goo

プレゼンの「核」のコツは「あるあるを集めて、否定する」

『世界No.1プレゼン術』より 1人歩きするプレゼンの「核」の作り方

核作りでは「常にアンテナを立てておくこと」がとても大事です。

とはいえ、もう少し具体的なコツもあるので、ここではとっておきの方法を伝授しましょう。

それは『あるあるを集めて、否定する』という方法です。

プレゼンを聴いた人に感動や感心をしてもらうには有用性や意外性が必要です。あなたのプレゼンを聴いて「それって当たり前だよね」と思われるようではやはり価値が低いわけです。

そこで最初にやるべきは、自分かプレゼンするジャンル、領域、テーマにおける『あるある』をひたすら収集することです。

実際のケースを挙げながら、順を追って説明しましょう。

以前、私のところに「二〇代の若者向けに、グローバル人材になるための心構え」というテーマで話して欲しいというオファーが届きました。

とても大事な話ではありますが、よくあるテーマと言えばその通りです。

そこでまず私は「グローバル人材になるために必要なことは?」というテーマでよく聴く『あるある』を挙げてみました。

 ・語学が堪能

 ・自己主張ができる

 ・教養を持っている

 ・日本の文化や政治について語れる

これらの要素はたしかに大切です。しかし、これらを強く訴えたところで「それって当たり前だよね」「よく言われている話だよね」と感じられてしまうのがオチでしょう。

もっと別の角度からグローバル人材についてアプローチしたいと思い、私は次にこんな問いを立ててみました。

グローバル人材になれない人の「仕事の仕方」「口癖」ってどんなものだろう?

つまり「グローバル人材になれない人のあるある」を集めようと考えたのです。すると、次のような場面やフレーズが次々と浮かび上がってきました。

 ・いつもダラダラと残業している

 ・会議に遅れてきたり、時間が過ぎても延々と会議をしている

 ・前もって共有すればいい情報を、わざわざ会議で読み上げている

 ・自分を成長させるためのチャレンジをしない

 ・「それについては後日返答します」と先延ばしにする

 ・「ちょっと前向きに検討してみます」とあいまいな返事をする

 ・「それは上司に確認してみます」と言って、話が前に進まない

こうした仕事のやり方やフレーズを連呼している人は少なくともグローバル人材になれそうにありません。

このようにいろんな『あるある』を集めたら、今度はそれを否定していきます。

ここに挙げた状況やフレーズにもっとも欠けている要素とは何か? 一番の問題って何だろう?

そうやって共通項を探しながら深掘りしていくことで、私は「時間の価値をきちんと認識していないんだ」ということに気づきました。自分自身の時間はもちろん、相手の時間も十分に尊重できていない。時間の価値を理解していないから、日々漫然と過ごしてしまい、自分を成長させるためのチャレンジもできない。すべてを先延ばしにしてしまっている。

グローバル人材になれない人=時間の意識が低い

これを私のプレゼンの骨子に据えようと考えたのです。英語を学ぶとか、教養を身につけるという以前に「時間に対する意識」を変えることこそ、グローバル人材になるための大事な一歩なのではないだろうか。

そう感じた私は次のような核を作りました。

 時間は有限だと意識し続けること

私のプレゼンを聴く若い人たちに、この意識だけは絶対に持ち帰ってもらおうと決めたのです。

「時間は有限」という意識を持てるようになれば、「明日やればいいや」という先延ばしの発想はなくなります。「今、自分にとって一番にやるべきことは何か」という発想で物事を考え、仕事をするようになるでしょう。そんな日々を過ごしていれば、確実に成長スピードは速くなりますし、目指すべきグローバル人材になっていける。

そんな彼ら、彼女らの(ッピーな未来をイメージして「時間は有限だと意識し続けること」という核を私は選んだのです。

あなたがもっとも否定したい『あるある』とは何か?

さて、あなたがプレゼンするテーマ、領域における『あるある』とはいったい何でしょうか。質の高いプレゼンターになるためには、自分の体験や日常の中で起こる『あるある』をストックしておくことはとても大切です。

そして、あなたがプレゼンをする際にもっとも否定したい

そこに核を作っていくヒントが必ずあるはずです。

『あるある』とは何でしょうか。

私が実施したITプロ向けのプレゼンでは「たいへんな仕事なのに、トラブルがなくて当たり前だと思われている」「感謝されない・報われない」「白分たちが何のために仕事をしているのかを見失いがちになる」という『あるある』を集めました。そして、それを否定するために「クリエイトトゥモロー」という核を作り、「あなたたちは明日を作る仕事をしているんだ」というメッセージを発しました。

あるいは、ITセキュリティに関するプレゼンでは「自分たちのネットワークに侵入されないことが大事」という発想そのものが『あるある』でした。しかし、セキュリティで大事なのは「侵入されないこと」ではなく、「侵入されることを前提にして、最悪の事態が起こらないようにする」という考え方です。その『あるある』を否定するために「想定外を前提にして、最悪の事態を想定する」という核を作ったのです。

『あるある』を集めて、それを否定する。

とても有効でありながら、簡単な方法なのでぜひ試してみてください。聴く人の反応は必ず変わってくるはずです。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

