未唯への手紙
未唯への手紙
企業と地球環境
『よくわかる産業社会学』より
1 地球温暖化問題
企業の活動は、しばし公害問題を引き起こす。しかし現在、公害問題とは別に、地球環境問題が深刻化しつつある。公害問題が、特定地域に被害をもたらす、現在の世代にとっての問題であるのに対し、地球環境問題は、人類全体に被害をもたらす、将来の世代にとっての問題であるという違いがある。
地球環境の危機について最初に警鐘を鳴らしたレポートとして知られているのが、ローマ・クラブの『成長の限界』である。同書は、1970年代初頭において、世界の人口や資源消費量が幾何級数的に増加していること、それゆえ、近い将来に食料不足、環境汚染、天然資源の枯渇といった危機が到来することを予測した。
これらの予測がすべて的中したわけではないが、実際に深刻な問題として浮上したのが、地球温暖化問題である。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の推計によれば、CO2などの温室効果ガスの排出により、過去100年間に世界の年間平均気温は0.74℃上昇した。さらに、これまでのペースで化石エネルギー源を重用しつつ高い経済成長率を維持し続ければ、21世紀末にはさらに4.0℃上昇するという。もし、事態がこのシナリオ通りに進行するならば、海水面の上昇や生態系の破壊により、人類全体が大きな被害をこうむることになる。
2 温室効果ガス排出削減目標
このような状況を前にして、国際レペルおよび政府レペルで、温室効果ガス排出削減に向けての取り組みが始まった。
まず、1992年、気候変動枠組条約が採択され、世界の189ケ国がそれぞれの国の状況に応じて地球温暖化対策を講じることが合意された。さらに1997年には京都議定書が採択され、先進国に対し、基準年度に対する2012年までの温室効果ガス排出削減目標を課すとともに世界全体としての排出量を削減するため、排出枠を金銭で売買する国際排出量取引の仕組みが設けられた。
京都議定書において、日本は6%の排出削減目標を課せられた。これを実現するため、地球温暖化対策推進法(1998年制定)に基づき、2005年、京都議定書目標達成計画が定められた。具体的には、温室効果ガス排出量の算定・報告・公表制度の導入などにより、企業による自主的な温室効果ガス排出削減を促すことになった。
3 企業の取り組みと残された課題
表は、基準年度と2008年度の国内の温室効果ガスの排出状況を比較したものである。ここから、基準年度の段階で、産業部門および運輸部門からのCO2排出が、それぞれ全体の38%および17%を占めていることがわかる。
産業部門のなかで最も排出が多いのは鉄鋼業であるが、大手鉄鋼メーカー4社では, 1990年度から2007年度にかけて、粗鋼生産時のCO2排出原単位を。13.7%から20.1%削減している。また、運輸部門からの排出にかかわっている自動車メーカーでは、CO2排出が少ないハイブリッド車、バイオ燃料対応車、燃料電池車、電気自動車などの開発に力を入れている。企業が自主的に環境対策を行っていることがわかる。
これら企業の環境対策と関連しているのが、社会的責任投資(SRI)の拡大である。 SRTとは、企業の経済的なパフォーマンスだけでなく、社会的責任の遂行度合いも考慮して行われる投資活動のことである。特に日本では、環境対策に力を入れている企業の株式を優先的に購入するエコファンドと呼ばれる投資信託が大きな比重を占めている。各企業が環境対策に取り組む背景には、株価を安定させ資金調達を有利に進めたいという動機も働いている。
それでは、温室効果ガスの削減効果はどの程度みられるだろうか。基準年度から2008年度にかけて、産業部門からの排出は抑制されたが、業務その他部門(オフィスなど)や、家庭部門からの排出は30%以上増加している。このことは、工場での環境対策は一定の成果をみせているが、オフィスなどそれ以外の場所での環境対策は不十分であること、さらには、企業だけでなく家庭での環境対策も不可欠であることを意味している。
1 地球温暖化問題
企業の活動は、しばし公害問題を引き起こす。しかし現在、公害問題とは別に、地球環境問題が深刻化しつつある。公害問題が、特定地域に被害をもたらす、現在の世代にとっての問題であるのに対し、地球環境問題は、人類全体に被害をもたらす、将来の世代にとっての問題であるという違いがある。
地球環境の危機について最初に警鐘を鳴らしたレポートとして知られているのが、ローマ・クラブの『成長の限界』である。同書は、1970年代初頭において、世界の人口や資源消費量が幾何級数的に増加していること、それゆえ、近い将来に食料不足、環境汚染、天然資源の枯渇といった危機が到来することを予測した。
これらの予測がすべて的中したわけではないが、実際に深刻な問題として浮上したのが、地球温暖化問題である。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の推計によれば、CO2などの温室効果ガスの排出により、過去100年間に世界の年間平均気温は0.74℃上昇した。さらに、これまでのペースで化石エネルギー源を重用しつつ高い経済成長率を維持し続ければ、21世紀末にはさらに4.0℃上昇するという。もし、事態がこのシナリオ通りに進行するならば、海水面の上昇や生態系の破壊により、人類全体が大きな被害をこうむることになる。
2 温室効果ガス排出削減目標
このような状況を前にして、国際レペルおよび政府レペルで、温室効果ガス排出削減に向けての取り組みが始まった。
まず、1992年、気候変動枠組条約が採択され、世界の189ケ国がそれぞれの国の状況に応じて地球温暖化対策を講じることが合意された。さらに1997年には京都議定書が採択され、先進国に対し、基準年度に対する2012年までの温室効果ガス排出削減目標を課すとともに世界全体としての排出量を削減するため、排出枠を金銭で売買する国際排出量取引の仕組みが設けられた。
京都議定書において、日本は6%の排出削減目標を課せられた。これを実現するため、地球温暖化対策推進法(1998年制定)に基づき、2005年、京都議定書目標達成計画が定められた。具体的には、温室効果ガス排出量の算定・報告・公表制度の導入などにより、企業による自主的な温室効果ガス排出削減を促すことになった。
3 企業の取り組みと残された課題
表は、基準年度と2008年度の国内の温室効果ガスの排出状況を比較したものである。ここから、基準年度の段階で、産業部門および運輸部門からのCO2排出が、それぞれ全体の38%および17%を占めていることがわかる。
産業部門のなかで最も排出が多いのは鉄鋼業であるが、大手鉄鋼メーカー4社では, 1990年度から2007年度にかけて、粗鋼生産時のCO2排出原単位を。13.7%から20.1%削減している。また、運輸部門からの排出にかかわっている自動車メーカーでは、CO2排出が少ないハイブリッド車、バイオ燃料対応車、燃料電池車、電気自動車などの開発に力を入れている。企業が自主的に環境対策を行っていることがわかる。
これら企業の環境対策と関連しているのが、社会的責任投資(SRI)の拡大である。 SRTとは、企業の経済的なパフォーマンスだけでなく、社会的責任の遂行度合いも考慮して行われる投資活動のことである。特に日本では、環境対策に力を入れている企業の株式を優先的に購入するエコファンドと呼ばれる投資信託が大きな比重を占めている。各企業が環境対策に取り組む背景には、株価を安定させ資金調達を有利に進めたいという動機も働いている。
それでは、温室効果ガスの削減効果はどの程度みられるだろうか。基準年度から2008年度にかけて、産業部門からの排出は抑制されたが、業務その他部門(オフィスなど)や、家庭部門からの排出は30%以上増加している。このことは、工場での環境対策は一定の成果をみせているが、オフィスなどそれ以外の場所での環境対策は不十分であること、さらには、企業だけでなく家庭での環境対策も不可欠であることを意味している。
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