<本題:少女叙情情報学>
今回はいきなり本題から。
おかげさまで二年ぶりとなる新作【M|C|L|D】の幕も無事開き、
初日から三日目までを大きなトラブルもなく終えることができました。
ご来場下さったお客様への感謝にたえません。
さて、本番も始まり、いよいよ千秋楽を前にして、なぜ今更こんな
記事を書いているのか?ですが、公演の前知識としては必要ない、
だけどどこかに書き残してはおきたいこの作品についての話が、
あと一つ残っているからです。
それは(ひどく)私的で、同時に(それなりに)ネタバレを含む内容でも
あるかと思いますので、観賞後の理解の助けにしていただくか、
あるいはご理解の上でご来場前にお読み頂ければありがたいです。
さて、今回の作品についての感想をちらほらいただく(ありがたいことです)中で、
とても多く聞かれるのが、「(神田川は)童貞力が高い」と
「(神田川は)新海誠監督のことが好きすぎる」の二つです。
前者は褒め言葉としてもぜひとも放っておいてほしいのですが(;;)、
後者についてはとても正しい理解だと思いますし、同時に少し、
説明…というか言い訳が必要かなと思います。
そしてそれは、この作品の中核の部分とも関係の深いことです。
結論から言えば、今回の作品【M|C|L|D】は、私の過去作…というか、
【私自身】のセルフオマージュになっています。
私の過去に上演した戯曲、商業でさせて頂いたお仕事、そしてごくごく個人的な【記憶】を、
自主的に断片化し・反復し・改変し・重畳する。
その仕草の目的語に、私は私自身を選びました。
たとえば、今回の公演【M|C|L|D】のうち一編【少女叙情情報学】という作品のタイトルは、
以前、(私や、出演者のラリスズキ氏と同じく)ドミュマンとして活躍する
湯ノ浦ユウ氏の発行した同人誌、『ユニゾン』に寄稿させて頂いた
「少女叙情情報学【序論】」という粋雅堂の過去公演に関する
セルフディスコグラフィーのタイトルから採っています。
単にこの早口言葉みたいなこのタイトルが気に入ったというのもあるのですが、
「セルフディスコグラフィー」というこの文章の形式が、
なんだか【記憶】と【記録】という今回の作品のテーマにちょうどいいと感じたのです。
同様に、今回3篇からなる連作断片作品としたことは、
09年に上演した新海誠監督作品のオマージュ、【Par/sec】のセルフオマージュです。
【Par/sec】は連作短編で、【M|C|L|D】は”連作断片”なので、微妙に違いますが、
作品形式から設定まで、今回の作品の根幹はこの作品の使い回しです。
「だから新海誠監督っぽくってもとうぜんなんだよ!><。」
…と言いたくてこの文章を書いたわけですが、そもそもにして、近しい方々にとっては
私が新海監督の大ファンであることは周知の事実であるので、言っても無駄でしたね…はぁ。
…それから、(ご覧頂いた方にはわかるかとも思いますが)今回の作品にはもう一篇、
4番目の作品が存在しています。
【106.】と題されたこの作品は特に作中語られることもなく、
舞台上の物語とは別のレイヤーで通奏してゆきます。
この作品は…というか、明らかに「作品」と呼んではいけない何かは、
私のある「思い出」たちをもとに、ある有名作品のパスティーシュとして作られています。
あまりにも個人的な、ありふれた、ちょっとした、悲劇を、舞台の上に載せることは躊躇われますが、
それなしに、この【記憶】と【記録】の物語は完成し得ないと思い、隠れた作品として加えました。
ひそやかに、お楽しみいただければ幸いです。
そして最後に、なぜ私が「セルフオマージュ」なんて作家にとって悪魔の樹の実みたいなものに
手を付けたのかについての、状況的な説明を。
公演フライヤーやサイトをよくお読み頂いた方はお気づきかもしれませんが、
今回の公演の専用ロゴをイラストと同じくへびつかいさんに作って頂きました。
(この記事の冒頭に掲載した画像です)
このロゴに意味ありげに書かれた「SUIGADOU STAND ALONE」の文字が
気になった方もいるのではないかなと思います(いますよね??一人くらいは…)
このロゴの文字列は攻殻機動隊の捩りっぽいカッコつけではなくて(それもありますが)、
文字通り、今回の公演が私一人によって作られるもの、という意味で入れてもらったものです。
「自分自身だけで作る演劇」を、どう定義するかと考えた時に、