紙の世界は所有の欲望で保持されている

スケジュール入力

 前日に予定を入れるようにしたけど、なかなか入らないし、通知がダブってきます。グーグルを読めて、ヤフーに統一させます。インターフェースが気に入っています。

 スケジュールはこまめに使っているけど、何に使うかは決まっていません。使いようがないかもしれない。

最終目的から思考する

 物理的に存在することは最終目的からすると、あまり見えない。

 移動からすると、移動手段を持ち運ぶ必要はまるでない。

紙の世界は所有の欲望で保持されている

 本という紙の世界がなくならないと言うけど、それは所有したいからでしょう。所有することがなくなれば、CDのように紙はなくなります。それは車も一緒です。移動することよりも所有することが優先されている。

 メーカーは所有を主張します。本来、移動するためにできたのであれば、手段はいくらでもあります。

 本も伝えたいためにできたんです。伝えることからすると、物理的媒体に意味はない。人間と一緒です。車と本と人間のアナロジー。

他者の世界に中に居る

 他者の世界を観察するのに、他者の中に居ないといけないのか。もっと上から見ればいい。そういうことじゃないんだろうね。

政治体制は家族をターゲットにする

 共産主義は労働者とか農民を対象にした。ベースは彼らを含む家族です。共産主義は家族を狙います。民主主義も全体主義も同様です。選挙とはそういうものです。

 次のフェーズは家族が分化して、個人が主体になります。その時の政治形態がどうなるか。不安定の中に安定をどうもってくるのか。

夕食がウナギの実態

 夕食は珍しく、うなぎだった。もとが風邪だったから、奥さんは奮発したのでしょう。メグリアで1280円の一匹を三人で分けたら、細かくするしかないか? その分、タレが掛かっていた。それにしても、やつれたウナギ。

グーグルのDocument

 手順は今一つ分からないけど、グーグルのDocumentを拾い上げた。これなら、雑記帳も読める。本棚システムもこれなら読める。スマホとICレコーダーだけでできてしまった。

美唯空間に距離を入れ込む

 未唯空間第4レベルの表は全体に対しての距離を表すものにしていく

 読むためのオリジナルは本棚システムに置いておきます。そのつもりでもう一回作らないといけない。ブログはこれらを行うのに必要なものと位置付ける。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

テロを止められない6つの理由のうちの3つ

『ぼくは13歳、任務は自爆テロ』より テロを止められない6つの理由 ⇒ 理由④ グローバル・ジハードでテロがネットワーク化しているから 理由⑤ 国際社会の介入が新たなテロを引き起こすから 理由⑥ 武力だけで抑えることはできないから

理由① これまでの戦争のルールが通用しないから

 ぼくたちが学校の歴史の授業で習ったように、人類は2度の世界大戦を体験することで、「戦争」の怖さや残酷さを学んできました。

 2度の世界大戦の前の戦争は、ドイツ対フランスのように国同士の争いで、国家の正規軍が正面で戦っていました。しかし、世界大戦になると各国は国家をあげた総力戦を戦うことになり、国民から戦費を集め、国民皆兵制を強いて国民を戦場に駆り出しました。非戦闘員にも数えきれないほどの死傷者が出ました。

 このような歴史的な体験から、戦争をする際にも、戦時国際法や国際人道法などといった最低限守らなければならない国際ルールが生まれました。たとえば、一般市民(非戦闘員)を攻撃してはいけない、捕虜を虐待してはいけない、学校や病院などを無差別に攻撃をしてはいけないなどです。

 しかし、第2次世界大戦後に出現した冷戦とその終結以降、世界を1つにするという「グローバリゼーション」のひずみが「新しい戦争」を生み出しました。この戦争は、2つの世界大戦とはちがう新しいタイプの戦争で、国家対国家の争いではなく、民族や氏族の武装勢力、テロ組織の武装部隊など非国家主体の武装組織が武力を行使する戦いです。従来とはちがうこのタイプの戦いは、「戦争」とは呼ばず、一般的には「紛争」や「内戦」と呼ばれています。

 また、大小・実力はともかく、国家と国家という対等の関係と比較して、国家と非国家というアンバランスな関係から「非対称性の戦争」とも呼ばれています。この「新しい戦争」では、せっかく世界大戦後に決められた国際ルールがいとも簡単に破られていきました。民族浄化や大量虐殺、無差別テロといった非人道的な手段が取られ、無実の民間人の犠牲が増加したのです。

 また、「新しい戦争」はこれまでの戦争よりも長期化する傾向があります。従来の戦争では、どちらか一方の勝利、敗北の受け入れで戦争が終わるケースが大半でしたが、「新しい戦争」では、紛争当事者の数があまりに多く、だれかが負けたからといって、内戦が終わるわけではありません。

 直接の紛争当事者も多数で、その利害関係も複雑に絡み合っています。その紛争当事者の背後にいる途上国に権益を持つ大国の存在もあって、紛争の構造はきわめて複雑で多層性を持っています。日本の戦国時代のように「OOの合戦」で勝敗が決まり、戦争が終わるというケースはないのです。また、戦争の影響は一国だけにとどまらず、周辺国や世界にも大きな影響を及ぼします。アル・シャバーブといった、テロ組織との戦いもまさしくこのような「新しい戦争」の1つなのです。

