山崎大輔――同じクラスの生徒だ。
特別目立った存在でもなく、聖花も会えば、挨拶くらいする程度の仲だ。
「……ごめん」
ややあって、山崎が呟いた。「覗き見するつもりは、なかった」
視線を漂わせる。筆記用具が握られている様子を見ると、どうやら嘘ではないらしい。
「……いいよ、大丈夫。気にしていないから」
聖花は苦笑した。無理に笑顔を作ろうとしたが失敗したのだ。
山崎は何も言わずに自分の机に向かった。立てかけていたバッグに物をしまう。帰るのだろう。時計を見ればすでに五時を回っている。
「なにかあったんだろ」
突然、山崎が言った。手を休めることなく、視線も合わせずに。
「別に……ちょっと考え事をしていただけ」
嘘ではない。聖花はそう、心の中で言い訳をした。
だが、山崎の言葉は受け流すことができなかった。
「夢の中のでなにがあった?」
反射的に後ずさった。椅子が音を立てて倒れた。だが、聖花に気にしている余裕はなかった
山崎は聖花を見た。その表情は嘲るものではなく、感情を読み取ることができないほど白い。
「……誰に聞いたか知らないけど、忘れてよ。
どうせわたしの妄想なんだから」
倒した椅子を直す。手は震えていた。
「……あんたらはもう少し、周りに気を使ったほうがいい。会話が周りに聞こえているぞ」
肩をすくめる山崎。「それに、俺は妄想だとは思わない」
ゆっくりと、歩き出す。まっすぐに、聖花の元に。
そして、次に放たれた言葉は、聖花にとって意外なものだった。
「話をもっと詳しく教えてくれ。たぶん、力になれると思う」
特別目立った存在でもなく、聖花も会えば、挨拶くらいする程度の仲だ。
「……ごめん」
ややあって、山崎が呟いた。「覗き見するつもりは、なかった」
視線を漂わせる。筆記用具が握られている様子を見ると、どうやら嘘ではないらしい。
「……いいよ、大丈夫。気にしていないから」
聖花は苦笑した。無理に笑顔を作ろうとしたが失敗したのだ。
山崎は何も言わずに自分の机に向かった。立てかけていたバッグに物をしまう。帰るのだろう。時計を見ればすでに五時を回っている。
「なにかあったんだろ」
突然、山崎が言った。手を休めることなく、視線も合わせずに。
「別に……ちょっと考え事をしていただけ」
嘘ではない。聖花はそう、心の中で言い訳をした。
だが、山崎の言葉は受け流すことができなかった。
「夢の中のでなにがあった?」
反射的に後ずさった。椅子が音を立てて倒れた。だが、聖花に気にしている余裕はなかった
山崎は聖花を見た。その表情は嘲るものではなく、感情を読み取ることができないほど白い。
「……誰に聞いたか知らないけど、忘れてよ。
どうせわたしの妄想なんだから」
倒した椅子を直す。手は震えていた。
「……あんたらはもう少し、周りに気を使ったほうがいい。会話が周りに聞こえているぞ」
肩をすくめる山崎。「それに、俺は妄想だとは思わない」
ゆっくりと、歩き出す。まっすぐに、聖花の元に。
そして、次に放たれた言葉は、聖花にとって意外なものだった。
「話をもっと詳しく教えてくれ。たぶん、力になれると思う」