演出家が(ときに)俳優の固有性を解体・再構成して作品を舞台に置くように、
今回その対象になりうる唯一の存在である自分にその処理を施したのです。
今回、過去の参加者を誰も含まないことに、
別に決定的かつ悲劇的な理由が何かしらあるわけではないのですが、
粋雅堂が10年近くの歴史を曲がりなりにも重ねる中で、
関わってくれた人たちの状況も当然、変化してきました。
何人かは結婚をし、子供を育てています(本当に素晴らしいことです)
何人かは職業を変え、何人かはいまさら私がお誘いしにくいほど成功しました。
そんな中で、この2年の間に、ぽっかりと空いた時間を持っているのが、
私一人だった、というのが正直なところです。
最初(昨年のQJ誌に【C|M】として告知を載せた頃)は完全にたった一人で
公演を作る気でいたのですが、さすがに無理だったので、
感覚の鋭い2人の仲間に、出演者として参加をお願いしました。
私自身の解体と再構成がどの程度うまく行ったかは、怪しい部分もありますが、
(というか、それを完全に行うことはひとにはできないのですが)
結果として、この試みは面白い境界線の上に立つ作品になったと思います。
直前の宣伝で恐縮ですが、もしよろしければ、その最後の姿を見届けに来てくださいませ。
ご来場、お待ちしております。
――――――――――公演詳細――――――――――
劇団粋雅堂【M|C|L|D】
〔公演日時〕2014年8月22日(金)~25日(月)
22日(金)19時開演
23日(土)14時/19時開演
24日(日)14時/19時開演
25日(月)19時開演
(開場は開演の30分前)
〔料金〕前売1500円/当日2000円(中高生無料)
〔会場〕新宿眼科画廊 スペース地下
(東京都新宿区新宿5-18-11 03-5285-8822)
〔ご予約〕http://bit.ly/X7fpBY
suigadou@gmail.com(劇団)
〔公演サイト〕http://suigadou.tumblr.com/
〔イラスト〕へびつかい
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今回はいきなり本題から。
おかげさまで二年ぶりとなる新作【M|C|L|D】の幕も無事開き、
初日から三日目までを大きなトラブルもなく終えることができました。
ご来場下さったお客様への感謝にたえません。
さて、本番も始まり、いよいよ千秋楽を前にして、なぜ今更こんな
記事を書いているのか?ですが、公演の前知識としては必要ない、
だけどどこかに書き残してはおきたいこの作品についての話が、
あと一つ残っているからです。
それは(ひどく)私的で、同時に(それなりに)ネタバレを含む内容でも
あるかと思いますので、観賞後の理解の助けにしていただくか、
あるいはご理解の上でご来場前にお読み頂ければありがたいです。
さて、今回の作品についての感想をちらほらいただく(ありがたいことです)中で、
とても多く聞かれるのが、「(神田川は)童貞力が高い」と
「(神田川は)新海誠監督のことが好きすぎる」の二つです。
前者は褒め言葉としてもぜひとも放っておいてほしいのですが(;;)、
後者についてはとても正しい理解だと思いますし、同時に少し、
説明…というか言い訳が必要かなと思います。
そしてそれは、この作品の中核の部分とも関係の深いことです。
結論から言えば、今回の作品【M|C|L|D】は、私の過去作…というか、
【私自身】のセルフオマージュになっています。
私の過去に上演した戯曲、商業でさせて頂いたお仕事、そしてごくごく個人的な【記憶】を、
自主的に断片化し・反復し・改変し・重畳する。
その仕草の目的語に、私は私自身を選びました。
たとえば、今回の公演【M|C|L|D】のうち一編【少女叙情情報学】という作品のタイトルは、
以前、(私や、出演者のラリスズキ氏と同じく)ドミュマンとして活躍する
湯ノ浦ユウ氏の発行した同人誌、『ユニゾン』に寄稿させて頂いた
「少女叙情情報学【序論】」という粋雅堂の過去公演に関する
セルフディスコグラフィーのタイトルから採っています。
単にこの早口言葉みたいなこのタイトルが気に入ったというのもあるのですが、
「セルフディスコグラフィー」というこの文章の形式が、
なんだか【記憶】と【記録】という今回の作品のテーマにちょうどいいと感じたのです。