 こうした「新しい戦争」の定義に対してはいくつかの反論もありますが、「新しい戦争」という新たな名称が提唱された理由の1つには、従来のような戦争に対する考え方では現代の紛争に対処することができないという現実があります。これまでの対話を通じた和平プロセス構築といった紛争解決の手法が機能しないうえ、新しい戦争が発生している国だけではその紛争に対処することも困難で、かといって国際社会が放置しておくと多くの市民が犠牲になってしまいます。

 「新しい戦争」の定義は、グローバルな時代において、世界の国ぐにで協力し、事態を正確に分析し、個々の紛争に有効に対処していこうというスタンスに立脚したもので、その決意を示す重要な提言であると考えています。国家という枠組みを超え、一般市民を突如として犠牲者にするテロの防止は、それこそ世界中で協力して取り組まないといけない緊急性の高い課題なのです。

理由② テロリストになる背景やテロへの考え方が多様化したから

 テロ組織とは、文字どおりテロ行為をおこなう組織ですが、その目的や性格は多種多様です。たとえば、あるテロ組織は領土の奪還や独立を目的としていますし、ある政治的、宗教的、民族的集団がより大きな集団から分離・独立しようとするとき、圧倒的な力の差を乗り超える手段としてテロ行為に訴えることもあります。またある政治的組織は現政権をひっくり返すために戦い、ある組織は思想や宗教的な主張を達成するためにテロ行為をおこなうこともあります。

 ひとくちにテロ組織といってもさまざまな組織がありますが、近年とくに注目されているイスラム教を背景とするテロ組織に加入する若者の多くは、経済的困窮や社会・世界への怒り、イスラム教徒としてのジハードヘの参加意識が大きな要因になっています。ソマリアを拠点とするアル・シャバーブでも同じ傾向が見てとれます。

 ただし、イスラム系のテロリストというと、どことなく「貧乏なうえに教育にも恵まれなかった人」と一般的に認識されていますが、実際のテロリストはもっと多様でさまざまな背景を持っています。「裕福な家庭の生まれで、高学歴の人」もいて、テロ組織の幹部クラスになるとこのような出身階層の人が多いのです。

 たとえば、アメリカ同時多発テロ(9・11)の実行犯であるモハメド・アタは、エジプトの裕福な家庭に生まれ、大学も優秀な成績で卒業し、ドイツヘの留学や国際交流プログラムヘの参加もしていました。政治や世界情勢に敏感であり、世界の現状をしっかりと分析したうえで、世界と戦う必要性を痛感しました。その過程で暴力的過激主義に出合って共感し、航空機の操縦方法をマスターして、ハイジャックした飛行機で世界貿易センタービルに突撃したのです。熟考の結果のテロ行動の選択といわざるを得ません。

 その一方で、テロ組織に命令されたり脅されたり、あるいはお金に釣られて組織に加わった人もいます。あるいは、生き延びるためにテロリストになった人も多くいます。

 また、テロリストとしての過激さの度合いにも幅があります・残虐な殺し方や拷問などに反対しているテロリストもいますし、そもそも無実の人びとを殺すのは良くないと考えるテロリストだっています。その一方で、とにかく残虐な事件を起こして世界から注目を集めるべきだと考え、武力闘争で世界をイスラム化することを目指すグループも存在します。

 ひとくちに「テロリスト」と呼ばれる人びとにもかなりの多様性があり、どうしてテロリストになったのか? どんなテロリストなのか? の問いに共通する答えは存在しません。不確かなイメージで対応策を考えても、ときに逆効果を生み出さないともかぎりません。彼らの多種多様さに則して対応をしなければ効果は期待できないのです。

理由③ テロが手段としてつかわれるから

 そもそも、テロ組織は、関係のない人びとを巻き込む非人道的なテロをなぜおこなうのでしょうか。その理由は大きく分けて2つあります。

 1つ目は、テロリズムという単語の語源であるテラー(Terror:恐怖)が示すとおり、強烈な威嚇により、人びとに不安や恐怖を植えつけるためです・社会の注目を集め、自分たちの主義主張を世のなかに伝え乱という目的があります。また、甚大な被乱を生むことによって、社会を混乱させることを目的にしています。

 テロ攻撃でもっとも多くつかわれる手段の1つに自爆テロがありますが、「意思を持った爆弾」の殺傷能力は非常に高く、広範囲にわたって大きなダメージを与えることができます。たとえ、爆薬の量が少なくても、駅やコンサートホールなど大勢の人がいる場所で爆発させれば、大きな被害を出すことができます。たった1人の行為でも世界を震撚させることができるほど、テロ行為は強烈なのです。

 また、テロは恐怖だけではない影響を世界中の人びとに与えています。最近フランスやアメリカ、イギリスなどの先進諸国で、テロ組織の主義主張に共感した人がテロを実行するケースが頻発しています。ホームグロウン・テロリズムといわれ、先進諸国にいる自分がなにかやらなくてはと考えていくのです。

 2つ目は、「非対称的戦争」を戦うための手段としてテロ行為を利用していることです。一方の力がもう一方よりもさまざまな側面で圧倒的に大きいので、弱者はあらゆる手段をとっても許されると考えるのです。

