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キーワードで読み解く シェアリングエコノミー

『キーワードで読み解く地方創生』より ⇒ スマホがキーなのは正解。

ポイント

 ・シェアリングエコノミーは、個人間の取引で有形・無形の資産をシェアする経済活動である。自宅を宿として貸し出すホームシェアや自家用車で客を運ぶライドシェアが主なシェアサービスである。

 ・日本ではシェアサービスに対する不安感が根強く残っているが、小規模・不定期という特徴から、シェアサービスは地方圏と相性がよいと考えられる。

 ・大都市圏が住民の不安感からシェアサービス拡大に躊躇している今は地方圏にとってチャンスである。地方圏は訪日外国人誘致や社会的課題の解決にシェアリングエコノミーを積極的に活用すべきであろう。

スマートフォンの普及で拡大するシェアリングエコノミー

 シェアリングエコノミーとは、一般的には個人や組織が所有する資産等について、貸し出し等により他人との間で共有(シェア)し、その対価を受け取る経済活動であり、シェアリングエコノミーで展開されるビジネスはシェアサービスと呼ばれる。自宅を宿泊者に貸すホームシェアは、その代表例である。また、シェアする資産の中には、労働のような無形資産も含まれる、自分の車を使って自分か運転して他人を運び、運賃を受け取るライドシェアのように、車と労働という有形・無形資産の両方をシェアするケースもある。

 シェアサービスと似たようなものとして、すでに各種のレンタルビジネスがある。これまでのレンタルビジネスと比べたシェアサービスの大きな特徴は、CtoC、つまりサービスの提供も利用も個人がメインとなること、および、CtoCゆえに小単位、不定期なサービスが行われることであろう。このため、シェアサービスでは供給と需要を簡便にマッチングさせるツールが必要となり、スマートフォン(以下、スマホ)が欠かせないツールとなっている。このような背景から、スマホの普及に伴って、シェアリングエコノミーは急拡大しているといえる。

 日本ではシェアサービスヘの不安が残っているが 米国をはじめ海外では、スマホの普及に伴いさまざまなシェアサービスが生まれている。また、総務省「情報通信白書(平成28年版)」によると、世界のシェアリングエコノミーの規模は, 2013年の150億ドルから2025年の3,350億ドルに急拡大するとされる。さらに、世界のユニコーン企業(企業価値が推定10億ドル以上の非上場ベンチャー)上位10社のうち、4社がシェアリングエコノミー関連会社となっている。

 一方、日本ではいまだにシェアサービスに対する不安が残っている。シェアサービスの代表的なホームシェアとライドシェアの利用意向に関する国際比較をみると、日本の利用意向は低い。その理由として事故やトラブルヘの対応への不安があり、日本は韓国と並んで大きい。

 しかし、日本でもシェアサービスヘのこのような不安は徐々に解消しつつあると思われる。 CtoCといえども、仲介サービスを行っている企業はマッチング機能に関するプラットフォームを提供しており、事故やトラブルに対応している。さらに、シェアサービスでは利用者も提供者もお互いに評価されるので、悪い評価を得た個人はその後の利用や提供が難しくなる。このような仕組みが知られると、シェアサービス利用への警戒感も薄らいでいくとみられる。例えば、フリーマーケットのような取引をスマホで行うことができるフリマアプリを利用して一時的に使いたいモノを購入し、少し使ってすぐに売却するような方法は、事実上不特定多数で資産をシェアしているといえ、日本でも利用者が急拡大中である。シェアサービスの大きな特徴であるCtoCに関する不安は徐々に解消され、日本でもシェアサービスは拡大していく可能性があろう。

訪日外国人向けシェアサービスでは地方圏にチャンスあり

 近年、シェアリングエコノミーは地方圏で大きな注目を浴びるようになっている。小単位、不定期というシェアサービスの特徴は地方圏の小規模マーケットのニーズに適合しており、企業による従来型のビジネスが展開しにくい地域でも、シェアサービスであれば対応可能とみられているからだ。地域社会の課題解決にも、シェアリングエコノミーが役立ち、それによって地域経済の活性化につながることが期待されている。

 ここでは、事例としてシェアサービスの代表であるホームシェアの民泊を挙げておきたい。民泊は、2018年6月から民泊新法の下に正式に全国で展開された。大都市圏では近隣住民の不安などから条例で上乗せ規制をする自治体もあるものの、訪日外国人にとってホームシェアは慣れ親しんだ宿泊方法であり、その誘致において民泊拡大は大きなアドバンテージとなる。民泊では、大都市圏が消極的である今が地方圏にとってのチャンスといえよう。

 また、ライドシェアについても、地方圏は利用が進みやすい素地がある。大都市圏ではタクシーがすでに普及しており、タクシー事業者の反対もあってライドシェアが正式に展開されるようになるには時間がかかりそうだ。一方、夕クシーがそれほど普及していない地方圏では、ライドシェアに対するタクシー事業者の反発は少ないとみられる。その上、高齢化が進む地方圏では自動車が運転できない高齢者が増加し、移動手段の不足が問題化し始めている。その対策として今、ライドシェアが注目されている。例えば、京都府の京丹後市では、企業によるタクシーサービスの確保が難しいため、ライドシェアに期待をかけ、実証実験を行っている。そして、訪日外国人はライドシェアに慣れ親しんでいる人も多く、訪日外国人誘致という点でもライドシェアが大きなアピールになろう。

 近年、2社以上のシェアサービス事業者と組んでいる自治体はシェアサービスの事業者団体からシェアリングシティと認定されるようになり、地方圏を中心にすでに15自治体が認定された(2018年5月現在)。地方が先導する形で、日本でもシェアリングエコノミーが拡大していきそうだ。
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