goo

ストーリーの終わり:宇宙における人間

『ビッグヒストリー』より 未来予測その1:近未来 ⇒ 希望の持てる傾向の「消費の抑制と都市計画の見直し」「新たな形態の民主主義を育てる」「グローバルな協力とコミュニケーションの増進」は未唯宇宙の将来のシナリオに合致している、

グローバルな協力とコミュニケーションの増進

 第二次世界大戦後、国際連合の創設とともに強力な国際協力が始まった。 20世紀の終盤には活動の足場をさらに固める動きとして、1992年にリオデジャネイロで開催された地球サミットから3つの国連環境条約が生まれ、また1994年にはカイロで国際人口開発会議が開催され、行動計画が採択された。さらに2000年には、8つの具体的な目標を定めた国連ミレニアム宣言が調印された。しかし、2009年に開催されたコペンハーゲン気候サミットは希望を後退させるような結果となった。多くの国々がそれぞれの目標達成に向けて活動を続けていたものの、二酸化炭素排出に関して何らの条約も成立しなかったからだ。

 各国政府だけでなく非政府組織(NGO)の数が増え、グローバルな問題に莫大な資金を投じてどのようなアイデアがうまく機能するかを探求している。そのうちのいくつかを紹介しておこう。アメリカ大統領[第39代]を務めたダミー・カーター(1927年~)が設立したガーター・センターは社会的・経済的な発展に貢献している丿国境なき医師団」は、世界でも最も困窮している地域に医療を提供している。アムネスティ・インターナショナルはグローバルな規模で人権問題に取り組む団体だ。アショカ財団およびスコール財団は、地域に変革を起こす社会起業家のネットワークに対する支援を行っている。世界自然保護基金(WWF)および「ザ・ネイチャー・コンサーバンシー」(TNC)は生物多楡吐の保護に尽力している。ジョン・D・ロックフェラー、ジョージ・ソロス、デヴィッド・パッカード、ウィリアム・ヒューレット、ビル・ゲイツとメリンダ・ゲイツ、ウォーレン・バフェットといった、変革に貢献できる慈善活動家もまた重要な役割を果たしている。 2007年に未来世代のための国際的なロビー団体として発足した世界未来協議会(WFC)のような若い組織も活動している。スウェーデン人の作家ヤーコプ・フォン・ユクスキュルにより設立されたWFCはハンブルグ、ロンドン、ブリュッセル、ワシントンDCおよびアジスアベバに拠点となる事務所を置いている。

 1991年、スイスのジュネーブにある素粒子物理学研究所、すなわち欧州原子核研究機構(CERN)に勤務していた数学者ティム・バーナーズ=リーがワールドワイドウェブ(WWW)を開発しインターネット上で提供して以来、あらゆるレペルでのグローバルな協力が緊密化するようになった。いまや世界中の人々が、ウェブ上で250億ページ[2016年10月4日現在47.6億ページ]にも相当する知識を利用することができ、また国際的な連絡を直接取れるようにもなった。金融もデジタル化され、アメリカ合衆国で流通する4兆ドルのうち実際の紙幣やコインで取引されるのは約10%にすぎない。デジタル化およびワールドワイド・コンピューティングの拡大は今後も継続するものと予想される。

 こうした動きはグローバルな協力が拡大し、コレクティブ・ラーニング(集団的学習)の威力が増大していることを示す希望の持てる兆候である。だが、その一方で、不安な思いを抱かせるような疑問もたえず影を落としている。すなわち、経済成長を基盤とする商業主義と持続可能性は、本質的に相容れないのではないだろうか? 人々は政治的な意図[政策]を機動的にすばやく変化させられるのか、あるいは危機が到来するまで待ち続けるのだろうか? 経済的な刺激策は市場を通じて成果をもたらすことができるのか、それとも政府が配給制のような政策を強制する必要があるだろうか? 富裕層は貧困層を支援するだろうか、それとも自分たちのことしか心配しないだろうか? 目下進行しつつある、「西」(アメリカとヨーロッパ)から「東」(中国とインド)への大規模な富の移動はどのような結果をもたらすのだろうか?

 これからの100年間に備えて、あらゆる地域の人々が前向きの傾向をさらに推し進め、どのような形でもエネルギーを保存し、家族計画(産児制限)を行い、自転車利用を増やし、ガーデニング栽培を増やすといった、目下実践されている最も有望な動きに基づいて、自分たちのライフ(生活、人生)を設計あるいは再設計することが可能だ。しかしながら、個人のライフスタイルを変化させるだけでは十分ではないだろう。より大がかりな変化を目指し、市民が政治的行動にいっそう深く関与する必要があるだろう。急速に変化する世界において着実に行動するには、明確な意志、創造性、共感および勇気というものが、相変わらず求められるのだ。そして、ビッグヒストリーのもたらす展望は、諸問題を明快に見通す上で非常に有効なのである。

 人間はこの過剰な人口をかかえた惑星で運命を共有している。人間は文化とコレクティブ・ラーニングにおいて試行錯誤をくりかえして、自分たちの行く末をかなりの程度自分たちで左右できるまでになった。グローバルな難問に対する解決策があるのであれば、相互に結びっいた人間はそれを見っけだすだろう。人間の未来を決定する闘いは始まったばかりだ。次の100年がどのような結果となろうとも、驚くべき未来が待ち受けていることだろう。

結論--ストーリーの終わり:宇宙における人間

 読者にとってこの結論が満足のいくものかどうかはさておき、これは宇宙の最終的な行く末を記述するにあたって、現時点での私たちの最善を尽くした形なのだ。この陰うつな未来像から今日の宇宙に立ち戻って考えれば、ある意味非常な満足感を覚えるだろう。なぜなら、こうした未来予測の観点からするとそれほど歳をとっていない宇宙(もちろん138億年という宇宙の年齢は私たちにとっては、とてっもなく古いと思われるが)に、それが緑あふれる春の時期に、すなわち宇宙が恒星、惑星および生物、さらには人間さえも含む複雑な存在を生みだすのに必要な、多大なエネルギーと物質的な成分その他もろもろに満たされている時期に私たちが生きていることを知るのだから。恒星、惑星、生命、そして人間を生みだすゴルディロックス条件は、いま確かに存在しているのだ!

 私たちは、宇宙が私たちを取りまく驚異的な世界を創造するのに必要な活力で満たされた時期に宇宙の被造物となったのだ。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )
« 消費の抑制と... 「フランス人... »
 
コメント
 
コメントはありません。
コメントを投稿する
 
名前
タイトル
URL
コメント
コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。