 たとえば、中東やアフリカでは、反政府武装勢力に対して、国際社会は空爆をおこないます。武装勢力の拠点を破壊する、リーダーの殺害を目的としたピンポイント攻撃などと弁明していますが、空爆される側からしたらたまったものではありません。空からの攻撃は防御しようがありません。「誤胤」といって片付けられてしまう市民の被害も、「非対称的戦争」を戦う武装勢力への支持を強固にします。

 テロは単に個人の狂気から生まれる行為ではありません。テロ組織が緻密な戦略設計をしたうえでテロを指令しているのです。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

イサカ・カーシェアリング

『住むたい街を自分でつくる』より 暮らしやすい街--賢い土地利用と新しい交通手段

私たちの大きな助けになっているのは「イサカ・カーシェア」だ。この革新的なカーシェアリングというプロジェクトは、毎日二四時間いつでも、メンバーに車を貸すというシステムである。

北米には、成功しているカーシェアが五〇ほどあり、三二万人もの人が七五〇〇台の車をシェアしている。イサカのもそのうちの一つである。このイサカのカーシェアは、今のところ、人口が三万人というもっとも人口の少ない都市で成功している例である。

カーシェアリングは、輸送に関する、まったく新しい考え方の始まりかもしれない。車社会の米国では、どのような車を所有するかが個人の重要なアイデンティティーの一つになっている。カーシェアリングは、個別の車に対する所有欲を取りはらってくれる。そして、車に乗るのは、ある場所からもう一つの場所に行くのがそもそもの目的だということに、気づかせてくれる。

ロサンゼルスのあるジャーナリストは、カーシェアリングがさかんになっていることについて、こう述べている。「車そのものが重要ではないことに人々は気づいた。目的地に着くための手段にすぎない。輸送のための道具であり、インターネットによって可能になったシステムの集合体だ」と。

カーシェアリングは利用方法も容易だ。メンバーとして参加したら、街のあちこちに駐車してある車をネット上で選び、電子キーを使って車にアクセスすればよい。新しい、手入れの行き届いた車を、好きなところどこにでも運転して行くことができる。時間までにもとの場所にもどせばいいだけだ。 私は愛車の「タンゴ」を気に入っていたが、新しくて、信頼でき、いつもきれいで、ガソリンも満タンになっている車を運転するのは楽しい、ということを認めざるを得なかった。

私たちは今では、カーシェアを当たり前のように利用しているが、じつはイサカのカーシェアリングには、長い準備期間が必要だった。しかし、イサカの輸送部門でもっとも成功したプロジェクトだと言えるだろう。

イサカ・カーシェアは、もともとはイサカ大学とエコビレッジ・イサカが補助金を得て始めたプロジェクトから生まれたものだ。このプロジェクトの担当者、ダン・ロースが、二〇〇六年一月にカーシェア・サミットを開いた。このサミットには郡や市、コーネル大学およびイサカ大学から、交通や輸送に関する専門家が参加しただけでなく、イサカ市長も顔を出してくれた。

コロラド州ボルダーとサンフランシスコでは、それぞれカーシェア・プログラムが成功しているが、この二都市から担当者が参加し、そこに集った一〇〇人以上の人々に対して勇気づけるようなスピーチをした。その場は、同じような思いをもった者同士の高揚感で盛り上がった。彼らができるなら、自分たちだってできるはずだと。

イサカの住人たちはほかのプロジェクトと同様に、非営利で地元主導のカーシェアのサービスを始めたいと考えていた。カーシェアをしているほとんどの都市では、当時カーシェアをビジネスにしていた二つの会社、フレックスカー社かジップカー社のどちらかを使っていた。だが独立的な機運が旺盛なイサカでは、カーシェアの担当者たちが州に補助金の申請をし、一七万七二〇〇ドル(約一七〇〇万円)を受け取って、独自のプログラムをスタートさせたのだ。力ーシェア・サミットが開かれた、その同じ年にである。

最初は少しずつ始めようということで、二〇〇七年二月に二台の車をエコビレッジ・イサカに用意し、これでなんとかやっていこうとした。それでうまくいくと思われたが、残念なことに、保険という問題が立ちはだかってしまった。

保険会社は複数のドライバーを相手に、どう対処していいかわからなかったのだ。関心を示してくれた保険会社もわずかに存在したが、ニューヨーク市内の混雑した道で強引に運転する夕クシー運転手にかけるのと同じような保険率を提示してきた。それでは、私たちにはとても割に合わなかった。

この企画を停止させうる、こうした問題があったにもかかわらず、スタッフも理事も代案を探しつづけた。そしてついに二〇〇八年のアースデー〔訳注‥地球環境を考える日として四月二二日に設定された記念日〕に、イサカ・カーシェアは、メンバーの募集をする準備ができたと発表した。

担当者のジェニファー・ドットソンは、勝利宣言とも言える声明を出した。保険会社が二月一四日にバレンタインのプレゼントとして、自動車保険を提供してくれたこと、それは金額的に妥当なもので、しかも一八歳からの参加が可能だと。最初のサミットから一年半で、イサカ・カーシェアが正式に発足したのだ。

今では、このプログラムはうまく機能していて、とても人気がある。六台の日産ヴァーサから始まったが、二年のうちにそれが九台に増え、そのほかにもホンダ・フィットが二台とサイオンXBが一台、トヨタ・タコマ・ピックアップトラックー台が加わった。

