『夜間飛行』

また靴を履いて出かけるのは何故だろう
未開の地なんて、もう何処にもないのに

『小津安二郎 美食三昧 関東編』 貴田 庄

2011-06-19 | Books(本):愛すべき活字

『小津安二郎 美食三昧 関東編』
貴田 庄(日:1947-)
2011年・朝日文庫


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お土産を希望する人には、二千円から、気の利いた朱色の缶に入れてもらい、おでんの持ち帰りができる。

また、おでんや焼き魚などの千円の定食コースもある。

その他に、懐具合の温かい人には、刺身やコノワタなどの小料理屋のメニューも用意されているので、酒飲みの人は、お多幸で、まさしく至福の時間を過ごせる。

店内は清潔で、働いている人の動きもテキパキとして、実に気持ちのよいおでん屋だ。

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名店だから残るのか、残るから名店なのか。
(あ、我ながら名文句)


生涯独身、食事はほぼ外食だったという小津安二郎監督。

彼が愛した、「東京」、「横浜」、「鎌倉」の名店を、小津が残した「グルメ手帖」をベースに追いかける。


なんと言っても、本書の素晴らしいところは2011年の書き下ろしであり、2010年の取材を元に書かれていることだろう。

昭和に書かれた食の本をよく読むんだけど、名店といえど、やはり時代の波にさらされ、いつしか姿を消している場合が少なくない。


でも、この本に載っている店は、半世紀前に小津が足しげく通った店にも関わらず、現時点で潰れているお店が1軒もないんだから。

(北鎌倉の『好々亭』だけは取材時点で閉店しているが、敢えて掲載されている)



しかも、そんなにハードルの高い店ばかりではなく、行ったことある店が沢山載ってて親しみやすい。

うちから徒歩5分の店もある・・・。


貴田さんの文章が長すぎず短すぎず、丁度良いので、次々とページをめくってしまう。


文章なんて、くだらなければくだらないほど、長ければ長いほど良い!

・・・という俺の誤認識を、そっと嗜めるかのやうだ。


あと、表紙もかわいい。


■YOUはShock(食)!!
『壇流クッキング』 壇一雄 (1975)
『土を喰う日々』 水上勉  (1978)
『よい匂いのする一夜』 池波正太郎 (1981) 
『喰いたい放題』 色川武大 (1984) 
『酒食生活』 山口瞳 (2002)
『そうざい料理帖 巻二』 池波正太郎 (2004) 
『食の王様』 開高健 (2006) 
『やさしさグルグル』 行正り香(2008) 
『ちびちびごくごくお酒のはなし』 伊藤まさこ(2009) 
『ごはんのことばかり100話とちょっと』 よしもとばなな (2009)
『小津安二郎 美食三昧 関東編』 貴田庄 (2011)
『サンドウィッチは銀座で』 平松洋子 (2011) 
『ひと皿の小説案内』ディナ・フリード (2015) 


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小津安二郎美食三昧 関東編 (朝日文庫)
貴田 庄
朝日新聞出版

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