『図解でわかる 14歳からのプラスティック環境問題』より
家畜の命を奪うごみの山
プラスチック製品、特にレジ袋を規制する国が増えています。地図をいま一度見てください。レジ袋規制が進む国々は、プラスチックの生産・消費量が多い先進国ばかりではありません。アジア・アフリカの開発途上国でも、軒並み規制をしいています。その理由は、切実なプラスチック汚染にさらされているからです。
そもそも途上国では、ごみ処理場の整備が十分ではなく、多くが空き地や谷間にごみを投げ捨てるだけのオープンダンプ方式です。異臭を放つごみの山から、再利用できるものを拾って生計を立てる人も少なくありません。ごみの山には飢えた家畜も集まり、プラごみを食べてしまいます。
モンゴルでは、1990年代から遊牧民の間でもプラスチック製品が使われるようになり、草原にプラごみが散乱。羊や牛が草と間違えて食べ、衰弱死する例が頻繁に報告されていました。さらには、ごみを食べた家畜の肉や乳を摂取することで、人体に影響が及ぶことも懸念され、薄手のレジ袋が使用禁止されるに至りました。
同様に、インドではヒンドゥー教で聖なる存在とされる牛が、プラごみを食べて死亡するのを防ぐためもあり、やはり一部のレジ袋の使用が禁止されています。
また、バングラデシュでは、過去に大量のレジ袋が排水溝に詰まり、大洪水の一因となったことがあり、すでに2002年にレジ袋が禁止されています。
最も規制が厳しいアフリカの事情
現在、最もプラスチックの使用規制が厳しいのは、意外にもアフリカです。アフリカ54力国のうち、レジ袋規制を導入している国は約30力国にも及びます。
2000年以降、アフリカ諸国の経済成長はめざましく、都市で働く人が増え、それまでの自給自足の生活から、買って消費する生活へと一変しました。そのため処理能力を超えるごみが山積みされ、崩落して死亡者が出る事故も起きています。
世界一厳しい罰則規定のあるケニアのレジ袋禁止令は、こうした深刻なごみ事情を背景にして、2017年に施行されました。処理場の整備や、ごみ分別のルール徹底には、時間もコストもかかります。それよりも、ごみのもとをつくらない、売らない、使わない社会をつくるほうが早い、という途上国ならではの判断でした。
これらアジア・アフリカの途上国では、プラスチック規制を強化すると同時に、国際的な支援を受けて、ごみ処理場を整備する計画も進められています。