「あなたにとっても、地球にとってもよい」というスローガンを掲げているが、イサカ・カーシェアのサイトでは、どうしてこれが環境によいのかを、次のように説明している。

 *研究によると、カーシェアの車が一台使われることで、一五台の車が運転されずにすむ。

 *カーシェアのメンバーはよく歩き、自転車に乗り、バスを使う。

 *「車の所有という習慣をなくすこと」をしながら、カーシェアは車の使用と化石燃料の使用、温室効果ガスの放出も減らす。

 *カーシェアは交通混雑を減らし、地元の空気をきれいにする。

このほかにも、カーシェアには重要な利点がある。夫と私は、出かける際に、一回でいくつもの用事をすませようと計画を練るようになったし、車を所有しないことで、もっと生活が豊かになってきたことに気づいた。

たとえば、ダンスのイベントに行ったときのことだ。これは音楽とダンスのフェスティバルで、五〇〇〇人もの人々が集まる。せっかく車を使うならと、ふだんなかなか会う機会のない二人の友だちを誘っていっしょに行ったのだ。会場までの四時間の道のりではおしゃべりに興じ、会場ではおいしい食事をいっしょにとって、とても楽しかった。来年も誰かといっしょに車で相乗りをしていこうと、もうすでに計画しているくらいだ。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

本がしっくりこない理由

本がしっくりこない理由

 昨日借りた本はどうも手にしっくりこない。未唯空間で先が見えてきたので、他愛のない本に構っていられなくなったんでしょうか。それならそれでさっさと済ませましょう。

TRC図書館でハロウィン

 豊田市図書館でハロウィーンパーティー! これはTRCが故か? 参加費が高いし、ナースの服は持っていない。

あんこのおはぎしかない

 歩いてえぷろんまでおはぎを買いに行ったけど、奥さんのきなこ、ゴマがなかったので、似ている井村屋の水羊羹にした。奥さんから、どこが似ているのかと言われた。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

豊田市図書館の27冊

369.27『ブラインドメイク物語』視覚障害者もメイクの力で人生が変わる!

361.5『「美少女」の記号論』アンリアルな存在のリアリティ

302『世界情勢を読み解く10の視点』ベルリンの壁からメキシコの壁へ

162『宗教の誕生 宗教の起源・古代の宗教』宗教の世界史

543.5『『[決定版]原発の教科書』

235.06『ジャック・シラク』フランスの正義、そしてホロコーストの記憶のために 差別とたたかい平和を願う演説集

368.04『社会が漂白され尽くす前に--開沼博対談集--』

673.98『家族ではじめる、小さなカフェ』夫婦・親子で開業した18のカフェ

953.7『2084 世界の終わり』

627.8『MINIATURE BONSAI』The Complete Guide to Super-Mini Bonsai

333『生産性を上昇させる社会』スティグリッツのラーニング・ソサイエティ

674『最強のネーミング』すべてのビジネスは生絵から始まる

493.79『「敏感すぎて苦しい」がたちまち解決する本』HSP=敏感体質への細やかな対処法

414.8『曲がった空間の幾何学』現代の科学を支える非ユークリッド幾何とは

336.49『世界No1プレゼン術』マイクロソフト伝説マネジャーの

379.9『東大脳の育て方』日本一勉強が好きな頭脳 10才までが勝負! 親にしかできない脳育て

309.3『資本論と社会主義、そして現代』資本論150年とロシア革命100年

929.13『ライティングクラブ』

336『信頼の原則』最高の組織をつくる10のルール

493.7『私家版 精神医学事典』

019.9『朝日書評大成 2001-2008』

519.85『済みたい街を自分でつくる』--ニューヨーク州イサカの医療・食農・省エネ住宅

316.4『ぼくは13歳、任務は自爆テロ』テロと紛争をなくすために必要なこと

913.6『第三次世界大戦6 香港革命』

519.13『世界は自分一人から変えられる』貧困と環境破壊をビジネスで解決した男の物語

015『才能を引き出した情報空間』トップランナーの図書館活用術

007.64『アプリを作ろう! Visual C#入門』
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

忙しい時代ですね

エディターアプリ

 アプリにしっかり読めるエディターがない。

 アマゾンのキンドル・エディターを入れ込んだが、コンテンツとうまくつながらない。

 操作していたら、グーグルのDocumenntとつながった。エディターはフォーマットとしては十分です。読むのに適しています。さらに、グーグル・ドライブにいったん落とし込むので、他の端末とか、他者からの検索も可能になりそうです。

 グーグルドライブを本棚システムの拡張とみなせば、オープンが可能になる。

インスピレーションアプリ

 こうなると一番欲しくなるのは、インスピレーションのエディターです。日本はアウトラインの文化がないので無理だけど、アメリカなら、キッズ用も含めて使われている。アメリカのアプリを探しましょう。探すだけ探してみましょう。