同様に、今回3篇からなる連作断片作品としたことは、
09年に上演した新海誠監督作品のオマージュ、【Par/sec】のセルフオマージュです。
【Par/sec】は連作短編で、【M|C|L|D】は”連作断片”なので、微妙に違いますが、
作品形式から設定まで、今回の作品の根幹はこの作品の使い回しです。
「だから新海誠監督っぽくってもとうぜんなんだよ!><。」
…と言いたくてこの文章を書いたわけですが、そもそもにして、近しい方々にとっては
私が新海監督の大ファンであることは周知の事実であるので、言っても無駄でしたね…はぁ。
…それから、(ご覧頂いた方にはわかるかとも思いますが)今回の作品にはもう一篇、
4番目の作品が存在しています。
【106.】と題されたこの作品は特に作中語られることもなく、
舞台上の物語とは別のレイヤーで通奏してゆきます。
この作品は…というか、明らかに「作品」と呼んではいけない何かは、
私のある「思い出」たちをもとに、ある有名作品のパスティーシュとして作られています。
あまりにも個人的な、ありふれた、ちょっとした、悲劇を、舞台の上に載せることは躊躇われますが、
それなしに、この【記憶】と【記録】の物語は完成し得ないと思い、隠れた作品として加えました。
ひそやかに、お楽しみいただければ幸いです。
そして最後に、なぜ私が「セルフオマージュ」なんて作家にとって悪魔の樹の実みたいなものに
手を付けたのかについての、状況的な説明を。
公演フライヤーやサイトをよくお読み頂いた方はお気づきかもしれませんが、
今回の公演の専用ロゴをイラストと同じくへびつかいさんに作って頂きました。
(この記事の冒頭に掲載した画像です)
このロゴに意味ありげに書かれた「SUIGADOU STAND ALONE」の文字が
気になった方もいるのではないかなと思います(いますよね??一人くらいは…)
このロゴの文字列は攻殻機動隊の捩りっぽいカッコつけではなくて(それもありますが)、
文字通り、今回の公演が私一人によって作られるもの、という意味で入れてもらったものです。
「自分自身だけで作る演劇」を、どう定義するかと考えた時に、
演出家が(ときに)俳優の固有性を解体・再構成して作品を舞台に置くように、
今回その対象になりうる唯一の存在である自分にその処理を施したのです。
今回、過去の参加者を誰も含まないことに、
別に決定的かつ悲劇的な理由が何かしらあるわけではないのですが、
粋雅堂が10年近くの歴史を曲がりなりにも重ねる中で、
関わってくれた人たちの状況も当然、変化してきました。
何人かは結婚をし、子供を育てています(本当に素晴らしいことです)
何人かは職業を変え、何人かはいまさら私がお誘いしにくいほど成功しました。
そんな中で、この2年の間に、ぽっかりと空いた時間を持っているのが、
私一人だった、というのが正直なところです。
最初(昨年のQJ誌に【C|M】として告知を載せた頃)は完全にたった一人で
公演を作る気でいたのですが、さすがに無理だったので、
感覚の鋭い2人の仲間に、出演者として参加をお願いしました。
私自身の解体と再構成がどの程度うまく行ったかは、怪しい部分もありますが、
(というか、それを完全に行うことはひとにはできないのですが)
結果として、この試みは面白い境界線の上に立つ作品になったと思います。
直前の宣伝で恐縮ですが、もしよろしければ、その最後の姿を見届けに来てくださいませ。
ご来場、お待ちしております。
――――――――――公演詳細――――――――――
劇団粋雅堂【M|C|L|D】
〔公演日時〕2014年8月22日(金)~25日(月)
22日(金)19時開演
23日(土)14時/19時開演
24日(日)14時/19時開演
25日(月)19時開演
(開場は開演の30分前)
〔料金〕前売1500円/当日2000円(中高生無料)
〔会場〕新宿眼科画廊 スペース地下
(東京都新宿区新宿5-18-11 03-5285-8822)
〔ご予約〕http://bit.ly/X7fpBY
suigadou@gmail.com(劇団)
〔公演サイト〕http://suigadou.tumblr.com/
〔イラスト〕へびつかい
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