側方に拡がっており、また腹側でカギ状に曲がっている。ファルカリウスでは恥骨は後方に回転しておらず、座骨の閉鎖孔突起と接していない。ファルカリウスの足はベイピャオサウルスやオヴィラプトル類と同様に3本指で支える形であり、進化したテリジノサウルス類の4本指とは異なる。

 全身復元骨格のキャストが販売されており、古竜脚類に似た不思議な姿である。化石は関節状態とは書いていないのでばらばらの状態らしいが、10個体以上の多数の重複した骨要素から復元されたようである。特に四肢の骨はassociatedということなので位置関係が保たれていたなどの理由で、同一個体としてプロポーションが推定できたらしい。

参考文献
Kirkland, J. I., Zanno, L. E., Sampson, S. D., Clark, J. M. and DeBlieux, D. D. (2005) A primitive therizinosauroid dinosaur from the Early Cretaceous of Utah. Nature 435, 84-87.

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