忙しい時代ですね

 それにしても、忙しい時代になってきた。こんなところまで、私は望んでいなかったのに。今の流れをはっきりさせましょう。

新刊書のハゲタカ

 図書館の新刊書のハゲタカはなぜ、ゴミを漁るのか。聞いていたいものです。おかげで、おいしいところがキッチリ残っているからいいけど。

スマホを大切に

 やっと買ってもらったスマホ。壊したら、もう買わない、ということでチェーンにつなげている。

 LINEを登録したけど、つながる相手は家族も含めて、独りも居ない。LINE LIVEが見れるからいいけど。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

本を扱ったアプリ

本を扱ったアプリ

 スマホに本を扱ったアプリはないですね。狙いどころです。何しろ、4千冊のコンテンツがあるんだから、強いですね。コンテンツは新刊書からDNA抽出したもの。

 それらが私のために作られたというのはわかります。

今日のスケジュール

 今日中に項目名を確定させます。

 とりあえずは間食をやめましょう。

本とネット放送のアナロジー

 ある意味ではネット放送、つまり、YouTubeと一緒ですね。バラバラでやっていることに意味をつけることができます。

 新刊書とネット放送は一緒かもしれない。それらをまとめるのは、部品表構成です。特徴的なのは、仕様という考え方とコメントを追加するところです。

書き起こしアプリ

 スマホのグーグルアプリで音声入力で書き起こしができるか確かめてみましょう。自動書き起こしのアプリが欲しい。現在のグーグルの場合は、予測される単語が決められているので、適当ではない。

 パソコンからSDカードに「WORK」ファイルを丸ごと差し込むことで、最新の借り本リストをエクセルで見えるようになった。図書館がWiFi環境になれば、事前確認が可能になります。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

OCR化した15冊

『専門図書館の役割としごと』

 情報の編集と資料のデジタル化

 情報に付加価値をつける

  活用に値する情報
  データの発生
  データから情報へ、そして知恵へ
  課題解決のための意思決定へ
  情報部門の役割

 書誌情報の編集・加工と情報分析

  抄録の作成

   抄録の目的
   抄録の種類
   抄録作成の留意点

  解題の作成

   解題の作成方法
   解題作成の留意点

  索引・リストの作成

   索引の作成
   索引リストの利用

  パスファインダーの作成
   パスファインダー作成の目的
   パスファインダー作成の留意点

  情報分析による付加価値サービスの提供

   これまでの情報提供
   総合的な情報の提供

 社内情報データベースの構築

  データベース構築のステップ

  データベース化と付加価値

  社内情報データベース活用時の留意点

  分析・解析の対象となる情報源

  分析・解析ツール

   動向
   種類
   特徴

  解析システムを活用したビジネス戦略提案の事例

 資料のデジタル化

  資料管理方法の変遷

  デジタル化の目的

  デジタル化の意義

  デジタル化の方法

『大人のための社会科』

 信頼--社会を支えるベースライン

  「渡る世間に鬼」はいないか

  信頼の低い日本社会

  「安心社会」から脱却できない日本?

  「信頼」とは何か

  新たな信頼社会の構築へ

『コトラーのマーケティング4.0』

 デジタル経済におけるマーケティング4.0

  伝統的マーケティングからデジタル・マーケティングヘの移行

   セグメンテーションとターゲティングから、顧客コミュニティの承認へ
   ブランド・ポジショニングと差別化から、ブランドの個性や規範の明確化へ
   4Pを売り込むことから、4Cを利益につなげることヘ
   顧客サービス・プロセスから、協働による顧客ケアヘ

  伝統的マーケティングとデジタル・マーケティングの統合

  まとめ--デジタル経済の中でマーケティングを再定義する

『ゴミを資源にまちづくり』

 自立する地域経済のために

  まちづくりへの思い

  縮小する日本

  コンビニという過酷な仕事

  富裕層がつくった貧困

  地域内乗数効果

  みやまスマートエネルギー株式会社

  理念を事業にする

  循環のまちづくり研究所

『統計は暴走する』

 他人の空似

  職務怠慢の摘発・注意喚起

  例題 最近の20年間で地球大気内の二酸化炭素は増加を続けているにもかかわらず、気温の上昇は頭打ちになっていることから、二酸化炭素を温暖化の主因とする見方は論理破綻している。

  ヒント パターン認識と相関に惑わされるな

  解答と解説 積極的なデータ・マイニングと消極的なデータ・マイニング

  教訓 地球環境の変化へのマルコフ性は容易に仮定できない

『100人の数学者』

 ガロワ

 リーマン

 デデキント

 クライン

 ルベーグ

 ヴァイル(英語圏ではワイルとも)

 ポントリャーギン

『入門 貧困論』

 貧困者を生まない社会保障は実現できるか--対貧困政策の国際的動向と展望

 求められるベーシックインカム

  現金給付のイノベーション

  ロボットが働く時代の失業--「技術的失業」は加速するか?

  ベーシックインカムによる社会革命

 税制を用いた所得再分配のしくみと課題

  負の所得税

  給付付き税額控除

  参加所得などの条件付き現金給付

  BI導入実験と財源確保

 海外の公的扶助はどうなっているか

  公的扶助の国際比較

  公的扶助の「レジーム論」

  海外の公的扶助とその周辺の「厚い制度群」

 所得とケアを保障する対貧困政策の充実に向けて

  生活保護をベーシックインカムに代える議論の危うさ

  個別的必要に応じる「ケア」はどうするのか

『境界線から考える都市と建築』

 トルコにおけるシリア難民の「統合」について

 シリア難民の概要とトルコでの受け入れ態勢

 シリア難民をめぐるEUとトルコの合意

 頭脳流出を防ぐ試み

『世界はなぜ争うのか』

 アブラハムを始祖とする三つの一神教--歴史的大変動と今日の挑戦

  不動の中核と基盤

  画期的大変化

  今日の挑戦

  普遍的倫理に貢献する三宗教

『大惨事と情報隠蔽』

 ドイツ軍侵攻に備えられなかったソ連赤軍(一九四一年、ソ連)

 侵攻以前の情報隠蔽

 トヨタ大規模リコール問題(二OOO年代、ァメリカ・日本)

 アメリカのシェールガス・オイル開発

『中国はなぜ軍拡を続けるのか』

 「中華民族」という現実逃避

  普遍的価値観から遠ざかるナショナリズム

  「想像の共同体」としての「中華民族」と「漢民族」

  「中華民族」ナショナリズムと排外主義

  ナショナリズムの限界と束縛

『明るく死ぬための哲学』

 私が死ぬということ

 「死」より重要な問題はない

 「無」という名の有

 根源的否定性としての過去

 明るいニヒリズム

『私たち、戦争人間について』

 「価値観の違い」で戦うのか

 トヨタ戦争

 ヒトラーの演説

 「群衆の中の個人は原始人に似ている」

 戦場に行った哲学者たち

 戦争をどう認識するかは人それぞれ

 一筋縄ではいかない「平和」

『帝国の復興と啓蒙の未来』

 イスラーム・コンプレックス

 キリスト教の神の国とイスラームのウンマ

 スンナ派とシーア派の対立の21世紀

『拡大自殺』

 拡大自殺の根底に潜む病理

 自殺願望は反転したサディズム

 自殺と他殺を分けるもの

 内なる〝悪〟の投影

 強い復讐願望

 怒りと被害者意識

 被害者意識が復讐を正当化する
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

拡大自殺 被害者意識が復讐を正当化する

『拡大自殺』より 拡大自殺の根底に潜む病理 強い復讐願望

怒りと被害者意識

 復讐願望を抱いている人の胸中には、怒りも煮えたぎっていることが多い。第一章で引用したセネカが見抜いているように、「怒りとは、不正に対して復讐することへの欲望」だからである。

 見逃せないのは、怒りに駆られている人がしばしば「不正に害された」と思い込んでいることだ。大量殺人、自爆テロ、警官による自殺に走る人はもちろん、親子心中や介護心中に走る人も、自分だけが理不尽な目に遭っていると思い込んでいることが少なくない。

 もちろん、本書で取り上げた事例の多くが恵まれない家庭で育ったとか、予期せぬ不幸な出来事に遭遇したとか、何らかの失敗や挫折を経験したとか、経済的に困窮したとか、子育てや介護で疲れ果てたという事情を抱えており、追い詰められた末に犯行に及んだのだろうとは思う。また、筆者自身が同じ境遇に身を置いたわけではないので、その苦悩については推測するしかないという限界もある。

 ただ、中には、客観的に見ると乗り越えられないほどの大きな困難ではなく、別の選択肢もあったはずなのに、拡大自殺を選んだのは一体なぜなのだろうと首をかしげざるを得ない事例もある。

 その一因として、強い被害者意識があるのではないか。何でも被害的に受け止めると、「なぜ自分だけがこんな目に遭わなければならないんだ」と怒りを募らせやすく、当然復讐願望も強くなるからだ。

 問題は、こうした被害者意識が日本で最近強くなっており、「自分だけが割を食っている」と感じている人が年々増加しているように見えることだ。その背景には、個人的な要因だけでなく、社会的な要因もあると考えられる。

 まず、日本の貧困化か進んでいる。何しろ、手取り額が過去二〇年間で月七万円近く減少したのだから。その一因として、「国民総所得に占める家計の賃金・俸給の割合」が、新自由主義路線が世界の潮流になったばかりの一九八〇年度には四六・五%だったのに、二〇一五年度には四〇・五%にまで低下したこともあるのではないか(水野和夫『閉じてゆく帝国と逆説の21世紀経済』)。

 しかも、高齢化の影響で社会保険料が増大している。そのため、収入は減っているのに、負担が重くなっている状況である。当然、エングル係数も高くなっており、出費を削らざるを得ない家庭が増えている。

 たとえば、総務省統計局がまとめている家計調査には、お小遣いを含む「その他の消費支出」という項目があるのだが、一九九七年には九万四五四三円だったのに、その後減少の一途をたどり、二〇一六年には六万一五三三円と二〇年前より三万円近く削られている。衣服代も、二万二六四円から一万三一五三円に減少している。つまり、お小遣いを減らし、衣料品などを買い控えている家庭が多い。生活レペルを下げて我慢を強いられているわけである。

 当然、貯蓄に回す余裕もない。金融広報中央委員会の「家計の金融資産に関する世論調査」によると、一九九七年は一〇%だった「貯蓄なし世帯」は、アベノミクスが本格化した二〇一三年以降、三〇%を超える水準で高止まりしている。いまや、貯蓄のない世帯が三軒に一軒の割合で存在する。

 もっとも、総務省が二〇一七年五月一六日に発表した「家計調査報告(貯蓄・負債編)」によれば、二人以上の世帯における二〇一六年の一世帯当たり平均貯蓄額は、一八二〇万円だった。この数字に衝撃を受けた方が少なくないようだが、実は約三分の二の世帯がこの平均値を下回っていた。また、年齢階級別に見ると、七〇歳以上の世帯の純貯蓄額(貯蓄残高から負債を差し引いたもの)が二三五六万円と最も多かったのに対して、四〇歳未満の世帯では負債超過だった。しかも、四〇歳未満の世帯の平均貯蓄額は前年から五・六%減少して、五七四万円だったという。

 このような数字をみると、たんまり貯め込んでいる高齢者がいる一方で、若年層が割を食っているという印象を受けるが、経済的に困窮している高齢者も少なくない。第一章で紹介したように、高齢者が赤の他人を道連れにして拡大自殺を図る事件が最近目立つが、その背景に、「下流老人」という言葉に象徴される貧困にあえぐ高齢者の増加があることは否定しがたい。厚生労働省の調査でも、全国の生活保護受給世帯のうち六五歳以上の高齢者世帯が過半数を占めていることが判明している。

 もちろん、若年層の中にも高学歴・高収入のエリートはいる。逆に、パート・アルバイト、契約・派遣社員などの非正規労働者は、いまや全労働者の四割近くを占めているが、その七割が年収二〇〇万円に届かないことが、連合などのアンケートでわかっている。年収が低いせいで、結婚をあきらめたり、食事の回数を減らしたり、医者にかかれなかったりという話を耳にすることもある。

 要は、日本人がみな一様に貧しくなっているわけではないことだ。少数の大金持ちがいる一方で、食べていくだけで精一杯の貧乏人もいる。格差が拡大して、「一億総中流時代」と呼ばれていた頃の「平等幻想」はもはや崩壊してしまったのだ。

 また、お互いに自分こそ被害者だと思い込んでいる人が少なくない。たとえば、若者が、年金をたっぷりもらっている高齢者の犠牲になっていると感じているのに対して、高齢者は、長年真面目に年金を納め続けた割には支給額が少ないと感じている。あるいは、非正規社員が「正社員は高い給料をもらっているのに、ろくに働かず、面倒な仕事は全部われわれ非正規に押しつけている」と不満を漏らす一方、正社員は「非正規社員は、残業もしないし、仕事の責任も取らないから、ミスがあったら結局われわれ正社員が尻拭いするしかない」と愚痴をこぼす。どちらの言い分か正しいかはさておき、それぞれの立場でみんなが不満を募らせているのが、現在の日本社会である。

 さらに、小泉政権以降広がってきた自己責任論も見逃せない。被害者意識の強い人の増加と自己責任論は、一見相反するように見えるかもしれないが、両者は表裏一体である。自己責任論が幅を利かせるほど、被害者意識の強い人は増える。

 というのも、自己責任論は、ある意味過酷だからだ。自己責任論を突き詰めると、うまくいかないのはすべて自分のせいということになるが、それを認めるのは非常につらい。何よりも、自己愛が傷つく。だから、強い自己愛の持ち主ほど、自己責任を否認して、「自分に能力がないわけでも、努力が足りないわけでもなく、○○のせいでこうなった。自分はあくまでも被害者なのだ」と思い込もうとする。したがって、社会が自己責任を強く求めるほど、他人のせいにして保身を図る人、つまり被害者意識の強い人が増えるわけである。

被害者意識が復讐を正当化する

 このように被害者意識が強くなると、「自分はこんな理不尽な目に遭っている被害者なのだから、〈加害者〉に復讐するのは当然だ」と思い込む人が増える。ここでいう〈加害者〉とは、本人が主観的にそう思い込んでいるだけで、客観的に見ると的はずれなことも少なくない。

 たとえば、自分の生活が苦しいのは在日韓国人が生活保護を不正受給しているせいだと、何の根拠もないのに思い込んだ人が、在日韓国人を〈加害者〉とみなしてヘイトスピーチを繰り返すような場合である。

 こうした主観と客観のずれは、被害者意識が強くなるほど大きくなり、ときには被害妄想の域に入ることさえあるが、当の本人は気づいていない場合がほとんどだ。それどころか、被害者意識をよりどころにして、自分はあくまでも「正義の鉄槌」を加えようとしているのだと思い込み、〈加害者〉への復讐を正当化しようとする。

 イギリスの哲学者、ジョン・スチュアート・ミルが「功利主義論」で、「正義の心情には、二つの本質的な要素がある。加害者を罰したいという欲求と、一人またはそれ以上のはっきりした被害者がいるという知識または確信である」と述べているように、被害者意識が強くなるほど、〈加害者〉を罰したいという欲求も、自分の正しさへの確信も強まる。

 被害者意識が強くなっている日本で、絶望感と厭世観にさいなまれた人が、「自分の人生がうまくいかなかったのは、これこれの〈加害者〉のせいだ」と思い込んで、〈加害者〉を罰して復讐を果たし、なおかつ自らの人生に終止符を打とうとする拡大自殺がますます増えるのではないかと危惧せずにはいられない。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )
« 前ページ 次ページ »